接着技法を用いた咬合再構成
<この症例はザ・クインテッセンス2014年2月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201402.pdf
#tooth wear #咬合挙上 #レジンプロビジョナルレストレーション
【診査・診断】
口腔内は重篤なtooth wear の状態を示していた.
胃食道逆流症(GERD)の既往があり,tooth wear の主たる原因は胃酸による酸蝕であると診断した.
顔貌より明らかな咬合高径の低下を生じており,Turner のカテゴリー1と判定した.
【治療計画】
患者は右上1番の補綴を希望していたが,咬合高径の低下により,補綴スペースを確保できなかった.
そこで上顎に全歯面を被覆するスプリントタイプの部分床義歯を装着することにより,咬合高径を挙上し,右上1番を暫間的に補綴する.
顎口腔系に異常が生じないことを確認した後,固定式補綴を行うことを説明し,理解していただいた.
固定式補綴を行うにあたり,診断用ワックスアップから製作したシリコーンインデックスを用いてコンポジットレジンによる咬合挙上用パーツを作成して歯面に接着し,臼歯部において約2~3mm の咬合挙上を行った(レジンプロビジョナルレストレーション).
なお,この時の挙上量はスプリントによる挙上量と同等である.
挙上後,問題がないことを確認し,1/3顎ずつ臼歯部の支台歯形成を行い,最終補綴を施した.
【自己評価】
接着技法を用いて咬合挙上を行うことは,最初から全部被覆型の形成を行って一気に挙上する方法と比較すると,1/3顎ずつの補綴処置が可能となり,技術的難易度が低いという利点を有する.
従来の方法に比べて治療時間の短縮が可能となり,患者への負担を軽減できたのではないかと考える.
形成時の垂直的なコントロールが十分に行えず,歯肉からの出血を招いたことは反省点である.
【今後の課題】
形成時における垂直的なコントロールの精度を上げることが課題である.
さらなる技術の向上と問診力・診断力を育てていけるよう努力したい.
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この症例へのコメント
本症例は,tooth wearによる咬合高径の挙上をともなうフルマウスリコンストラクションである.一見,難易度が高いようにみえるが,レジンブロックを前歯および臼歯部に接着することにより, 1 / 3 顎ずつの治療が行えるので,すべての歯を1 回に形成し,プロビジョナルレストレーションを装着する方法に比べると,その難易度はかなり低い.そのような意味で,フルマウスリコンストラクションを初めて行うには適当なケースであり,梅田先生にとって勉強になった症例だと思われる.
また,フェイスボゥトランスファーにより研究用模型を咬合器に装着した後,診断用ワックスアップを行うが,この時スプリント使用時の上顎模型のクロスマウントを行い,上下顎歯肉縁の距離を一致させ,スプリント使用
時の咬合高径をトランスファーする.このように咬合高径の変更をともなう補綴処置には,フェイスボゥトランスファーが必須となる.
このコメントは2014年2月号ザ・クインテッセンスに掲載されたものを一部抜粋したものです。
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201402.pdf
本症例に対する診断や治療計画には問題はない.しかし,最終補綴結果からは各治療工程における知識や手技の不足が感じられる.まず,補綴した右側上顎中切歯の歯肉は,唇側歯肉がロール状となっている.これは当該補綴物の歯肉縁下での歯冠形態がアンダーカントゥアとなったことにより生じたと考えられ,その原因としては,印象の不備が疑われる.また,上顎右側側切歯中切歯間,上顎左側側切歯犬歯間の歯間乳頭が腫脹しており,これに関してはメインテナンスの不良を感じさせる.
補綴処置が無事に終了しても,補綴した歯を維持するにはペリオに関する知識,技術が必須となる.その意味において,いくらがんばって補綴しても,患者の歯周組織の状態を維持,改善できなければ,補綴物の予後は不確実なものとなってしまう.梅田先生には,これを糧として,良い歯科医師としての道を歩んでいただきたい.
このコメントは2014年2月号ザ・クインテッセンスに掲載されたものを一部抜粋したものです。
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201402.pdf