Doctorbook academy

深井 康弘

歯単位の長期安定性をめざし基本治療を追求した症例

<この症例はザ・クインテッセンス2014年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201403.pdf

#基本治療 #智歯周囲炎 #根管治療

【患者】
32歳,男性,会社員.性格は口数少なく,おとなしい印象.
仕事の関係上,来院は夕方以降.当初は保険治療内での治療を希望.

【主訴】
①数日前から右下奥歯の歯ぐきが腫れた.
②歯磨き時に出血する.

【歯科既往歴】
数年前に, 他院にて右下7番を抜歯. その後右下7⑥⑤の延長ブリッジとして補綴処置を行っている.

【診査・診断】
 主訴①に対しては右下8番の智歯周囲炎と考えた.
当初,抜歯については否定的で当面は消炎処置と,主訴②に対して歯周基本治療を行うこととし,また右下6番に根尖病変を認めたため,同歯の根管治療を計画した.

【治療計画】
右下5番6番には3~6mmの歯周ポケットを認めた.
エックス線所見として歯槽頂線,歯槽硬線が不明瞭で,また歯根膜腔の拡大を認めた.
他にも不良補綴物,歯石沈着,う蝕,根尖病変等を認める.
同部の治療の必要性を説明し,とくに問題なく同意を得ることができた.

歯内治療,歯周基本治療後,右下5番6番の隣接面に6mm の深い歯周ポケットが残存していたため,デブライドメントを目的として歯肉剥離掻爬術を行った.
さらに,右下4番5番間に歯根近接を認めたため,補綴前処置としてセパレーティングモジュールを挿入し,歯間離開を行った.
最終補綴物は右下5番をハイブリッドセラミッククラウン,右下6番をメタル冠(FMC)とした.

【自己評価】
歯周外科の手技が不十分で,右下5番6番の歯間部歯肉が陥凹したクレーター状になってしまい,印象採得時に一番苦労することとなった.
逆に,右下4番5番間の歯根近接は解消されたため,適切な歯冠形態を与えることができたと考えている.
エックス線的にも不鮮明であった歯槽頂線や歯槽硬線も改善傾向にあると思われる.右下6番の根尖病変も縮小傾向と思われるが,予後が短いため,今後注意深い観察が必要である.

【今後の課題】
治療にかかる時間が長く遠回りをしている.
治療のゴールを明確に設定し,そこに向かった治療計画を立てることで,より最短距離でスムーズに治療を進めることができるのではないかと考えている.
そしてそれは患者への負担軽減にも繋がるであろう.

この症例へのコメント

  • 甲斐 康晴

     まず,ケースの仕上がりをみて,規格性のあるエックス線写真・エンド・ぺリオ・歯牙移動・支台歯形成・印象操作・補綴物の適合等,どれをとってもしっかり基本をおさえ,ていねいな処置が施されていることがわかる.
     細かくいえば,右下5番6番間の術後の清掃性や,右下6番補綴物の歯軸の方向等などが気になるところではあるが,代診時代のケースということを考えると,すばらしいできばえである.もちろん,勤務先である中島稔博先生の監督と指導の結果でもあるし,いろいろなスタディグループ下で刺激を受けて“みる目”を養い成長してきた結果でもあろう.しかしながら,本人の技量のみならず,歯科治療に対する情熱がなければこのような結果にはならなかった
    と考える.

    このコメントは2014年3月号ザ・クインテッセンスに掲載されたものを一部抜粋したものです。
    https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201403.pdf

  • 甲斐 康晴

     深井先生は,焦らずしっかりと足元をみつめ,着実に実力をつけている若手歯科医師の1 人である.このケースは最終的に全顎治療へと発展していったわけであるが,1 本1 本をていねいに仕上げようとする地道な処置の積み重ねが,患者の心を動かしたものと推察する.
     治療がスムーズにいかなかったなどの反省もあろうが,治療を仕上げてみないとそのような反省もでてこない.これからいろいろな患者と出会い,スランプに陥ることがあるかもしれないが,そのようなときにはこのように純粋な気持ちで取り組んだケースを振り返ってほしい.そして,このように育ててもらった院長先生に感謝して研鑽を怠ることなく,たくさんの患者から信頼される歯科医師をめざしていただきたい.

    このコメントは2014年3月号ザ・クインテッセンスに掲載されたものを一部抜粋したものです。
    https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201403.pdf

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