Doctorbook academy

寺尾豊

骨の形態異常に対するアプローチ ─再生療法,切除療法を併用した1 症例─

<この症例はザ・クインテッセンス2011年6月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201106.pdf
#再生療法 #エムドゲイン® #垂直性骨欠損

【患者】
51歳女性,非喫煙者.性格は温厚で真面目.

【主訴】
奥歯で噛めない.約1か月前に他院にて右上5番4番を抜歯し,上顎の両側遊離端部分床義歯を製作したが,違和感が強く装着できなかった.そのためインプラント治療を希望し来院.

【歯科既往歴】
40歳から上顎臼歯部が徐々に抜歯になっていった.歯科医院には定期的に通院せず,受ける治療は急性症状に対する対症療法が中心であった.

【診査・診断】
本症例は上顎臼歯部の欠損や歯周炎により咬合が崩壊しており,全顎にわたる治療が必要である.全体の治療目標としては,①浅い歯肉溝・骨レベルの平坦化・十分な付着歯肉を獲得するために歯周外科処置を行い,清掃性の高い歯周組織環境を構築する,②動揺歯は連結固定し,適合のよい補綴修復を行う,③上顎両側臼歯部および下顎右側臼歯部にインプラントを用いて強固なバーティカルストップを確立し,安定した咬合を得ることとしたが,
本稿では「1歯の治療にこだわる」ということで,下顎左側臼歯部について述べる.左下7番は近心に垂直性骨欠損,さらに根分岐部病変があったため骨レベルが低く,また対合がインプラントとなるため長期予後には不安があった.しかし患者は歯の保存を強く希望したため,再生療法および骨外科処置をともなう遊離歯肉移植術を行い,骨レベルの平坦化ならびに付着歯肉の獲得を図ることにした.将来的に抜歯となり,左下6番7番にインプラントを埋入する場合,現時点で骨レベルの回復ならびに付着歯肉を獲得することは有利に働くことを十分に説明し,了解を得た.

【治療計画】
 全体の治療の概略としては,初期治療後に残存した深い歯周ポケット,歯肉歯槽粘膜の問題に対しては歯周外科処置を行った.そして,上顎右側にオトガイ部からのブロック骨移植とGBR(当時は公立病院の勤務であったため自家骨移植の選択肢しかなかった),上顎左側臼歯部・下顎右側臼歯部にGBRを行い,インプラントを埋入し,両側臼歯部に咬合支持を確立させた.
 下顎左側臼歯部においては,左下7番􏿊近心頬側に5mm,近心舌側・遠心頬側に4mmの歯周ポケットが残存した.左下7番近心の垂直性骨欠損を改善するためにエムドゲイン®,自家骨,吸収性メンブレンを用いて再生療法を行い,術後左下7番は咬合させないようにした.1年後のリエントリー時に残存する骨の形態不良を切除・整形すること,ならびに付着歯肉の獲得を目的に骨外科処置をともなう遊離歯肉移植術を行った.根分岐部病変については根面形成により改善を図った.
左下6番は重度歯周炎のため抜歯となったが,初期治療中に遠心根を抜歯,近心根は左下7番のリエントリーを行うまでは咬合に参加させ,再生療法後の安静を保つために利用し,リエントリー時に抜歯した.左下3番􏿢はオトガイ骨移植により失活してしまったため,ブリッジに加えプロビジョナルレストレーションにて清掃性および咬合を確認し,最終補綴に移行した.

【自己評価】
再生療法前に左下7番を歯肉縁まで歯冠形成したため,根分岐部を根面形成した後,マージン位置が深くなってしまった.また左下3番は当初補綴予定ではなかったので,オトガイ骨移植により失活させてしまったことは深く反省している.

【今後の課題】
矯正学的なアプローチも含めた的確な診査・診断のもと,緻密な治療計画を立案し,治療のゴールを明確にしたうえで円滑に治療を進められるようにしていきたいと考えている.良好な治療結果の永続性を達成できるよう研鑽を続けていきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 中村公雄

    本症例は,インプラント治療,歯周治療,そしてその後に咬合再構築を必要とし,全顎にわたる難度の高い症例である.歯科治療は機能の回復,審美の回復はもちろんであるが,治療結果に永続性がなければならない.そのためには清掃性の向上が必須である.矯正も含めて歯周,インプラント,補綴治療には各々の目的があるが, 1つの共通の目標は治療後に清掃しやすい口腔内環境をつくることである.歯周治療で支台歯周囲を清掃しやすく整え,その後適合精度が良く,清掃しやすい形態の補綴物を装着することによって,補綴物周囲の清掃性を高めることが求められる.インプラント治療が関わってくる症例では,インプラント治療そのものに加えて,残存歯に対する適切な処置が望まれる.今回の治療経過提示は,残存天然歯部の一部の処置に限ってはいるが,残存歯部の清掃性の向上を目指した処置としては,歯周治療,補綴治療とも基本に忠実に適切に行われていると思う.

    <この症例はザ・クインテッセンス2011年6月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 中村公雄

    1つの処置には長所とともに欠点もある.本症例でも,根分岐部病変の処理をすることによって抜髄処置が必要になっており,また補綴物に大きな凹みができてしまい,そこが清掃しにくい部位となっている.無髄歯になると二次う蝕の危険性も高まるし,ブリッジの支台という負担に加えてインプラントの対合歯としての負担が加わるような場合,経時的に根尖病巣の発症,根破折のリスクが高くなる.力の加わる歯や残存歯質の少ない歯に対するファイバーポストの長期予後も定かではない.左下3番に対してもいえることであるが,いかなる場合においても細心の注意を払い,極力有髄歯で保存する処置を心がけてほしい.また,補綴物の連結そのものはとくに問題があるわけではないが,連結することにより適合精度が落ちる危険性が高まる.適合精度を高めることは清掃性のよい補綴物を製作する基本であり,精密な咬合を付与する基本でもある.

    <この症例はザ・クインテッセンス2011年6月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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