Doctorbook academy

岩井ちひろ

チェアサイド型CAD/CAMシステムを用いた修復治療

<この症例はザ・クインテッセンス2011年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201104.pdf
#CAD/CAM #マイクロスコープ #審美修復

【患者】
27歳,女性,非喫煙者.性格は明るくコミュニケーションがとりやすく,治療に協力的である.

【主訴】
数週間前より上顎右側に違和感があり,冷水により痛みが増す.

【歯科既往歴】
歯科治療は5年ぶりであるが,以前よりう蝕処置を繰り返していたとのことであった.最近メタルによる修復物の色が気になるようになってきたとのことで,審美的な意識の変化がうかがわれた.

【診査・診断】
エックス線診断の結果,主訴である右上5番インレー下にう蝕が認められた.全顎的にはオーバーバイトは浅いものの,アンテリアガイダンスは維持されており,異常咬耗などがみられないことから局所的な修復治療で対応できると判断した.う蝕の深さと旧修復物が辺縁を覆うⅡ級窩洞であり,力学的観点と審美的観点からセラミック修復を選 択し,CAD/CAMシステムの直接法による即日修復(1回法)でのセラミックインレー装着を行うこととした.

【治療計画】
CAD/ CAMシステムにおける適合は窩洞形成や光学印象など術者サイドの要因に左右されるため,マイクロスコープを用いた処置を行い,また歯質の汚染も考慮して1 回法を勧めたうえで治療内容について理解していただき,了承を得た.

【自己評価】
CAD/ CAMシステムにおける適合は窩洞形成や光学印象など術者サイドの要因に左右されるため,マイクロスコープを用いた処置を行い,また歯質の汚染も考慮して1 回法を勧めたうえで治療内容について理解していただき,了承を得た.

【今後の課題】
CAD/CAMにおける修復はメリットが多い一方で適合の問題も示唆されており,マイクロスコープを用いることで精度を上げ,その欠点を補うことができると考える.今後も歯列や咬合などの全顎的な問題を加味しつつ,1歯の処置を正確に行い治療歯 への再介入を防ぐことで,できる限り生活歯での長期的な保存に努めていきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 南昌宏

     MI治療のコンセプトは,近年の修復治療においてメインストリームになりつつあるという感を受ける.一般的にMIといえばコンポジットレジン修復と想像しがちであるが,本症例のようにすでにメタルインレー修復が装着されているようなう蝕歯では,再治療に際してコンポジットレジンによる再修復を行った場合,本来の歯質の剛性を回復することは難しいと考えられる.一方再度メタルインレー修復を行えばさらなる歯質削除による歯質破折が危惧されることを考えると,ポーセレンインレーも広い意味ではMI修復治療の範疇に入るのではないかと考えている.そのような理由から,筆者がポーセレンインレー修復を選択したことは的確な判断であったといえよう.さらにこのような比較的単純な窩洞では,チェアサイドCAD/ CAMの使用は歯質汚染防止や,形成後の残存歯質破折の機会をなくすという理由からも推奨される手法であろう.またCAD/CAM修復治療に際し,適合性向上や残留セメントの確実な除去のためにマイクロスコープを使用している点も評価できる.ただ欲をいえば咬合接触の確認の写真や,術後エックス線写真での治癒確認を提示していただければさらに深く治療評価できたものと思われる.窩洞形成や防湿なども適切に行われており,1歯に対しての筆者の丁寧な治療姿勢が患者の共感をよんだのであろう.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2010年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 南昌宏

     一般的にいえば,臨床医としての卒後数年以内での技術的課題としてはペリオ,エンド,補綴などすべての分野における基本歯科技術の確実な習得にあると思う.それらを一応会得したものと思い込み,次のアドバンスな手技へとステップアップしようとしても基本がおろそか なままであれば必ず壁に当たってしまうものである.マイクロスコープなど拡大下で自身の治療を見つめるということは,1つひとつの基本手技が確実に行われているか否か,何ができていて何ができていないかなど今後の課題がはっきりとわかり,基本の重要性を再認識し,治療の確実性を自然と追求するようになる.これらを意識することで自ずと治療精度は上がっていき,筆者のいうところの「治療の再介入を防ぐこと」になるものである.このような意味合いからもマイクロスコープなど拡大下における治療の再評価を今後も心がけていただきたい.そして,基本技術を確実に習得した後は,各分野の治療レベルを上げ,オプションを広げつつ何か1つ興味のある治療分野を見つけ出し,結果を追っていただきたい. 治療のスタンダードが確立されているため,それについてより深く考察することができるだろう.それらから得られた知見は,ひいては患者の利益に還元される.卒後数年でマイクロスコープを使用し,チェアサイドCAD/CAMによる即日治療を行えるというような良質の環境で治療できることは昨今の厳しい経済下では大変恵まれているものと感じられる.周りの方々に日々感謝し, これからも研鑽を積んでいただきたい.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2010年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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