Doctorbook academy

藤林晃一郎

上顎前歯部単独歯インプラント症例 ─より安全・確実な治療をめざして─

<この症例はザ・クインテッセンス2011年10月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201110.pdf
#根尖病変 #デンタルエックス線 #感染根管処置

【患者】
48歳,男性.職業は公務員.性格は温厚で真面目,非喫煙者.

【主訴】
右上1番が,数日前からグラグラしてきて,昨日から腫れてきた.

【歯科既往歴】
前医では歯科治療について詳しい説明は受けておらず,口腔内への意識はそれほど高くないが,以前から違和感や審美的な悩みはもっていた.

【診査・診断】
主訴である右上1番は,歯根が唇側に向かって大きく破折しており歯肉縁下に及んでいたため,保存不可能と判断した.

【治療計画】
患者はインプラント治療を希望しており,抜歯後,歯根破折の影響で唇側の歯槽骨は喪失することが予測されたため,インプラント埋入と同時にGBR 法を行い,軟組織に関しては上皮下結合組織移植を併用しバイオタイプの改善を図ることとした.また,右上3番2番左上1番2番に関しては,根管治療,支台築造を行った後に修復物はオールセラミッククラウンで対応する治療計画を立案した.
患者はしっかり治したいという意識はあったものの,当初はインプラント治療のみを希望し,隣在歯の治療には難色を示していたが,現在の状態と今後の治療方針,予知性について十分説明をしたところ承諾が得られた.

【自己評価】
最終補綴物は,患者・術者ともに満足のいく結果が得られたが,埋入時期や両隣在歯の補綴など患者の意思決定が確立しておらず,治療計画を円滑に進めることができなかった.手術時においても経験の少なさから,手術が長時間にわたり,患者に苦痛を与える結果となった.また,上顎左右中切歯間に対しコンタクトポイントから骨頂までの距離を把握してエンブレジャーを調整する必要があった.

【今後の課題】
さまざまなオプションを習得し,高度な治療へのステップアップは必要だと思うが,「明確なコンセプトをもち,科学的な根拠に基づいた治療を行えば,永続性のある治療結果が得られる」という考えに基づき,learning stage を一歩ずつ着実に登っていきたいと考えている.今後も,素直でぶれない心と謙虚な姿勢を大切に精進していきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 前田潤一郎

     本症例を見てまず感じることは,両隣在歯が処置歯の1歯欠損に対してインプラントというオプションが最善の治療方法だったであろうかという点である.審美的に5前歯を修復するのであれば,ブリッジを適応する治療方法もあったと思われる.抜歯窩に対する処置も,今回行ったのと同様にソケットプリザベーション+上皮下結合組織移植術を併用しオベイトポンティックで仕上げることで,審美的な修復は十分に可能であったように思う.予知性,リスク回避,患者,術者の負担軽減等の点を考えても同様である.患者の希望がインプラントであったからということで治療オプションの選択が狭まったのかもしれない.
     また,インプラント治療を選択し,その治療過程においてインプラント埋入後に隣在歯の歯冠長延長術を行っているが,埋入前に歯頸線を確定した後に,そのラインに合わせて埋入位置を決めていくことが望ましいと思う.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2011年10月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 前田潤一郎

     卒後15年,開業5 年を迎える先生にとって,自院のコンセプトが確立されてくる時期になってきたと思う.ペリオ,インプラントの一通りのスキルをさまざまなコースから学び,またインプラントにおいても症例数が増えてきたと思われる.
     個々のスキルに関しては,本症例から先生のレベルが上がってきたことがうかがえる.インプラント埋入,GBR,TR メンブレンの扱い,軟組織移植を見ても適切に行えていると思う.自身を振り返れば,ちょうどこういう時期においてはチャレンジ精神が旺盛で,えてして患者への負担を増やしてしまいがちであった.先生には今後,今のスキルをさらに磨くのと同時に治療計画を立案するときにさまざまな要因を考慮し,患者,術者ともによりベターなものを選択するセンスを身に付けていってほしいと思う.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2011年10月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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