基本治療の各ステップにこだわった審美修復
<この症例はザ・クインテッセンス2011年11月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201111.pdf
#審美修復 #基本治療 #プロビジョナルレストレーション
【患者】
33歳,男性.性格は真面目で温厚.
【主訴】
自転車で走行中に転倒し,左上の前歯が折れた.
【歯科既往歴】
受傷後,自宅近所の歯科医院にて左上1番を抜髄処置後,審美性の回復のためコンポジットレジンにて暫間的に歯冠修復処置を施された.
【診査・診断】
左上1番は歯冠破折を起こしており,すでに抜髄処置がなされていた.動揺度はⅠ度,軽度の打診痛を認めた.デンタルエック
ス線写真から歯槽骨の骨折,歯の脱臼,陥入,挺出などの所見は認めなかった.また根尖部周囲の骨吸収像も認めなかった.歯周ポケット検査から歯周病は認めなかった.
【治療計画】
左上1番の歯内療法の必要性,最終補綴はダイレクトボンディングによる修復か,全部被覆冠による修復かを患者と相談したところ,全部被覆冠を希望された.
【自己評価】
歯周基本治療の手技からか,治療途中,左上1番の近心の乳頭部歯肉が初診時より退がってしまい,回復するまで無駄に時間を費やしてしまった.また左上1番の近心隣接面の最終的な形成が多少深くなりすぎたため,生物学的幅径を侵害し歯肉の形態が初診時に比べ変わってしまった.今後注意深く経過観察が必要と思われる.
【今後の課題】
今回,最終補綴が装着されるまで大変時間がかかってしまった.とくにプロビジョナルレストレーションの修正だけで何回来院していただいたかわからない.各ステップをていねいに行うことは今後も継続して行っていくべきであるが,今後はていねいかつスピーディに行い,もう少し治療期間が短縮できるよう努めたい.
本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php
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この症例へのコメント
著者も述べているように,治療初期の段階で歯間乳頭を退縮させてしまったため,治癒を待つために治療期間が長期化してしまっている.初期治療を行う際はスケーラーを必要以上に深く入れないよう細心の注意を払いながら行わなければならない.またシャープニングできていないスケーラーでスケーリングを行うと,無理に歯石を取ろうとして正常な付着を侵襲してしまいがちである.基本的なことであるが,適切にシャープニングされているスケーラーを用い,適度な力でスケーリング・ルートプレーニングを行わなければならず,そのようにスタッフにも教育しなければならない.
ダウエルコアの印象前の写真,また印象面,完成したダウエルコアの写真やデンタルエックス線写真を見ると,根管形成が少し大きい印象を受ける.今回のケースは抜髄根管であるため,ここまで拡大する必要性はなかったのではないだろうか.必要以上に歯質を削除し,残存歯質が薄くなると将来歯根破折が起こる危険がある.また前歯部の全部被覆冠においては,支台歯の舌側の軸面の高さは補綴物の維持にとって非常に重要である.口蓋側に根管拡大をしすぎると,口蓋側の残存歯質がなくなり,結果的に維持が悪くなってしまう.
<このコメントはザ・クインテッセンス2011年11月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
私ごときが「成長」などとおこがましいかぎりであるが,先輩という立場であえて述べさせていただく.
著者は卒後から8 年間口腔外科に属し,一般歯科臨床を始めて3 年目ということを考えると大変頑張っていると思う.現在も会うたびに諸先輩の知識を吸収し,好奇心旺盛にさまざまな歯科の分野を追求している.さらにそれぞれの処置の精度を上げるよう精進してもらいたい.
しかし,今後著者がさらに上をめざしたいのであれば,早く何か1 つ好きな分野や得意分野をさらに掘り下げて,「その分野では誰にも負けない」くらいの意気込みで頑張っていただきたいと思う.
<このコメントはザ・クインテッセンス2011年11月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>