Doctorbook academy

野田拓

補綴前処置として切除療法にて 歯周環境の改善をはかった症例

<この症例はザ・クインテッセンス2012年12月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201212.pdf
#補綴前処置 #切除療法 #プロビジョナルレストレーション


【患者】
60歳,男性,非喫煙者.寡黙で穏やかな性格.

【主訴】
下顎右側臼歯部ポンティック下への食片圧入による違和感と上顎右側臼歯部の咬合時痛.

【歯科既往歴】
多数歯にわたり補綴修復処置を受けている.歯科医院への定期的な通院はなく,主訴に対する処置のみ受けてきたそうである.

【診査・診断】
本症例は傾斜・叢生を含む歯列不正,全顎的に適合不良,ポンティック形態不良,咬合平面不整な補綴修復物を認め,清掃しにくい口腔内環境であった.残存天然歯を保存し,清掃性の向上をめざした補綴修復物の再製を計画したが,本稿では上下顎右側臼歯部について述べる.
 上顎は,右上4番歯肉縁下う蝕,右上6番は角化歯肉不足,下顎は欠損部歯槽堤の水平的陥凹,右下7番近心側に垂直性骨欠損を認めた.補綴修復処置において治療結果の長期安定をめざすには,浅い歯肉溝,生理的な骨形態,十分な付着歯肉の獲得によって清掃性の高い歯周環境を確立し,そのうえで清掃性,機能性,審美性に優れた補綴修復物の製作が必要と考えた


【治療計画】
治療には協力的であった.矯正治療は望まれなかったが,歯周外科処置を含めた治療計画を十分説明したところ,同意を得た.
初期治療後,上顎右側のフェルールの獲得,角化歯肉の獲得,下顎右側の垂直性骨欠損の改善,補綴修復予定歯に対して生物学的幅径の獲得を目的に,骨外科処置をともなう切除療法にて,また下顎右側の欠損部歯槽堤の陥凹に対しては欠損部歯槽頂部の結合組織を用いて歯周環境の改善をはかった.歯周外科処置後の歯周組織の治癒の推移に合わせて,また下顎右側臼歯部では極力有髄歯で保存できるように心掛けながら,プロビジョナルレストレーションの調整を行って清掃性と機能性を確認し,そのプロビジョナルレストレーションを参考に最終補綴物を製作した.

【自己評価】
ラーニングステージに合わせて治療を進められた患者で,外科処置の手技の精度が乏しいところもあるが,角化歯肉の獲得,付着歯肉の増大,欠損部歯槽堤陥凹の改善が得られた.また,治療後3年の結果でも浅い歯肉溝を維持でき,補綴物周囲の歯肉辺縁の位置も安定しており,デンタルエックス線写真から垂直性骨欠損の改善,生理的な骨形態の維持が認められた.

【今後の課題】
疾患の原因を把握し,的確な診査・診断のもとで,患者の治療希望を反映しながら矯正治療・インプラント治療も含めた包括的な治療を実践していきたいと考えている.良好な治療結果の永続性を達成できるように,さらなる研鑽を積んでいきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

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