インプラント,再生療法,MTMを応用し咬合改善した一症例
<この症例はザ・クインテッセンス2013年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201301.pdf
#再生療法 #GBR #インプラント #MTM #咬合改善
【患者】
58歳,男性.職業は会社員.性格は温厚で明るいがものぐさ.非喫煙者.
【主訴】
歯肉から出血するので歯周病と思い心配になった.下顎左側欠損部についても治療を希望して来院.自家歯牙移植をした妻が順調なので,できれば同じ治療を受け,極力天然歯は削りたくないという希望であった.
【歯科既往歴】
下顎左側臼歯部は抜歯後数年放置.前医からとくに説明がなかったという.歯科医院には定期的な受診はしておらず,痛みなどの急性症状があるときのみ局所の治療を受けてきた.
【診査・診断】
左下7番は近心に垂直性骨欠損,近心傾斜,さらに根分岐部病変があるため,骨レベルの改善が必要である.バーティカルストップが喪失している左下6番欠損部は頬側骨の陥没と角化歯肉不足がみられた.しっかりとした臼歯部咬合を確立するために,左下6番には骨造成併用のインプラント治療,左下7番は骨移植併用のエムドゲイン®療法およびMTMを行うことにした.さらに,骨の平坦化をはかる骨外科処置と十分な付着歯肉獲得のための遊離歯肉移植術を行う計画とした.
【治療計画】
患者は当初,欠損部に自家歯牙移植を希望していた.しかし左下8番は歯周病に罹患しておりドナー歯として適さないこと,また頬側欠損部の骨のボリュームがないこと,この2 点から自家歯牙移植は,予知性が低いと説明した.患者とよく相談した結果,欠損部には骨造成併用のインプラント治療を行い,左下7番の近心傾斜はMTMにて改善していく承諾を得た.
【自己評価】
治療ステップごとの進め方や技術においてまだまだ未熟な点は多々あるが,インプラント,GBR,再生療法,MTMを応用し,骨の平坦化,付着歯肉の獲得,臼歯部咬合関係の改善がある程度達成できたと思われる.ただ,患者の希望である「なるべく天然歯を削らないでほしい」という点については達成できなかった.生活歯で保存はできたものの,補綴になってしまったことは深く反省している.
【今後の課題】
自分の行った治療結果に永続性をもたせるため,適切な診断と治療効果の判断ができる知識と,実際に行える技術を身につけ,コンセプトのしっかりした治療を行いたいと考えている.それには,患者のために少しでも高いレベルをめざすぶれない心と, 自分の仕事を客観的に評価できる謙虚な姿勢が必要であろう.これからも,情熱をもって真の医療人をめざし精進していきたい.
本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php
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この症例へのコメント
神山先生は,JIADS Study Club Tokyoなどの勉強会で日々熱心に研鑽を積まれている. 「ぶれない心と謙虚な姿勢」をモットーに患者の立場に立って情熱を注ぐ診療姿勢には感服するばかりである.本症例からも患者との信頼関係を構築するために十分なインフォームドコンセントと熱心なカウンセリングを行うことで患者が治療結果に満足して喜んでいる様子が容易に想像できる.また診査・診断においては十分な問題点の抽出がなされており,治療結果の永続性を目的にさまざまな治療オプション(GBR,再生療法,FGG,MTMなど)を用いて骨・歯肉・歯列の平坦化を行い,清掃性の高い歯周環境の獲得がなされていることは高く評価できる.ただ,このケースではインプラント埋入手術と再生療法,矯正治療をどのような順序で行うか,それぞれの長所・短所を十分に把握し,治療計画を立案することが望まれる.
<このコメントはザ・クインテッセンス2013年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
さらなる飛躍を期待して,あえて指摘させていただくと,筆者も言及されているが左下7番を削らずに天然歯のまま保存することは矯正治療の時期や方法を工夫すれば可能であったはずである.矯正治療の時期はインプラント治療の前と後ではアンカーの本数や埋入ポジションに違いが生じ,再生療法は可能な限り矯正治療前に行っておきたい.本症例の場合,事前にある程度の移動を行ったうえでインプラントを埋入し,その後インプラントをアンカーとすることで,圧下をともなう歯体移動によって十分な歯軸の改善がはかれたのではないかと考える.リエントリー手術の際には,左下7番の遠心部にいたるまで十分に剥離し,骨整形を行う必要があろう.また遊離歯肉移植片の位置づけは,歯冠側に寄りすぎないように注意が必要である.今後も日々研鑽を重ね,さらなるステージへと登りつめていかれることを確信している.
<このコメントはザ・クインテッセンス2013年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>