Doctorbook academy

吉田朋洋

予知性と審美性を考慮した 臼歯部CR 充填症例

<この症例はザ・クインテッセンス2013年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201304.pdf
#臼歯部CR充填 #予知性 #審美性

【患者】
25歳,女性,会社員.2011年3月初診.性格は穏やかで真面目.審美への関心度も高い.

【主訴】
右下奥歯が,自発痛・冷水痛などの症状はないが,ときどきチョコレートなどの甘いものを食べたときにしみることがある.

【歯科既往歴】
定期的に歯科医院にて検診を行っていた.他県からの引っ越しにともない当院を受診.

【診査・診断】
右下7番6番は,咬合面裂溝部のみにう蝕がみられ,機能咬頭,辺縁隆線部のエナメル質にはう蝕はみられない.デンタルエックス線診査にて,う蝕の大きさや隣接面状態を確認して問題なしと診断.

【治療計画】
Ⅰ級窩洞のう蝕処置を計画.この場合,メタルインレーやセラミックインレーなどの間接法インレーが一般的であるが,機能咬頭にう蝕がなく歯質を十分保存できる点や,感染歯質除去後の便宜的歯質削除量が間接法インレーの形成時よりもきわめて少量で済み,より多くの天然歯質を保存できるメリット,さらに簡便性・審美性にも優れている点から,直接CR 充填を選択した.
患者は当初,間接法インレーによる処置であれば,セラミックインレーを希望していたが,直接CR 充填による修復処置の利点を説明したところ,喜んで承諾してくれた.

【自己評価】
直接CR 充填法は間接法インレーに比べ,単に簡便性や審美性に優れているだけではなく,Minimal Intervention(以下MI と略,最小限の侵襲)の概念に準じることが可能となり,歯の延命に大きく寄与すると考えている.また,咬頭・裂溝・小窩などの咬合面のCR 築盛には,従来のCR 充填器に加えて平筆
(ジーシー)を用いることにより,より天然歯に近い形態に仕上げることができた.治療後半年の経過をみているが,長期的予後における摩耗や脱離・破折などのトラブルが従来の方法よりも少ないのではないかと思われる.反省点としては,修復物の形態に天然歯のような自然感が足りないことがあげられる.

【今後の課題】
今後はⅠ級窩洞だけではなくⅡ級窩洞や前歯部審美ケースなどにも取り組みたい.そのため,歯の形態や色調に関する知識や表現力を身につけ,日々の臨床で審美的で予後の確実なCR 充填が実践できるように努力したい.また,1歯単位での治療も大切であるが,一口腔一単位での歯科治療が確実にできるように研鑽を積んでいきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 泥谷高博

    吉田先生は卒後15年でいろいろなスタディグループにも所属し,さまざまなコースも受講して,ある程度臨床に対する自信も出始めたころであろう.この世代の先生たちは,ダイナミックな治療ばかりに目が奪われがちで, 地道な基本治療を軽視しがちなものである.今回の症例, そして提示されたデンタルエックス写真や口腔内写真などをみても,吉田先生が1 歯単位の基本治療をていねいに,そしてしっかりと取り組んでいる姿勢が垣間みられ, 大変好感がもてる.この症例のように,エナメル質が相当量保存できるようなI級窩洞では,接着歯学がめざましく進歩した現在, MI という観点からもCR による直接修復が当然第一選 択と考えられる.患者がセラミックスによる間接修復を 希望してきたのにもかかわらず,きちんと説明をし,よ り歯質に優しい方法を選択させたことは評価したい.今回,より簡便で効果的な「3 D レイヤリング充填法」を採用したところで,時短と審美性の向上がはかれたのではないかと思われる.術後の写真をみても,色調適合性や研磨状態は素晴らしい仕上がりとなっている.ここで少々気になるところを述べたい.前斜方写真で舌側の咬頭斜面の形態がやや不自然である,裂溝の設定
    位置が頬側寄りになったことが原因であろう.また,接着修復であるのに,接着・防湿方法に関する記述がないのが惜しまれる.患者の年齢と治療部位から考えると,簡易防湿では厳しいことが予想される.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2013年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 泥谷高博

    まずはCR 修復に関してのアドバイスをさせていただく.審美性ももちろん大切であるが,まずは完璧な接着操作をめざすことが修復治療においては,より重要となる.ラバーダム等の併用も考えた,接着操作の理解と実践により,さらにレベルの高いCR 修復を実現できるだろう. CR 修復は,吉田先生のような若手の先生が,審美を学ぶにはうってつけである.このようなミニマムな症例でも記録をとってつねに評価することを今回で終わらせず,これからも続けていってほしい.吉田先生の人物や環境を考えると,筆者からあれこれいうまでもなく,臨床家としてさらにアドバンスなステップへと登っていくことは間違いないだろうが,こういった基本治療の記録の積み重ねも同時に続けていくことが5 年後,10年後に必ずや吉田先生の糧となるであろう.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2013年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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