Doctorbook academy

阿部健一郎

咬合性外傷をともなう侵襲性歯周炎に対して 歯周組織再生療法を行った症例

<この症例はザ・クインテッセンス2013年11月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201002.pdf
#侵襲性歯周炎 #咬合性外傷 #歯周組織再生療法

【患者】
29歳,男性.非喫煙者.まじめでおとなしい性格.歯周治療を受けたくネットで検索して来院.

【主訴】
以前からくり返し痛みがあった右下の奥歯が腫れて痛い.

【歯科既往歴】
学生時代からブラッシング時の歯肉出血を自覚するも未来院.社会人になり,疼痛を自覚して近医を受診し,歯周病と診断された.月1回ブラッシング指導,歯石除去を受けていたが症状が改善しなかったために当院を受診.治療への理解はあるものの,来院時のプラークコントロールは不良であった.

【診査・診断】
歯周組織検査,デンタルエックス線14枚法写真,パノラマエックス線写真,スタディモデルの製作,口腔内写真撮影などを資料採取.それをもとに,咬合性外傷をともなう重度広汎型侵襲性歯周炎と診断.早期接触のある右下7番に顕著な骨吸収および歯根吸収が認められた.問診を進めると右側咀嚼習慣があり,右で頬杖する態癖があったことから,両者に因果関係があると推測した.

【治療計画】
炎症のコントロールとして歯周基本治療および歯周組織再生療法を含めた歯周外科治療,力のコントロールとして態癖の改善,早期接触部位への咬合調整,スプリント療法を用いる治療計画の説明を行った.患者は,前医との治療方針の違いに戸惑いをみせたが,説明に十分な時間をとったことにより,その必要性および患者自身の既往歴に鑑みて治療の必要性を理解した.

【自己評価】
患者の理解と協力を得ることができ,SPT 期の現在も良好な経過をたどってはいるが,個々の技術は未熟であることを痛感している.病態が重篤化する前の比較的若い年齢で全顎的治療に取り組めたことで補綴的介入なく,歯周治療のみでSPT に移行できたことは大きな成果であったと考えている.

【今後の課題】
歯周治療の最大の目標は治療結果の長期的な維持安定である.自分自身が行った処置を継続的に評価しつつ,また個々の術式の研鑽に努めたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 杉元敬弘

     阿部先生の経歴からもわかるように,卒後の歯周病をはじめとする研鑽が実を結んだすばらしい症例である.このような咬合性外傷をともなう侵襲性歯周炎に対しては,本文中でも述べられているように,炎症のコントロール,力のコントロールは必須であることは周知の事実であり,とくに垂直性骨吸収が多数歯にみられるこのような症例においては,咬合の管理は困難を極めることは容易に想像できる.そのなかで口腔内の咬合調整にとどまることなく,顎機能,咀嚼習慣や態癖などの診断も行い,知識の幅の広さが伺える.
     そして全体的な印象としては,大掛かりな補綴や極端に難易度の高い外科処置を行ってはいないものの,患者の年齢や経済的な背景を考慮したとてもすばらしい治療計画と感じた.天然歯をできるだけ保存するという姿勢は共感するとともに,阿部先生の人柄を表すような優しい治療で,患者が治療結果に満足して喜んでいる姿が目に浮かぶ.とくにこの年齢で地に足の着いた治療を行っていることはとてもすばらしい.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2013年11月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 杉元敬弘

     阿部先生が筆者の咬合のコースを受講していただいたこともあり,力のコントロールについて述べさせていただく.咬合力はこのような歯周病の症例やインプラントを応用した症例の予後に大きく左右することはいうまでもない.今回のように病態が重篤化する前の比較的若い年齢で補綴的介入なく歯周治療のみでSPTに移行できたことはすばらしいことではあるが,それゆえ先が長く予後については注意深いメインテナンスが必要と思われる.この患者の咬合に関しては初診の段階で前歯のオーバーラップが存在し,極端な叢生もないために問題がないようにみえるにもかかわらず,多数の臼歯部において垂直性骨吸収が存在すること,上下顎の正中にズレや左右臼歯関係の違い,下顎右側前歯の極端な咬耗などがみられることから,形態および機能的な左右差のある,かなりのいびつな状態であったことが推測される.その観点から歯周病についての資料はかなり充実しているので, 咬合の診断についてももう少し客観的な資料を採得し,将来の変化に対応できるようにされたほうがよいのではないかと感じる.
     とはいうものの,自分が阿部先生の年代のときは目新しいことばかりに興味が向いていて本質を見失っていた時期であった.この5年間とてもすばらしい環境でここまで勉強してこられたことがこの症例を通じてよくわかる.このままの真摯な姿勢でさらなる飛躍を遂げてくれると確信している.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2013年11月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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