Doctorbook academy

飯田真也

ミニマムな処置介入による 前歯部審美改善

<この症例はザ・クインテッセンス2014年7月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201407.pdf
#処置介入 #前歯部審美改善 #minimalintervention


【患者】
24歳,女性.治療に対しては積極的で,明るい印象であった.

【主訴】
上下前歯部の見た目をきれいにしたい.

【歯科既往歴】
10年ほど前に全顎矯正治療の既往があったが,保定不足により歯列の後戻りを起こしてしまった.

【診査・診断】
臼歯関係は左右Ⅱ級であり,臼歯の傾斜も認められたが,顎機能において特記事項は認められなかった.口腔内写真および模型診査から,前歯部の審美改善には矯正治療が不可避と判断した.本症例は全顎矯正の後,前歯部の審美治療を行うことが望ましいと考えるが,治療期間に制約があるため,前歯部に限局した治療を行うこととした.MTM 後には矮小な右上2番の補綴的対応が必要となることも治療計画に含めた.

【治療計画】
矯正治療についての理解はあったが,ブラケットの装着は前治療時の悪い印象があり,受け入れられなかった.幸い,歯の位置については傾斜移動でほぼ改善できると診断していたため,必要であれば着脱可能なアライナーによる上下前歯部MTM を行うこととした.

【自己評価】
術前の治療計画から大きく逸脱することなく治療を終えることができた.しかしながら,形成においてはもう少し繊細に挑めば,より切削量を少なくできたと考える

【今後の課題】
本症例では治療期間の制約上,前歯部に限局した治療であり,一口腔単位の治療ではない.その結果,予期せぬトラブルが発生するかもしれないことをあらかじめ想定しておかなければならない.また以前にも矯正後の後戻りを起こしている患者であるため,治療終了後の後戻りに対してもフォローアップしていく必要があると考えている.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 長谷川龍貴

     今回のケースは総合的に診断され,患者とのコミュニケーションもよくとれたすばらしいケースである.私はいつも多くの先生に「診断が80%」と話しているように,まず歯質をできるだけ保存するMI のコンセプトに基づいて診断を行うことが,結果として高い予知性をもった治療結果につながると考える.
     このケースをみると,矯正治療は必須であると考える.ブラケットによる矯正治療の経験がある患者は,再度の装着は受け入れにくい場合がある.マウスピースによる矯正を提案することで,患者の精神的な負担を取り除き,右上2番もラミネートべニアによる修復を選択することで,歯質の可及的な保存をはかり,技術的にもシンプルで予知性の高い結果につながっていると考える.また,診断により顎機能に問題がみられないケースでは,審美を優先するあまり急激なアンテリアガイダンスの変更などは極力避けるべきである.
     問題はメインテナンスである.矯正学的には過去に保定やメインテナンスを怠ったために後戻りを起こしている.また,オーラルハイジーンにも問題がある.初診時にも歯頸部付近の歯質の脱灰がみられ,歯肉も発赤している.現在さらに脱灰が進んでいるようにみえる.マウスピースの使用が原因かもしれないが,ハイジーンの徹底は必須である.患者のモチベーションを落とさないように,歯科衛生士と連携をはかり,注意深く経過を見守る必要がある.

    <この症例はザ・クインテッセンス2014年7月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 長谷川龍貴

     このようなすばらしいケースに1 つ苦言を呈するならば,最終補綴物の色調が周囲の歯とマッチしていないように感じる.これから飯田先生が患者から信頼を得るためにも,歯科技工士の存在は重要である.ラボコミュニケーションを緊密にとって,補綴治療,とくに審美治療にあたることが重要である.
     まだまだこの先困難なケースにあたることもあると思われるが,そのときに考えることは,いつも緻密な診査を行い,可及的に保存的な治療方法を選択し,シンプルなスキルで治療にあたり,メインテナンスはコミュニケーションをしっかりとり,永続的なメインテナンスシステムを構築しておけば,先生のめざす予知性の高い治療結果が得られると思われる.飯田先生のますますの活躍を期待している.

    <この症例はザ・クインテッセンス2014年7月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

Doctorbook academy

本サイトは、歯科医療に従事されている皆さまを対象に情報提供するサイトです。

あなたは歯科医療従事者ですか?
※一般の方は患者向けサイトDoctorbook をご覧ください


Facebook ログインの確認

Doctorbook academy は Facebook ログインをサポートします。

Facebook アカウントより必要な情報を取得します。
許可する場合、YES を押して Facebook 連携に進んでください。 誤って Facebook ログインを選んだ場合は NO を押してください。