CR とセラミッククラウンを用いた前歯部審美修復
<この症例はザ・クインテッセンス2014年8月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201408.pdf
#コンポジットレジン修復 #オールセラミック修復 #ラボコミュニケーション
【患者】
32歳,女性.非喫煙者でまじめな性格
【主訴】
前歯をきれいにしたい.人と話す機会が多い仕事のため,自然に堂々と笑いたい.
【歯科既往歴】
以前,根管治療を行った歯(右上2番左上12番)の変色歯と,右上1番の白濁がずっと気になっていたため,当院を受診.また, 6 年前に矯正治療を受けたが,何年もチェックを受けていない.
【診査・診断】
① version tooth(右上1番左上1番2番),②defective restorations( 右上6番左上6番右下7番6番 ),③ missing tooth(右上4番左上4番右下4番左下4番),④ endodontic treatment tooth(右上2番左上1番2番), ⑤ guidetooth(right:右上3番右下3番,left:左上2番3番左下2番3番 ,front:右上1番左上1番右下1番左下1番)を確認した
前歯部の色調不調和,前歯部歯肉ラインおよび歯軸の不調和,下顎前歯部の歯列不正が挙げられる.また,左右のシンメトリーを考えると,右上2番の形態を左上2番の形態に近づけると右側側方運動時に右上2番の近心切縁にガイドがのってしまうことが懸念された.
【治療計画】
①初期治療,②矯正治療(非同意の場合は対合歯の右下2番の咬合調整が可能かどうか),③変色した失活歯の右上2番左上1番12番をウォーキングブリーチ,④補綴処置右上2番左上1番12番(オールセラミック修復or ラミネートベニア),⑤ホワイトスポットのある右上1番に対してホワイトニング,ラミネートベニア,CR(コンポジットレジン)修復の3つを提案. ホワイトニングの場合,ホワイトスポットはA1シェードよりも濃いのでかなり明るくなる可能性やホワイトスポットが逆にめだつリスクもある.ラミネートベニアとCR を比べると,形成量や将来的な脱離の可能性,ベニア破折等のリスクを説明したうえで患者に選択を決めていただいた.
【自己評価】
治療計画説明時に用いた診断用ワックスアップが患者の理解を助け,スムーズに治療できた.右上1番は,以前はラミネートベニアが第一選択であったかもしれないが,今回のCR 修復が審美的に満足できる結果となり,今後も治療に活かせることを実感した.また,プレパレーションガイドを用いた支台歯形成やガム付きのシェードガイドの利用は,歯科医師・歯科技工士双方にとって補綴物製作に役立ったと考える.
【今後の課題】
CR ペーストのシェード選択を,乾燥した歯に合わせたためか,後日色調不調和になってしまった.CR 修復の知識と技術を磨く必要性を強く感じている.また,歯科技工士とのチームアプローチをもっと大切にしていきたい.最後に,治療の1つひとつにムラがあり,安定した結果を残せない自分との葛藤の日々を無駄にせず,今後の診療と自分自身の成長につなげていきたい.
本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php
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この症例へのコメント
前歯部審美修復治療において一番重要なのは,診査と診断である.そのためには術前の資料,とくに顔貌や口唇と歯の関係を記録しておくことは必須である.金澤先生の術前資料およびワックスアップなどから,可逆的な治療に入る前から綿密に診査し,歯科技工士とディスカッションしながら治療計画を立案した様子が伺える.また,初期治療,CR 修復,補綴修復の各ステップでも,より良い審美修復治療を行うための努力を感じる.なかでも,ホワイトスポットに対してもっともMI な修復治療であるCR 修復を選択し,それを試行錯誤しながら成功させたことは評価に値する.実際ホワイトスポットを透過性のあるCR で修復するのは難しいため苦労されたと思う.その結果,歯周組織と調和した修復物により前歯部の審美性を獲得できた.患者の満足度も高く,金澤先生そしてスタッフや歯科技工士と患者の喜びを共有できたことは素晴らしい経験である.このように悩み,努力した症例を増やしていくことが今後の歯科医師人生を有意義に過ごすことにつながると考える.
<このコメントはザ・クインテッセンス2014年8月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
術前の資料はそろっているものの,診査がやや不足しているように感じた.なぜ前歯部だけ根管治療が必要になったか.顎関節等に問題はなかったのか.矯正治療前の歯列の状態など,歯科既往歴を問診し,過去を想像することが最初の一歩ではないであろうか.また,審美的な問題点に対する解決方法が述べられていない.症例報告をする際は,診査・診断・問題点・改善策(治療計画)・実際の治療,という流れでまとめると誰が見てもわかりやすい.実際に治療計画を考えるうえでも,問題点とその治療方法を考えていくとよりシンプルになる.
CR 修復だけではなくシェード採得に関しては,患者の治療前に最初に行うべきである.窩洞形成や支台歯形成を行った後は歯が乾燥し,明度が高くなったりホワイトスポットがより鮮明になったりすることがある.また,隣接歯が比較的スムースな表面のセラミッククラウンであるため,もう少し研磨が必要なのではと感じた.
歯科技工士と相談の結果, セラミッククラウンにe.max を選択したとある.左側側切歯のみとくに変色を認めるが,他の支台歯と唇側の形成量やフィニッシュラインを変えたのだろうか.ライトの影響かもしれないが,左側側切歯の明度が若干低いように見える.このような支台歯の色調が異なる場合に透過性がある補綴物を選択する場合は,形成量でコントロールする必要がある.圧排糸を入れた状態での咬合面観で確認するとよいだろう.
<このコメントはザ・クインテッセンス2014年8月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>