Doctorbook academy

高田智史

矯正医,歯科技工士と連携し, 患者が望む審美を獲得した症例

<この症例はザ・クインテッセンス2014年9月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201409.pdf
#矯正医 #歯科技工士 #インターディシプリナリーアプローチ

【患者】
22歳,女性.見た目はおっとりしていそうだが,性格は明るく,話をしてみると自分の意見をハキハキという.

【主訴】
小さい歯が気になる.う蝕や歯周病などの問題はない.

【歯科既往歴】
以前より右上2番の矮小歯を気にしていた.他院にてコンポジットレジン充填を行い,少し大きくしてもらった.姉は矯正治療経験者.

【診査・診断】
右上2番は矮小歯(左側に比べて幅径が2mm 小さい)であり,処置後に審美的な結果を得るためには補綴処置前の矯正治療は不可欠である.矯正医である兄と矯正専門の歯科技工士と矯正的な診査・診断を行い,セットアップモデルを製作した.セットアップモデル上,矯正後に歯冠補綴もしくはインプラント補綴が行えるだけのスペースを得られることが診断できた.

【治療計画】
当初,矯正治療の希望はなかったものの,矯正治療を行うこと(部分的な過蓋咬合の改善,正中の不一致の改善,下顎前歯叢生の改善)が右上2番に行う補綴治療の予後を左右することを説明すると患者の理解が得られ,矯正治療への承諾を得ることができた.ただ,矮小歯であるために歯根が短く,矯正による負荷に対する十分な予後が期待できないと判断したことを説明し,右上2番に対しては矯正治療を行わず矯正治療終了後に抜歯し,インプラント補綴を行うことを提案した.

【自己評価】
治療経過2年の結果からみて,インプラント補綴ではなく,矮小歯への歯冠補綴で十分患者が望む審美的な結果が得られた.そのことは,若年者へのインプラント治療への介入を考えさせられる1ケースとなった.

【今後の課題】
以前から,「歯科医療は1歯単位ではなく1口腔単位で行われるべきである」とよく耳にしてきた.もちろんそうである.今後,審美治療に関しては1口腔単位に加え,口元,顔貌を含めた審美的な補綴設計が行える歯科医師になれるように,知識・技術ともに研鑽していきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 飯田吉郎

     主訴は1本の矮小歯であるが,現状の口腔内の状態のまま安易な歯冠補綴を行わず,全顎的な歯列矯正治療を行い,審美的・機能的に歯列を改善したのち,最小限の補綴的な介入で治療を終えたことは評価できる.ただし,右上2番が抜歯予定であったとしても,矯正治療終了後のインプラント補綴が予定されていたのならば,右上2番も矯正治療に組み込み,歯軸を理想的に整え,矯正後に生じる拡大されたスペースの中央に右上2番の歯根を位置させることが,後のインプラント埋入外科時やインプラント周囲の軟組織の形態を整える際に,確実に有利に働いたと思われる.そのような状況で矯正治療を終了していれば,右上2番が補綴修復に変更になったとしても,歯の位置や歯軸が適正であるので,ラミネートベニア等のさらに最小限の介入で補綴修復処置を終えることができたかもしれない.ブラケットを外す前に,矯正医・補綴医・患者の3 者の間で矯正治療の結果を共有し,矯正治療後の治療計画の確認を再度行うべきであっただろう.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2014年9月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 飯田吉郎

     このように,インプラント埋入前の前準備として,たとえ抜歯予定歯であっても矯正治療に組み込み,硬・軟組織のマネジメントを行うことは,審美領域のインプラント治療の際には近年頻繁に計画される術式である.著者のクリニックは実兄が矯正歯科医ということで,そのような治療計画への対応が可能であろうと思われるので,日頃から新しい知識を共有し,インターディシプリナリーな治療をさらに推し進めていってもらいたい.
    また,プロビジョナルレストレーションで良好に経過した右上2番の唇側ハーフポンティックの形態を,CAD/CAMのモノリシッククラウンで再現した手法は,CAD/CAMの利点を活かしたよい方法である.ただし,このように歯肉縁下にマージン設定を行い,ハーフポンティックで歯肉を圧迫していく手法は,歯周組織への負担が大きく,予後の注意深い観察が必要である.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2014年9月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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