咬合平面の不正により審美,咀嚼障害を 呈した症例における咬合再構成
<この症例はザ・クインテッセンス2014年10月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201410.pdf
#咬合平面 #咬合挙上 #治療用義歯
【患者】
63歳,女性.性格は温厚.食べることが好き.歯科以外のことでもいろいろ話をしてくださる明るい方.
【主訴】
歯並びの歪みが気になる.
【歯科既往歴】
7 ~ 8 年前に,他院にて上顎クロスアーチブリッジを装着したが,頻回に脱離を繰り返すことによる咀嚼障害,および同ブリッジの著しい咬合平面の歪みから,審美障害を訴えていた.
【診査・診断】
装着されているブリッジの咬合平面は瞳孔間線と比較し著しく傾斜しており,さらに顔面正中と補綴物正中のずれ,中切歯歯軸の非対称が認められた.
そこでオーバーレイタイプの修理用パーツを製作し,上顎右側第一大臼歯の1本義歯と連結修理し,1つ目の治療用義歯とした.これを用いて,咬合平面および補綴スペースの診断・評価を行った.
【治療計画】
上顎右側前歯は,歯槽骨をともなって挺出し,唇側に変位しているため,咬合平面の設定およびリップサポートの決定が困難であった.そこで,上顎右側前歯の抜歯・唇側骨の削除,さらに咬合平面の修正およびスペースの必要性から,2~3mmの挙上が必要と診断し,患者に説明を行い理解していただいた.
【自己評価】
本治療において,治療用義歯を2回製作している.最初は咬合高径を変更せずに義歯修理という形で咬合平面・補綴スペースの診査,2回目は咬合高径を変更し,リップサポートなどを確認するためである.
このように,治療用義歯を有効に用いることで各段階における問題点の抽出を行い,原因となっている因子を把握・診断しながら最終補綴に移行できたのはないかと考える.
一方,上顎右側犬歯部において印象の不備,メインテナンスの不良により歯肉の発赤が生じてしまったことは反省点である.
【今後の課題】
長期予後を保つため,定期的メインテナンスにて現在の咬合・歯周組織の状態を維持できるよう知識と技術の向上に努めたい.
本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php
Doctorbook academy
本サイトは、歯科医療に従事されている皆さまを対象に情報提供するサイトです。
あなたは歯科医療従事者ですか?
※一般の方は患者向けサイトDoctorbook をご覧ください
Facebook ログインの確認
Doctorbook academy は Facebook ログインをサポートします。
Facebook アカウントより必要な情報を取得します。
許可する場合、YES を押して Facebook 連携に進んでください。
誤って Facebook ログインを選んだ場合は NO を押してください。
この症例へのコメント
今回提示された症例は,審美不良症例における咬合高径の挙上をともなうオーラルリハビリテーションである.初診時の写真をみると,前頭面咬合平面が斜めになっており,これは存在する補綴スペースに無理矢理補綴物を装着したもので,残存歯数から考えても無謀なブリッジが装着されているといえる.そして,治療に際し,治療用義歯を2回製作しているが, 1 回目は義歯修理の形で装着し,現在患者が有する咬合高径における審美,さらには咬合高径の確認を行っている. 2 回目の義歯では,必要最小限の咬合高径の挙上を行い,最終的な補綴処置を行っている.この治療法はエラーが少なく,患者のニーズを汲み取るには最適な方法といえる.
この症例では,下顎左側犬歯,第一小臼歯がやや挺出しており,そのため咬合平面が同部位で歪んでいるのが気になる.対象が健全歯であり,患者の同意を得ることは難しいと思うが残念な部分である.
<このコメントはザ・クインテッセンス2014年10月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
安部先生は,大学卒業後に一般の歯科医院で2 年間勤務した後,補綴を勉強したいとのことで,私が在籍する高齢者歯科分野に入局された.入局当初は,患者の口腔内を総合的に診断することができず,苦労していたようであった.しかし,外来では,咬合崩壊した高齢者が多く,治療義歯を装着してから最終補綴に進む症例が多いため,いつの間にか医局のなかでも「義歯の上手な女医先生」といわれるまでになった.今回の症例も,治療義歯を上手に使用し,審美的にも良好な結果を得ている.
とはいえ,補綴処置が無事に終了しても,補綴した歯を維持するにはペリオに関する知識,技術が必須となる.その意味において,いくらがんばって補綴しても,患者の歯周組織の状態を維持,改善できなければ,補綴物の予後は不確実なものとなることを忘れないでほしいと思う.
<このコメントはザ・クインテッセンス2014年10月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>