Doctorbook academy

原口尚大

d‐PTFE 膜を用いた開放創での骨造成

<この症例はザ・クインテッセンス2014年12月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201412.pdf
#d-PTFE膜 #開放創 #骨造成

【患者】
61歳,女性,会社員.性格は上品な感じで,治療に協力的.

【主訴】
2年前から右下が痛くて咬めない.

【歯科既往歴】
主訴の右下7番6番は約2年前から咬合痛のため,咀嚼していない.6か月前に他院で抜歯を勧められたが,現在まで放置.

【診査・診断】
主訴の他,上顎右側,下顎左側臼歯部の骨吸収,上顎左側臼歯部の不適合補綴物が認められ,全顎的な治療が必要であると診断した.主訴である右下7番6番は,歯周組織検査の結果,ともに出血排膿をともなった10mm 以上の深いポケットが認められ,動揺度はⅢ度であった.またCT 画像においても,歯根の全周にわたる透過像が認められたため,抜歯と診断した.

【治療計画】
誌面の都合上,本稿では下顎右側臼歯部に焦点を当てて述べたい.抜歯後,右下7番5番部にインプラントを埋入し,固定性補綴装置による咀嚼機能の回復を説明した.埋入予定部位には骨造成が必要であり,その際にオトガイ孔近くに骨膜減張切開を加えるため,付着歯肉の減少や知覚麻痺を生じる可能性がある.よって,本症例はopen barrier membrane techniqueを用いることで,骨膜減張切開を回避する術式を選択した.患者にも説明して同意を得た.

【自己評価】
右下5番のインプラントの埋入位置がやや遠心になってしまった.骨補填材の吸収程度は予測どおりであり,インプラント埋入から6か月間の免荷期間中もインプラント周囲辺縁骨レベルの大きな変化はなく,経過は良好であった.今後も注意深い経過観察が必要である.

【今後の課題】
1つひとつの手技をスピーディに正確に口腔内の総合的な診断・治療を心掛ける.また,今まで行ってきた治療を評価し,治療をよりよいものにしていきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 山田潤一

     欠損部顎堤に骨造成を行ったことで,骨レベルが隣在歯と同程度まで回復され,術後のメインテナンスが行いやすい環境になったと思われる.
    口腔内写真からはインプラント周囲の角化歯肉が少ないようにみえるため,今後,プラークコントロールや歯肉の状態をチェックし,必要があれば遊離歯肉移植などを検討してみてはどうか.
     右下5番部インプラントが遠心に埋入された原因については,右下5番相当部位には皮質化した既存骨が抜歯窩に沿って認め
    られるため,インプラント窩の形成時において,起始点は適正であったとしてもドリリングおよび埋入の際に既存骨に押されて,より軟らかい骨造成部方向へ流されたと推測される.右下5番インプラントが遠心に埋入されたことでつぎのことが考えられる.①上部補綴装置製作の際,近心のコーピングサポートが不十分となるため,ハイブリッドレジンやポーセレンの前装冠であれば破折率が高くなるが,本症例ではフルジルコニアを用いることで破折のリスクを回避している.その他,②近心のエンブレジャーが大きくなり,ハーフポンティック形態となっており,清掃が難しい,③右下5番と右下6番のオクルーザルテーブルの比率が悪くなるなど,適正な歯冠形態の再現が難しいなどが考えられるため,今後の慎重な経過観察が必要である.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2014年12月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 山田潤一

     本症例の既往歴に「忙しくて1 ~ 2 年間放置していた」とあるが,抜歯に至った原因を歯あるいは口腔内だけからみるのではなく,患者の背景まで考え,治療の重要性と予防のための継続的なメインテナンスの必要性を患者に理解・実践してもらうことにも,今後力を注いでほしい.
     歯科医療の目的は,患者が生涯にわたって口腔の健康を維持できるようにサポートすることであり,そのためにはエビデンスに則った多くの専門的な知識と的確な技術を保持し,それを適切に生かすことが必要である.また,患者が安心して継続的に来院できるような信頼関係を築くためには,歯科医師やスタッフの人間性やコミュニケーション能力も大切であろう.今後,さまざまな研鑽を積んでいかれると思われるが,治療中心にならずに健康な人を健康のまま維持し,また,問題を抱えて来院され患者には適切な治療を行ったうえで,得られた状態をできるだけ長期に維持するような歯科診療をめざしてほしい.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2014年12月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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