Doctorbook academy

八木洋二郎

根管治療を行った大臼歯に対して コンポジットレジンを用いて オーバーレイ修復を行った症例

<この症例はザ・クインテッセンス2015年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201501.pdf
#コンポジットレジン #オーバーレイ修復

【患者】
22歳,女性.明るい性格で,独特のファッションから自己主張は強そうであるが,こちらの指示も素直に受け入れる.

【主訴】
検診希望.

【歯科既往歴】
過去に左下6番の抜髄経験あり.多数のう蝕がみられるが自覚はない.

【診査・診断】
左下6番部は過去に他院で抜髄されているが,初診時のパノラマ像で根尖部に骨透過像がみられることから,適切な根管治療がなされていなかったと思われる.また,抜髄の際に咬頭を削合されており,補綴もMO にインレーが装着されているのみで対合歯とのコンタクトは乏しい.

【治療計画】
左下6番部は不適切な根管治療による根尖性歯周炎と診断した.自覚症状はなかったが予後を説明し,根管治療への同意は得られた.補綴に関しては若い女性ということもあり,金属冠に対する抵抗がみられたため,当時はまだチャレンジケースではあったが,コンポジットレジンによるオーバーレイ修復を説明したところ,費用の面でもそのほうがよいと同意を得られた.

【自己評価】
以前は,失活歯は生活歯に比べ,歯質自体の強度が劣ると考えられてきたが,実際は支台歯形成時に生じた構造欠陥によるものであり,歯冠の機械的抵抗性を考慮したとき,全部被覆冠ではなく,接着全咬頭被覆修復が有効と考えられる.本症例はまさにその適応と考えられた.また,患者は喫煙者であり,カフェで働いているために日常的にコーヒーを飲むとのことで,若干の変色はみられるが,臼歯部という点では審美的に問題なく,根尖病巣も完治しており,術後経過は良好である.

【今後の課題】
本症例の時点では,ダイレクトボンディングのテクニックも未熟であり,ラバーダムやマイクロスコープも使用していなかったため,根管治療の精度はもちろん,接着界面の厳密な診査や窩縁ベベル,エッチングのラインに関しては大まかなところもあった.現在はラバーダム,マイクロスコープを使用してう蝕除去や充填を行っているので,その技術を伸ばしていきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 白鳥清人

    治療結果から八木先生の高い技術力がみてとれる.また術後4 年経過の口腔内写真からも,この接着全咬頭被覆修復の有効性を感じる.そして,この治療を行ったのが卒後1年目のときと聞いてさらに驚かされた.失活歯の治療は,全部被覆冠が第一選択と考えてきたが,この若い歯科医師の若い患者への「チャレンジ治療」は,もしかすると,これからの歯科治療において今までの常識を覆すような革新的な治療法なのかもしれない.このような治療は,歯科医師の技術と熱意によって治療結果は大きく変わるだろう.そこに興味をもち,探求とトレーニングを繰り返した結果できることであり,本誌をチェアサイドにおいてすぐできるものではない.コンポジットレジン修復の場合は,強度のための窩洞形態,そして接着界面の歯の形成が重要である.コンタクトの再現,咬合接触点,咬頭傾斜の付与も「至難の業」,削合せずに築成でつくっていくには,技術だけではなく,咬合面形態と咬合について熟知している必要がある.「うまい!」のひと言.自分の歯の治療も八木先生にお願いしようと思うのは私だけだろうか?

    <この症例はザ・クインテッセンス2015年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 白鳥清人

    本欄は,「1歯の治療にこだわる若手歯科医師」が症例発表する企画であるが,まさに八木先生にピッタリ.卒後間もない先生で,彼ほどCR 修復にこだわっている先生はいないだろう.今回は,卒後1年目の症例の提示であったが,その後の4年の臨床経験で,スキル,知識がさらに高次元にきているのを私は知っている.これは,寛大な院長のもと,もちろん彼の資質を見込んでのことであろうが,自由に診療を,そして勉強の場を与えてくれる勤務環境によるところも大きいだろう.しかし,このような治療は,「勤務医」,「治療時間がたっぷりとれる」からできる,あるいは「治療費が安いから患者が受け入れてくれる」ということであっては,本当の治療術式とはなっていかない.費用対効果を考え,要望の高い患者に適正時間内に治療ができて,補綴治療を上回るCR 修復でなくてはならない.CR 修復の「地位向上」と資源の有効活用,患者への貢献のため,八木先生のますますのスキルアップを期待したい.そして,そのこだわりをもって,すべての歯科治療に探求の目を向けていってほしい.

    <この症例はザ・クインテッセンス2015年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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