Doctorbook academy

奈良嘉峰

重度歯周炎罹患歯に 歯周組織再生療法を行った症例

<この症例はザ・クインテッセンス2015年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201503.pdf
#重度歯周炎 #歯周組織再生療法 #垂直性骨吸収

【患者】
41歳,男性,会社員.寡黙であるが,疑問があれば質問してくるなど,歯科治療に対して不安があるようだった.非喫煙者であった.

【主訴】
「前歯がグラグラして噛めない」ということで来院.数年前からしばしばブラッシング時の出血や,歯肉の腫脹があったとのこと.

【歯科既往歴】
これまで受けた歯科治療は,う蝕に対する修復治療のみで,歯周病を指摘されたことはなかったとのこと.

【診査・診断】
多くの部位でアタッチメントロスが進行していて,広汎型重度慢性歯周炎と診断した.プラークコントロールの不良に加え,辺縁隆線や咬頭の不連続性や,アンテリアガイダンスの喪失による臼歯部の干渉が歯周組織の破壊を助長していたと思われた.隣接面コンタクトが欠如している部位もあり,食片圧入等も歯周炎の進行に関与していたと考えられた.

【治療計画】
矯正治療,インプラント治療を提案したが,受け入れてもらえなかった.根尖付近まで骨吸収している右上7番3番左上7番,右下7番1番左下2番3番7番は抜歯と判断し,説明した.患者は非常に落胆していたため,患者の気持ちに整理がついた段階で,少しずつ治療を進めていくことにした.

【自己評価】
再生療法後の経過は良好であった.実際には若干の骨形態の不整は残っていると思われるため,今後も注意深いメインテナンスが必要である.また,暫間固定のまま終えている箇所があるが,今後外れても再度暫間固定か,局所的な治療で対応可能と考えている.

【今後の課題】
患者に安心して治療を受けてもらえるように,説得力のある説明を心掛けていきたい.そのためには正確な診査・診断は欠かせない.知識,技術の研鑽とともに,一口腔単位での診断力を養っていきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 松井徳雄

     このケースはすべて天然歯で歯列不正があり,垂直的骨吸収が存在するため,炎症と力のコントロールが難しく,全顎的な総合治療が必要な症例である.今回はこの症例における下顎のkey tooth となるの右下4番保存の可否の診断と対応がポイントとして挙げられている.一般に垂直的骨欠損量が3mm以上の場合,その対応として再生療法が考えられる.再生療法は,骨欠損の原因,適応症の選択,術式,術後管理など,多くの条件が相まって良好な治療結果が得られる.とくに奈良先生の手技はすばらしいものがあり,術式1つひとつを基本に忠実にていねいにされている.これもひとえに奈良先生の真摯な姿勢のあらわれだと思う.また,このケースで重要なポイントの1つに,患者との信頼関係が挙げられる.治療技術や知識はわれわれの努力,研鑽で向上するが,歯周病患者の治療への理解を得ることは,個々の状況が異なり難しい場合が多い.奈良先生をはじめスタッフが患者の状況に応じた対応を行ったところが大きいと感じる.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2015年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 松井徳雄

     垂直性骨欠損は歯列不正の部位に生じることが多い.清掃性も悪くなり,外傷性の力も受けやすいことも一因であろう.骨欠損状態から再生療法の適応症でも,外傷力などの悪化させる要因の排除が不確実だと,予後の安定を求めることは難しくなる.下顎右側臼歯部は天然歯で右下6番5番部はわずかに近心傾斜をしているため,エックス線的に右下5番4番間に辺縁隆線の段差と歯間離開がみられる.同様に,左上3番4番間もエックス線的に歯間離開が疑われ,今後は咬合状態や歯の動揺度など,注意深いチェックが必要であろう.また,再生療法を行う場合は,リエントリーの必要性も術前に伝えておく必要がある.どのような重篤な骨欠損も最初はわずかな骨欠損であるので,理想的には骨の不整形態の改善をはかることが望ましいと考える.局所の問題でも1口腔1単位の診査・診断が求められる場合が多い.治療を行うか否かは最終的には患者と決定していくが,歯科医師側が治療の必要性をしっかりと認識し,治療のメリット,デメリットを患者が理解して治療を実践することが大切である.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2015年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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