Doctorbook academy

今井光

慢性根尖性歯周炎に対して CBCT を活用した歯内治療

<この症例はザ・クインテッセンス2015年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201504.pdf
#慢性根尖性歯周炎 #CBCT #歯内治療

【患者】
61歳,女性,歯科受診は約20年ぶり.すでに当院を受診中であった夫に勧められて来院.「きちんと治療したい」との希望.明るい性格.

【主訴】
左下奥歯の咬合痛.全体的に物が詰まりやすい.噛み合わせが悪く,肩こりあり.

【歯科既往歴】
20年前に装着した右側の補綴物のなじみが悪くなり,左側ばかりで噛んでいる.将来に向けて健康のためには噛むことが重要と理解されており,なるべく自分の歯を残していたいという希望あり.現在,インプラント治療は考えていない.

【診査・診断】
歯周疾患においては,ポケットも浅く動揺はないが,出血点が多く,プラークコントロール不良である.補綴物は経時的変化により,咬合面は摩耗し,マージン不良のものが散見される.下顎左側の違和感とたびたびの咬合痛に関してはエックス線所見より左下7番の慢性根尖性歯周炎と診断.左下6番は非感染根管歯と診断.

【治療計画】
左下7番のエンド治療および左下6番7番の不良補綴物の再製を提案した.左下7番のエックス線所見において,近心根管が明瞭でなく,近心根尖部から遠心に及ぶ広範囲な透過像が認められており,歯根破折の可能性も否定できないと考えられた.しかし,エックス線診査だけでは三次元的な骨吸収度合いの把握は難しい.そこでCBCT 診査も併用し,慎重に歯内治療を行うことを説明したところ,患者は治療期間が長期に及ぶことを了承のうえ,治療を開始した.

【自己評価】
術後のCBCT 像でも,骨透過像が縮小し,根尖病変の縮小がうかがえる.エックス線写真でも,歯槽骨梁が鮮明になり,歯根膜腔の拡大もなくなった.CBCT を歯内治療に用いることで的確な診断や治療のスピードアップにつながった.

【今後の課題】
三次元的CBCT データを読み取るトレーニングを重ねることで,日常臨床で大半を占めるデンタルエックス線撮影の読影力をも上げることができる.歯内治療は長年の手指の感覚が重要なことは間違いない.しかし先輩たちの熟年の技にいち早く辿り着くために,われわれ後輩たちにとってCBCT はその一助となると実感している.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 安東俊夫

     今井先生は開業後12年を経過し,歯科医院も地域に認知され,患者さんからの信頼も得ているようにうかがえる.
     今回は左下7番の根管治療の症例である.デンタルエックス線写真ではエンド・ペリオ病変に近い像を呈している.一般的に右下7番左下7番は樋状根の場合もあり,根形態が複雑であること,また皮質骨が厚く病変の浸潤程度が掴みにくい部位でもあり,二次元的診断では限界があることが多い.その場合,三次元的なCBCT による診断は有効である.左下7番の補綴物を除去し,金属のハレーションの低減をはかりCBCT を撮影している.同時に再度プロービングを行い,ペリオ病変の可能性を検証している.初診から経過のデンタルエックス線写真の規格性をはかっている.これらのことで,少しでも診断精度をあげたいという術者の細かな配慮がうかがえ,好感がもてる.
     エンド病変という診断のもと,デンタルエックス線写真等で経過を確認しながら,根管治療,根管充填を行っている.根管充填後も早期の補綴物装着は避け,プロビジョナルレストレーションにて経過観察を行い,治癒傾向を確認後に補綴物を装着している.一見したら基本的なことで当たり前のようにみえるが,実際の臨床において,これを実践するのはなかなか難しい.今井先生の1歯単位の基本治療を大切にする真面目な臨床姿勢が伺える治療手順である.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2015年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 安東俊夫

     初診時に比べて病状は大幅に改善している.患者さんも満足されていることであろう.ここで,さらなるレベルアップのために,この症例を再評価してみたい.根管治療の成功のポイントは,起炎因子の除去,根尖の閉鎖であることは周知のことである.複数根管の治療の場合,根管ごとの診断が重要で,病変の原因根から1根管ずつ順番に治療を行うほうが良好な結果を得やすいことが多い.根管内の拡大清掃は本人の反省のごとくであり,さらなる効率的な手技の研鑽が望まれる.また,根尖病変は歯根膜の炎症であることを鑑みれば,左下7番の遠心部の歯槽硬線の明瞭化が今ひとつである.今後注意深い経過観察が必要と考える.
     根管治療が長期にわたる場合,異物排除機能にともなって歯の移動が起こる場合がある.今回も治療中に左下7番は近心に傾斜してきている.プロビジョナルレストレーションにてその点を改善して補綴物を装着するのも1法である.また,左下6番は術前から根分岐部病変の存在がうかがえる.その原因は咬合性外傷なのか,ペリオ由来,エンド由来のものなのか,右側との咬合関係や咀嚼側等に関連しての診断,全顎的な状況把握のなかで,局所の問題をとらえる診断力をさらに養ってほしい.
     今後,歯科治療に関する診断機器,マテリアル,技術がますます進化していくことは想像に難くない.しかし,自己の症例を客観的に評価し,謙虚に反省する姿勢はつねに必要である.また,それを蓄積していくことが,これからの今井先生のさらなる臨床レベルアップへの糧となることを確信している.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2015年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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