矮小歯に対してMTM 後, ラミネートベニアで修復した症例
<この症例はザ・クインテッセンス2015年12月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201512.pdf
#矮小歯 #ワックスアップ #ラミネートベニア
【患者】
35歳,女性.筆者の友人であり,仕事仲間の歯科技工士.治療の相談を受けた時点で筆者の拠点とする愛知県から広島県にすでに転居していた.
【主訴】
右上2番の矮小歯が審美的に気になる.
【歯科既往歴】
本人が歯科技工士という職業柄,歯科に対する意識は非常に高い.
【診査・診断】
本症例は治療相談時にすでに他院でEⒺのサイナスリフトおよびインプラント埋入後であり,右上2番矮小歯のみに限局した補綴治療計画を立案.スタディモデル製作後,反対側同名歯を参考に歯科技工士(ハナキューデンタルラボ・三浦氏)と相談.ワックスアップを施し,理想的な歯牙形態,歯肉形態を考えた.
【治療計画】
ワックスアップをもとに患者と相談.遠方に在住のため,限られた来院回数のなかでの処置になる.補綴にあたり対合関係においてクリアランス不足になるため,右下3番2番の先端部分を切削,その後,右上2番矮小歯の歯頸部歯肉を切除する計画を提示したが,患者が歯科技工士であることから,なるべく歯を切削したくないという希望が強かったため,右上2番矮小歯をMTMにて唇側に移動させることでクリアランス不足を解消することにした.
【自己評価】
本症例では,治療計画時に患者の希望により歯の切削を行わない予定であったが,実際,治療期間,回数の制約のなかで不本意ながら歯の切削を行うこととなってしまったことと,患者自身low lip であり,気にはしていないものの,可能であればジンジバルラインももう少し整えていきたかった.
【今後の課題】
今回は治療回数,期間の制約のなかで,どのようにしたら筆者自身のもつ治療技術のなかで患者に満足してもらえるのかが最大のテーマであった.今後もさまざまな患者の主訴に向き合うなかで,それぞれの制約条件のなかでの治療がより患者に満足してもらえるようにレベルアップをしていきたい.今回の場合,治療予後ではMTM を行っているので,後戻りも考えられるため,今後もフォローしていきたい.
本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php
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この症例へのコメント
限られた治療回数のなかで,最小限の治療介入により,患者満足を得ることができたよいケースだと思う.患者が歯科技工士で,歯の切削や歯頸線を整える外科手術の功罪を十分に理解しており,そのうえで妥協案を選択した場合の最終的な仕上がりを患者自身がイメージできていたので,妥協案でも満足を得ることができたのだろう.
細かな部分で述べるならば,歯冠形態をもう少し反対側同名歯に近似させてもよかったのではないか? 歯冠
長が短いので形態を合わせにくいが,遠心隅角にもう少し丸みを与えてもよかったと思う.もう1 点,ラミネートべニアの接着後の明度が反対側同名歯と比べてやや低いように思われる.ラミネートべニアは試適時と比べてセメントを介して接着を行った後,どうしても明度が下がる傾向がある.セメントの色調で調整する方法もあるが,明度の調整は難易度が高く,とくに無切削の薄いベニアの場合,あらかじめ技工物の明度をやや高めに製作しておくとよい結果が得られる.
<このコメントはザ・クインテッセンス2015年12月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
治療計画には,いつもcomplete plan とcompromiseplan(妥協案)が存在し,さまざまな理由で治療計画を妥協せざるをえないことがよくある.今回の症例では,来院回数に限りがあることと,歯の切削を患者が拒んだことで妥協案が採用されたわけであるが,この妥協案に果たしてMTM が必要であったか? 術前のワックスアップはMTM なしの計画と思われるが,十分よい形態がとれていると思われる.患歯や対合歯の切削がわずかに必要になるため,患者に受け入れてもらえなかったのかもしれないが,切縁の唇舌径が厚くなることを除けば,とくに問題のない計画であったと思う.ラミネートべニア装着後のMTM の後戻りの危険性を考えても,歯の切削の妥当性を患者に理解させれば,MTM は今回の妥協案においては必要なかったのではないか.今後は,患者の希望を優先しながらも,必要な治療は受け入れてもらい,より妥当性のある治療計画の実行を心掛けてほしい.
<このコメントはザ・クインテッセンス2015年12月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>