Doctorbook academy

西村和美

感染根管治療を含んだ全顎治療の一症例

<この症例はザ・クインテッセンス2016年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201601.pdf
#感染根管治療 #全顎治療

【患者】
67歳,女性.明るく真面目な性格.

【主訴】
上の前歯が何度も外れては再装着を繰り返している.

【歯科既往歴】
今までは痛いときなどの困った際に歯科医院に行き,主訴のみを治療してきた.

【診査・診断】
左側臼歯部のバーティカルストップが欠如し,咬合高径の低下,左右咬合平面の乱れがみられる.また 多くの根尖病変を有する歯がみられる.歯周組織検査およびエックス線写真より,歯周炎によるものではなく,経年的にう蝕や歯根破折などを惹起したことにより歯を失ったと考えられる.包括的な治療を行い,補綴的な咬合再構成が必要であると診断した

【治療計画】
questionable な左下4なっmは歯周ポケット値から,エンド・ペリオ病変ではなく慢性根尖性歯周炎と診断し,感染根管治療を行うことで保存可能であると診断した.
その他の感染根管歯右上7番6番5番4番2番左上5番6番7番 , 右下7番4番3番に関しても再根管治療を行うこととした.左下5番6番7番インプラント治療,右下4番〜左下4番小矯正(LOT)を含めた全顎的な治療を計画した.患者は「外科治療が怖い」と言われたが,コンサルテーションを行い,すべて同意を得ることができた.

【自己評価】
早急に右上1番左上1番2番を抜歯したが,まず残根状態でプロビジョナルレストレーションを入れ,保存できる歯は保存を試みるべきであったと考える.結果,右上4番〜左上6番の長いブリッジとなってしまった.左下4番の根管治療により,根尖病変も縮小傾向にあるものの,今後も注意深く経過観察を行っていく必要がある.

【今後の課題】
自分の行った治療に責任をもち,治療結果に目を背けることなく経過を追っていくべきと考える.生涯を通じて患者に寄り添える歯科医師をめざして,日々研鑽していきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 林美穂

     はじめに,術前から術後に及ぶデンタルエックス線や口腔内写真などの資料をしっかりと揃えているところに西村先生の歯科医療に対する姿勢のすばらしさを垣間見ることができる.また,大変難易度の高いケースを基本に忠実に仕上げていることに感銘を覚えた.このケースの一番難しい点は,下顎位の決定であろう.西村先生は天然歯の根管治療を進めながらプロビジョナルレストレーションに床を付与し,可撤式として強度をはかりながら,顎位を模索するためのスプリントとして使用している.長期に及ぶ治療のなかで,治療期間の短縮を考えるうえでも,このような工夫は非常に有効である.また,失活歯のほとんどの歯の再根管治療を行い,良好な結果を出している点も西村先生の真面目な人柄をうかがうことができ,好印象である.さらに評価する点として,下顎前歯部のLOT を行っていることである.それにより,上顎前歯のブリッジの負担を軽減し,長期の安定につながるであろうと考える.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2016年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 林美穂

     西村和美先生の開業されている地域は,大変田舎である.そのなかで,ひとりで包括的な治療に取り組まれ,真摯に患者と向き合った治療をされていることに敬意を表したい.あえて気になることを挙げるならば,部分的なメタルポストの長さに不安が残る.このような治療においてありがちなことは,メタルポストごと補綴装置が脱落してくる,もしくは歯冠部の歯質を含んで破折し,ポストごと脱落してくることである.上顎はほとんどが失活歯で再根管治療を行っていることから,歯冠部の残存歯質量は少なかったのではないかと考える.そうであれば,もう少しポスト部の長さを長くしておかないと脱落を招くことになりかねない.また,咬合高径を高くしているにもかかわらず,術前と術後を比較すると上下の犬歯の位置関係がAngle Class Ⅱになっている点が気になるところである.おそらく,この位置関係では側方運動時の動きに少し無理があるのではないかと予測する.できれば,最終的な顎位の模索と評価をもう少し詰めたほうがよかったのではないだろうか.しかしながら,西村先生の若さですばらしい治療である.さらなる自己研鑽のために,このケースの予後を追い,自身の成長の糧としていただきたい.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2016年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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