SPT 中に歯周炎の進行を認め, 歯周外科を行った症例
<この症例はザ・クインテッセンス2016年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201603.pdf
#SPT #歯周外科 #トライセクション
【患者】
47歳,女性,会社員.こちらの説明をしっかり聞いてくれる.明るい性格.非喫煙者.
【主訴】
上下右側大臼歯部の疼痛(朝起きると痛い),歯周病治療希望.
【歯科既往歴】
他院にて,歯周病のレーザー治療を行っていたとのこと.詳細は不明.
【診査・診断】
プラークコントロールは良好であるため,見た目の歯肉は比較的きれいであるが,全顎的に深いプロービングデプス(以下,PD と略)を認めた.また,歯の咬耗や頬粘膜の圧痕からブラキシズムを強く疑うことができた.慢性歯周炎と診断.
【治療計画】
主訴の右上7番のプロービングデプスは最深部で9mm,右下7番では12mmであった.歯周基本治療としてプラークコントロール,咬合調整,SRP,ナイトガードの応用,必要に応じて歯周外科治療を行うことを説明した.
【自己評価】
フラップ手術時の骨欠損の程度を考慮すれば,右下7番に関しては比較的良好な経過と思われる.右上7番はSPT 中にトライセクションを行ったが,もう少し早い段階で対応できたのではないかと反省している.
【今後の課題】
ペリオの症例に関して,力のコントロールや歯周補綴に対してまだまだ力不足を感じる.一口腔単位での診査・診断の精度を高め,よりさまざまなケースに対応できるように努力していきたい.
本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php
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この症例へのコメント
卒後18年でキャリアもかなり積んでいるが,開業してからは勉強会で症例発表する機会が少なかったようなので,積極的に勉強会で症例発表を行って今後の臨床にフィードバックし,より確実性の高い治療をめざしてもらいたい.専門分野の歯周病治療に関してあえていうと,歯周外科時に感染源の除去はもちろん,術後により多くの歯周組織再生やプラークコントロールのしやすい歯肉形態の獲得ができるように適応症を選び実践し,スキルアップすることでより多くの歯を救えるようになってもらいたい.そして,今後は臨床の幅を広げ,質を向上させるために歯周環境の改善や咬合のコントロールを行うための矯正や咬合支持の確保のためのインプラント治療にもできればチャレンジしていってほしい.浅野先生はソフトとハードのバランスがよくとれているので,FDC(千葉臨床歯科フォーラム)をとおして今後いっそうの活躍をしてもらえることを期待している.
<このコメントはザ・クインテッセンス2016年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
今回のケースを見ると,診査・診断に必要な資料もきちんと採得されている.右下7番は広くて深い垂直性骨欠損が認められたが,的確に処置がなされ,骨移植などを併用することなくアクセスフラップのみで良好な結果が得られているのは,術者の技量によるものだと思う.また,右上7番は歯周基本治療後の歯周組織検査からは歯周外科が必要だったのではと考えられたが,継続的にSPT を行い,適切な処置を行ったことにより,歯の喪失を回避できたことは評価できる.しかし,歯周基本治療後に歯周外科を行っていれば,トライセクションと抜髄を回避できた可能性もある.就寝中のブラキシズムが疑われるため,同歯の咬合負担は大きく,失活歯でかつ2根の状態なので破折のリスクがあり,予後が心配される.ナイトガードの使用の可能性について説明をしておくとよいだろう.また,初診時にPD が6 mm 以上認められてSRP のみ行った部位は,SPT 中に注意をして経過をみたほうがよいと思われる.
<このコメントはザ・クインテッセンス2016年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>