Doctorbook academy

岩城秀明

総義歯治療への取り組み

<この症例はザ・クインテッセンス2016年5月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201605.pdf
#総義歯治療 #治療用義歯 #ゴシックアーチ

【患者】
86歳,女性,農業をされている.初診時はあまり話されず,寡黙な性格と感じられた.

【主訴】
痛くて噛めない.左の頬を噛んでしまう.噛むと左下のほうが,ピリっと痛みが走るときがある.

【歯科既往歴】
40代前半に総義歯に近い状態になられたとのこと.疼痛があるたびに通院をされていた.内科を受診されており,胃薬を処方されていた.歯科の知識は低いと考えた.

【診査・診断】
旧義歯は正中に対して咬合平面が左下方に傾いており,咬合面は摩耗していた.下顎歯槽骨の著しい吸収がみられ,フラビーガムも認められた.長期間,義歯が不適合であったと診断した.

【治療計画】
長期間の義歯の不適合により,顎関節や筋肉が変化している.咬合の安定が必要であり,すぐには痛くなく食べられるようにはならないと説明.治療用義歯の製作後,本義歯の製作を計画した.患者には,「早く痛くなく,食べたい」といわれた.

【自己評価】
解剖学的な指標として,患者の過去の写真は咬合高径を決めるうえでとても参考になった.生理学的な方法として安静位の高径も計測し,総合的に判断したことが,患者の最適な顎位に近いものになったと考える.

【今後の課題】
今回,最終補綴物が装着されるまでに治療回数が大変多くかかってしまった.ひとつひとつの手技のスピードアップと確実性を求めたい.また,今後,有歯顎の咬合再構成のケースに取り組んでいけるように,日々研鑽していきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 重田幸司郎

    総義歯治療は,難しい.とくに高齢の患者のなかには,不適合な義歯を長年我慢して使用されている人が多い.その結果,顎位の変化,下顎歯槽骨の吸収,フラビーガムなど,総義歯治療の難易度が増してくる.また,このようなケースの患者では,術前・術中の信頼関係を獲得するのは,著者のような若い歯科医師では難しかったと想像する.しかし,著者は,そのような患者に対して基本に忠実に各ステップをていねいに説明しながら行った.その結果が,術後の笑顔に現れていると感じた.
     また,このように骨吸収の著明なケースにおいて咬合床の安定を得るのは難しく,顎位の決定に対して著者はゴシックアーチを使用している.それらを使い咬合器を調整して製作した.これらは,簡単そうであるが,実はかなりの技術が要求されるもので,著者の臨床力の高さが理解できる.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2016年5月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 重田幸司郎

    筆者ごときが「成長」などとおこがましい限りであるが,先輩という立場であえて述べさせていただく.
     著者は,総義歯のみならず, 1 歯の治療にこだわることから始まり,一歩ずつ自分のできることを広げ,頑張っている.現在も会うたびに,諸先輩の知識を吸収し,好奇心旺盛にさまざまな歯科の分野を追求している.さらに,それぞれの処置の精度が上がるように研鑽してもらいたい.著者がさらに成長するには,何か1 つ,好きな分野や得意分野を決め,それをさらに掘り下げて,「その分野では誰にも負けない」くらいの意気込みで頑張っていただきたい.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2016年5月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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