Doctorbook academy

加茂公平

難治性の感染根管に歯根端切除術を 行った一症例

<この症例はザ・クインテッセンス2016年9月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201609.pdf
#難治性 #感染根管 #歯根端切除術

【患者】
54歳,男性.近所に住む会社経営者で,おとなしく真面目な性格.説明の1 つひとつを理解し,考えて納得したうえで治療に応じていくタイプ.

【主訴】
定期検診は行っておらず,いくつかの歯科医院を受診.当該歯の既往歴は記憶にない.口腔内は歯根の破折や不良な補綴物および二次う蝕を認める.清掃状態は悪く,口腔内への無関心さを感じた.

【歯科既往歴】
定期検診は行っておらず,いくつかの歯科医院を受診.当該歯の既往歴は記憶にない.口腔内は歯根の破折や不良な補綴物および二次う蝕を認める.清掃状態は悪く,口腔内への無関心さを感じた.

【診査・診断】
右上2番根尖部には明らかな発赤と腫脹,打診痛を認め,デンタルエックス線画像では不十分な根管充填と,根尖部は歯根膜の連続性の消失に続く類円形様の透過像が確認された.この時点で感染根管,根尖病変,根吸収歯,歯根嚢胞(木村の分類)と診断し,追加で病変の三次元的範囲を確認するためにCT を撮影した.

【治療計画】
右上2番の起炎因子の除去を目的に感染根管処置を行うこととした.また病変が広範囲に及び皮質骨の消失もともなうため,治療には時間がかかること,治療の経過によっては外科的処置が必要であることを説明した.最初は戸惑いながらもCT 画像をみながら三次元的に説明することで病変の状態を把握され,治療の了承を得られた.

【自己評価】
今回外科処置に至った原因は,口蓋側の起炎因子の除去を意識したていねいな操作がされていなかったからと反省している.経過良好に推移しているが歯根破折のリスクも高く,十分な経過観察が必要である.

【今後の課題】
患者と真摯に向き合い一口腔単位で将来的な予後を考えた処置を行いたい.そのためには1 歯の診査・診断・治療を確実に行えるように先人の教えを踏襲するのが近道と考えている.その一助として最新機器を使い,診療のステップアップをめざしていきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 安東俊夫

     このような嚢胞性疾患は治療期間がかなりかかることをしっかりと患者へ伝え,納得後に治療に着手する必要がある.初診から治療経過,術後メインテナンスでデンタルエックス線写真が規格的に撮影されている.より正確な診断,経過観察を行うことへの配慮がうかがえる.そのような資料を包み隠さず患者へ情報提供して処置を行ったことが,今回の治療への理解,協力につながっているのであろう.
     治療の実際としては,感染根管治療と嚢胞性疾患への治療法が整理されないまま治療に臨んでいるような印象を受けた.治療途中に急性化した原因として考えられるのは,根管由来の抗原性因子の取り残しも一因かもしれないが,根管外嚢胞腔内に主な原因があると推測する.滲出液の減少や臨床症状の消退を十分に待たずに,治療の進め方が性急すぎたのではないかと考える.根管拡大時の削片の色,臭いなどの所見もほしいところである,しかし,患者に寄り添い,粘り強く治療を行う姿勢はすばらしいと感心した.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2016年9月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 安東俊夫

     術前にCBCT を撮影しているのであれば,反対同名歯の根形態,根尖と骨との関係等を参考にするのはもちろんのこと,患歯の断面を多方面から観察して評価を行う.今回,口蓋壁の死腔の存在を的確に診断をしていれば,そこへの効率的な根管治療の器具のアクセス方法等の対策がとれていたはずである.そこを見落として治療を行って,気がつけば過剰の歯質の削除をしている.筆者の反省のごとくである.
     嚢胞性疾患の場合,根管内と根管外の治療は別に考える必要がある.嚢内の貯留物質,上皮の内壁の存在が新たな起炎物質を産生するために,通常の根管治療とは異なることを再確認してほしい.滲出液,急性症状がある場合は,根管をドレインとして利用して,開放して滲出液の排出につとめ,臨床症状の消退を待つ.その後一度根管を仮封する.この時期に根管拡大を行っても,新たな健全歯質は汚染されるだけである.的確な診断,治療手順の確立が望まれる.また,完全治癒は望めないにしても,根管治療で病変の縮小をはかり,その後に外科処置を行ったほうが,外科的侵襲,補綴的な観点から考えても有利である.
     ときとして,最初の診断,予想どおりにいかないのが臨床の奥深いところでもある,その場合,少しの症状の変化も見逃さず,なぜそうなるのかを自分なりに考え,評価して治療を行う.それを実践していけば道は広がるはずである.加茂先生のさらなる飛躍を期待している

    <このコメントはザ・クインテッセンス2016年9月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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