Doctorbook academy

畔柳沙織

支台歯の保存に努めた少数歯残存症例

<この症例はザ・クインテッセンス2017年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201701.pdf
#支台歯保存 #MTM #少数歯残存症例 #コーヌスクローネ義歯


【患者】
60歳,女性,専業主婦.夫が沖縄に単身赴任中で,娘一家の近くに居住.初診時はうつむきがちで暗く,歯科に対する諦めや恐怖心をもたれている印象であった.性格はとても真面目で歯磨きは1 回20分.昔は砂糖入りのコーヒーを常飲されていた.

【主訴】
下の歯が揺れ,上の入れ歯はすぐに落ちてきてしまい,ものが噛めない.

【歯科既往歴】
20年ほど前から徐々に歯を喪失し,上顎はロングスパンブリッジを装着. 6 年前に他院にて左上3番以外を抜歯し,現義歯を装着.治療中の嘔吐反射が激しく,前医では嫌な顔をされてしまったり,義歯に対する訴えも聞いてもらえなかった.

【診査・診断】
問診,口腔内,エックス線,ポケット,咬合診査などより,上顎義歯粘膜面不適合および臼歯部咬合支持の崩壊による咀嚼障害と診断.まずは主訴への対応を第一に進め,上顎は義歯の粘膜調整を行い,下顎は保存不可と判断した右下5番4番左下4番5番を抜歯,即時義歯を装着した.主訴が解決した後,改めて患者とその後の治療計画を相談した.

【治療計画】
予後不安な残存歯が多かったが,下顎無歯顎回避のため,歯周治療と合わせ,根管治療,動揺歯への対応など,できる限り残存歯の保存に努めようと考えた.歯科既往歴などよりペリオのリスクも考慮し,清掃性,二次固定効果,術後対応のしやすさ,また患者の希望も踏まえ,審美性にも優れたコーヌスクローネ義歯にて補綴していく計画を立案した.患者も「最後の歯を大切にしたい」想いは強く,同意を得た.

【自己評価】
術者にとっては,何もできないころに出会った1 冊の教科書のような患者で,たくさんのことを教わった.そのなかで強く感じたことは,全顎治療においても, 1 歯単位の根管治療や支台歯形成,印象採得,間接法など,“基本治療の大切さ”であり,当たり前に行うことの難しさを改めて感じた.また,短期間ではあるが経過のなかで,コーヌスクローネ義歯の清掃性のよさや二次固定効果の有効性を実感することができた.

【今後の課題】
経過観察の大切さを学び,今は現状を維持しつつ互いに幸せなメインテナンスに喜びを感じる.困っている患者を救うべく欠損歯列の勉強をする一方で,同時に“治療後維持すること”や“歯を失わないようにすること”の大切さも実感した.治療介入が最小限になるような歯科医療を模索し,いつまでもおいしく食事してもらえるように,患者1 人ひとりの健康をサポートしていきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 齊藤秋人

     欠損歯列を診断し,欠損補綴を行っていく.ゴールが何かを論じることは,個人個人異なり,難しい問題であると日々感じているが,結局のところ,患者の笑顔がすべてを物語っている.今回のケースは上顎が無歯顎,下顎が少数歯残存,ペリオタイプで力の要素はあまり感じられない症例と推測できる.よって,いかに下顎の残存歯を保存するか,その思いを患者と共有することができるかが,このケースの大きな要素と考えられる.その点,畔柳先生(卒後3 年目)が歯周基本治療を中心とし,根管治療,MTM と残存歯を救歯しようと努力していた点は大いに評価できる.またコーヌスクローネの成功の鍵は内冠にあり,支台歯形成,模型上で歯科技工士との情報伝達および共有,個歯トレーによる印象採得等,基本に忠実に診療していることが読み取れる.術後の内冠の炎症は,術者も考察してるとおり,色々な原因が考えられるが,問題意識をもった経過観察が,早期の対応につながり,結果として歯を失う可能性が少なくなると思われる.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2017年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 齊藤秋人

     卒後2 年目より非常勤として斉藤歯科医院に勤務.大学の後輩ということもあり,師匠,弟子という関係で現在まで過ごしてきた.大学での臨床だけでなく,救歯塾,臨床基本ゼミ等を受講し,臨床に対する考え方が,大きく変化したように感じる.また勉強会での症例発表を経験することにより,症例に対する見方が格段に広がった.弟子の成長は,師匠にとってはこの上ない喜びであると同時に,自身の臨床を見直すよい機会にもなっている.この場でお礼をいいたい.『ありがとう』,これからも,患者を目の前にして,考え込むことが多くなるかもしれない.そんなときこそ,『患者が最高の教科書である』という気持ちを忘れずに,五感で感じる感性を大切にして,謙虚に向き合ってほしい.こらからもともに学んでいく仲間として,さらなる成長を期待している.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2017年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • Doctorbookユーザ(ID:35500)

    どうやら2年前以上の臨床のようですが、
    現在はどうなってるのか知りたいです。多分ですが、左3が残ってる為左前方噛みになり、左下は抜歯になっているか動揺が大きくなってそうです。なるべく前で噛まない事を指導し、右でも噛む様に誘導しないと10年は持たないと思われます。コーヌスを選ぶのは凄いと思いますが、ファイバーコアでないと噛みすぎで根破折します。

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