Doctorbook academy

青木隆宜

歯周外科処置により根分岐部病変の 改善をはかった一症例

<この症例はザ・クインテッセンス2017年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201703.pdf
#歯周基本治療 #周外科処置 #根分岐部病変

【患者】
53歳,女性.社交的で明るい性格.治療にも積極的で説明もしっかり聞いてくれる.5年前に喫煙をやめた

【主訴】
2日前から上顎右側がグラグラしていて噛むと痛い.全体的に歯を磨くと血がでる.「何度も歯肉の腫れを繰り返していたので,しっかり治したい」と希望された.

【歯科既往歴】
前の歯科医院では歯周病の治療で週1 回通っていたが,仕事が忙しくなったので1年以上通院していない.

【診査・診断】
全顎のデンタルエックス線写真,口腔内写真,プロービングチャート,診断用模型を基に診断を行った.広汎型重度慢性歯周炎と診断.

【治療計画】
プラークコントロールは比較的良好であったが,磨き残しの部位のTBI を徹底した.そして咬合調整を含め,歯周基本治療を行った.その後必要に応じて歯周外科処置を行うことを説明.根分岐部病変は右下6番,右上7番はⅢ度,右上6番左上6番,左下6番はⅡ度であった.抜歯になる歯があることも説明したところ,「長い間自覚症状があったので抜歯の覚悟はしている」とのことであった.下顎前歯の叢生について矯正を勧めたが,受け入れてもらえなかった.

【自己評価】
全顎的にプロービング値の改善もみられ,一定の評価はできるが,今後も注意深いメインテナンスが必要である.
 今回の症例はⅡ度,とくにⅢ度の根分岐部病変に対してチャレンジングな外科処置であり,場合によって,再度の外科的アプローチや根分割など,治療途中の経過により適宜考えられる治療方針が複数存在する.下顎左側はⅡ度からⅠ度に改善できたが,もう一度歯周外科を行えばさらなる改善ができたのでは,と考える.同じ部位に数回外科的アプローチを行うことや途中で治療方針の変更が必要になる可能性を念頭において,めざしたい治療のゴールを明確にイメージしてもらえるような説明を当初から行う必要があったと反省している.

【今後の課題】
まずは1 本の歯の保存にとことんこだわりたい.その治療ひとつひとつの精度を高めていき,一口腔単位で守ることができるようになりたい.また,矯正治療を含めた咬合力のコントロールの知識・技術をさらに養っていきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 青木隆宜

     この患者が,なぜこのような状態になったのかという原因の把握ができていたのであろうか? それは,治療後の左上4番5番6番のスペースから疑われる.治療結果はともあれ,天然歯の保存によく努力している.あえて苦言を呈するならば,歯周基本治療中における右上5番4番のプレパレーションの不十分によるルートプレーニングの不備,歯周外科時の根分岐部ルートプレーニングの不良,角化歯肉の不足,支台歯形成面の粗さなどがみられることである.再生療法や審美補綴などという言葉に踊らされることなく,ひたすら基本技術の習得に努めるべきである.また,このような歯を長期的に保存するためには,メインテナンス時の繰り返しのルートプレーニングが必須である.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2017年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 青木隆宜

     現在,治療を施しているすべての患者に,良心をもってベストを尽くすべきである.それは,当たり前のことであるが,それを長期間実践することは結構難しいものである.保険・自費に振りまわされることなく,患者あっての歯科医療であることを忘れないでほしい.
     臨床を振り返ると,再治療の繰り返しで,そのたびに落ち込む時期,さらに予知性の高い治療とのギャップの大きさのために,診療内容の向上に興味がなくなる時期も経験するであろう.しかし,逆にそれを糧とし,自身の再治療症例や予後が不安な処置歯の原因を追究していくことで,新たな前進を求めていくようになる.そして,少しずつ結果が残せるようになると,さらに向上心が湧き,それが日常臨床の活力ともなるはずである.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2017年3月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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