中切歯1 歯の審美修復 ジルコニアを用いた1 症例
<この症例はザ・クインテッセンス2017年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201704.pdf
#中切歯 #審美修復 #幅径 #ジルコニア #変色歯
【患者】
39歳,女性.2014年5 月初診.性格はとてもおとなしい.職業は洋裁関連の販売.
【主訴】
右上の前歯をきれいにしてほしい.
【歯科既往歴】
右上1番は,10年以上前に抜髄.変色がとても気になってきた.
【診査・診断】
上顎両中切歯はCR を一時的に改善しても,両中切歯幅径比は1.066: 1 で非対称.また右上1番の変色に対してマスキング能力のある審美的かつ適切なマテリアルの選択が必要であると診断した.
【治療計画】
「最良の治療できれいにしてほしい」という患者の希望に対し,患者と綿密なコミュニケーションを図りながら,以下の治療計画を立て同意を得た.
① 右上1番歯内療法時のアクセスは切縁を越えた位置から,
② プロビジョナルレストレーションおよび左上1番近心CR による両歯幅径の改善,
③理想的な最終補綴物マテリアルの選択.
【自己評価】
両中切歯幅径の一致および支台歯変色のマスキング・切縁の透明感等,隣在歯との調和はとれたかと考える.しかし左上1番CR べベルの付与・シェード選択の不備,両歯近心ラインアングルの相違, 右上1番歯頸部辺縁が若干張りすぎ等,非常に反省している.
【今後の課題】
中切歯1 本の修復は,結果を残すための技術的な配慮が多く要求される.反省点を元に診断力や経験値を上げていき,患者満足を得るまでの時間をできるだけ早くすることを心がけていく所存である.
本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php
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この症例へのコメント
竹中先生は,北九州歯学研究会若手会,上田塾などの勉強会に所属され日々研鑽を積まれている.「臨床家として人として患者さんと接する」をモットーにつねに患者さんの立場に立った視点から診療を行う姿勢には,感服するばかりである.
本症例のような審美的要求の高い患者さんへの修復処置は, 1 歯でも多数歯でも難しい.さらに1 歯の場合,隣在歯の状態によって形態付与や色調の調和など,さまざまな規制がある.本症例では,形態や色調の問題点をしっかりと把握し,治療計画どおり,左右中切歯形態の対称性,色調の調和などが十分得られているところは高く評価できる.
また私たちの参加している勉強会は,「基本的治療を確実に行う」方針であるが,著者はしっかり遵守しており,歯内療法,修復物の適合性,充填物の適合性などへのこだわりを感じる.診査・診断,治療計画の立案などはもちろん,マテリアルの情報提供を含めた綿密なカウンセリングなどに十分な時間をとり,患者さんとの信頼関係の構築ができたことがスムーズに治療へと導かれたのではないかと考える.著者の臨床医としての情熱が十分伝わる症例であると思う.
<このコメントはザ・クインテッセンス2017年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
さらなる飛躍を期待してあえて言わせてもらうならば,治療計画にて上顎右側中切歯を補綴で対応するのであれば,先にプロビジョナルレストレーションに置き換えて根管治療を行うほうが,アクセスキャビティーは容易であったのではないだろうか.著者も自己評価しているが,上顎左側中切歯のCR の色調に関していえば,CR 充填は術中に歯が乾燥し色調が変化するので,色調の選択は術前が望ましい.また,歯と色調を一体化させるためにはベベルが必要であるが,あまりにも大きなベベルをつけ色調を同化させるとなると,MI で充填できるCR の利点が失われかねない.ベベルによるカメレオン効果を狙うのも1 つの手法だが,積層充填のなかでどの程度の厚みで透過性の低いCR を充填するのか,何層に分けるのか,用いるCR の特徴はどのようなものなのかなどを考慮するのも1 つの手段ではなかろうか.CR 充填は限られた時間のなかで歯の色調,形態を再現を行うので,テクニックセンシティブである.色調再現のためのイメージや,形態付与のトレーニングなどが必要であると考える.
今後もともに研鑽を重ね,これからの明るい歯科界をめざしていきましょう.
<このコメントはザ・クインテッセンス2017年4月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>