Doctorbook academy

山田明子

矯正治療後に前歯部審美修復を 行った症例

<この症例はザ・クインテッセンス2017年10月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201710.pdf
#矯正治療 #前歯部審美修復 #歯冠幅径 #オールセラミッククラウン

【患者】
19歳,女性.職業は公務員.最初は人見知りで無口であったが,何度か通院するとよくしゃべり,明るい性格であることがわかった.

【主訴】
上の前歯が出ているのが気になる.

【歯科既往歴】
当院初診は5歳.5歳〜11歳まで定期的に通院していたが,当時からう蝕が多く,ブラッシング不足との以前の担当医の記載あり.今回は, 8年ぶりの受診.

【診査・診断】
矯正治療希望であるが,口腔内清掃状態は不十分で,カリエスリスクが高いため,まずは徹底的なブラッシング指導,歯周初期治療が必要と判断した.エックス線検査(セファロ,パノラマ,デンタル,CT),口腔内・顔貌写真,スタディモデルによる診査・診断を行った.

【治療計画】
①わずかな骨格性上顎前突,②Angle Class Ⅱ,③前歯部オープンバイト,④上下顎前歯の唇側傾斜,⑤上下顎叢生,⑥口唇閉鎖不全と診断し,右上8番4番左上4番8番,左下4番右下4番を抜歯してマルチブラケットにて矯正治療を行うことで承諾を得た.

【自己評価】
矯正治療により,口元の突出感,深い鼻唇溝,オトガイ部の緊張が改善されて理想的なE-ラインとなり,また上顎前歯のインサイザルエッジと口唇の調和を得ることができた.さらに,矯正治療後,前歯部にオールセラミッククラウンによる修復を行ったことで,より審美的なスマイルとなった.

【今後の課題】
口腔内を顎位・咬合・神経筋機構のトータルで診断でき,患者に寄り添った治療を行えるように日々学習を続け,歯科医師としての仕事に誇りと充実感をもち続けていけるように,歯科衛生士,歯科技工士とともに頑張っていきたい.

本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php

この症例へのコメント

  • 林美穂

     本症例は骨格性上顎前突,Angle Class Ⅱ,前歯オープンバイトおよび上下顎叢生などの問題が存在することから,矯正なくして治療の成功はありえないケースである.山田明子先生は卒後大学の矯正科に所属して研鑽を積まれた後,親もとの医院で一般歯科も学ばれ,現在
    はマルチな歯科治療を行っている女性歯科医師である.WDC(Women Dentists Club)にもチャーターメンバーとして参加し,現在も精力的に活躍されている.その結果,さまざまな局面からの分析や治療が行えていると推察される.矯正治療終了時には上下前歯の正中が合致していなかった点を補綴でうまくカバーし,スマイルとの調和をはかっている点は素晴らしい.また,矯正用のミニスクリューを用いることで,臼歯部の近心傾斜を防ぎ,前歯部をリトラクションしているところは本症例の治療成功の鍵を握っているといえよう.小臼歯を抜歯した場合には遠心に存在する臼歯の傾斜移動を引き起こしやすく,結果として近心傾斜してしまった歯の近心部に骨縁下ポケットをつくってしまう傾向にあることから,本症例において最適な治療選択であったと考える.まさに,山田明子先生の患者さんへの想いと治療に対する情熱が伝わってくる症例である.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2017年10月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

  • 林美穂

     再初診19歳時のパノラマエックス線より,3本の前歯がすでに根管治療されていることが気になる.子どもの頃に前歯を打撲したという経歴はなかったか? 前歯オープンバイトであることから,幼少時の指しゃぶりや舌癖などの態癖はどうだったか?アデノイドや鼻疾患はなかったか?などのさまざまな疑問が湧いてくる.すべての症例で,「なぜこのような状態になったのか」原因を考えて治療を行うことは非常に重要である.原因を知らずして,治療を行った場合,後にトラブルを引き起こしかねないからである.本症例のような前歯オープンバイトの場合,アンテリアカップリングをやや深めにしっかりと構築しておかなければ,術後に後戻りが生じやすい.そのような点から,もう少しアンテリアカップリングを深めにしておいたほうがよかったのではないかと考える.また,側方運動時の写真がないのではっきりとはわからないが,左側方運動時の₃のガイダンスもやや弱いのではないだろうか.犬歯を含めて前歯部は咬合の安定に大きく関与するため,アンテリアガイダンスを含めて全体的な咬合関係を再度チェックしてほしい.
     最後に,山田明子先生は,今後,多くの可能性を秘めた注目すべき女性歯科医師である.将来,ぜひとも本症例の経年的変化を報告してほしいと切に思う.

    <このコメントはザ・クインテッセンス2017年10月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>

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