LOTを併用した 前歯部CR 充填の1 例
<この症例はザ・クインテッセンス2018年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
https://storage.googleapis.com/academy-doctorbook-jp/files/quint/201801.pdf
#CR充填 #LOT #前歯部審美
【患者】
52歳,女性.大学生,高校生の2 児の母,パート勤務.結婚前は銀行に勤めておられた.何ごとも真面目に取り組む性格.
【主訴】
定期検診希望.長年あきらめていた前歯の正中離開について治療できるものか相談したい.人前で思い切り笑えないのが苦痛.写真撮影時は必ず口を閉じる.
【歯科既往歴】
歯科受診歴はほとんどなく,歯を切削したことがない.
【診査・診断】
う蝕はなく,歯周炎に対しても耐性があり,軽度である.咬合においては非作業側での咬合干渉は咬合調整で対応し,前歯部の審美障害が最大の問題点であると診断した.
【治療計画】
右上1番左上1番間の歯間空隙が大きく,歯軸が遠心傾斜している.現状の歯の位置では,修復後の歯冠幅径が大きくなりすぎ,審美的な解決は得られない.そのため,LOTを併用して歯の位置を改善した後で,右上2番〜左上2番までの4 前歯にCR充填を行うことを提案した.歯の切削はできるだけ避けたいという患者の希望と限られた費用のなかで,治療方法をきめ細かく説明して患者に治療を受け入れてもらえた.
【自己評価】
今回,前歯部の歯冠修復を終えて患者には満足していただき,一定の成果は出せたと考えている.そのなかで審美歯冠修復においては,歯の位置だけではなく,歯軸やその対称性などの細かい部分にまで注意を払わなければならないと反省している.接着についてまだまだ不慣れで勉強不足であり,色調,形態を再現する技術とセンスを磨いていきたい.
【今後の課題】
今回の症例ではCR 充填を用いた審美歯冠修復の有効性を感じたが,良好な長期予後を得るために,今後も咬合診査を含めた経過観察が必要と思われる.さまざまな症例に対して各々最適な治療を提供できるようにするために,的確な診査・診断ができる能力と治療手技のいっそうの向上をめざし,今後も研鑽を積んでいきたい.
本誌はこちらから
https://www.quint-j.co.jp/web/theQuintessence/index.php
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この症例へのコメント
正中離開は,患者にとって心身的にもかなりストレスとなる.MTMとCRという決して派手な症例ではないが,患者の喜びは予想以上のものであったと想像できる.患者に寄り添う椋先生らしい症例と感じた.
採得した資料をもとにきちんと分析・診断がなされ,それらをもとに1 つひとつの処置がていねいになされている.この正中離開は,歯周病に起因するフレアアウトではなく,歯周組織は正常でanterior ratio が大きいことなどによるものであろう.矯正治療時には,咬合調整,上唇小帯切除を行い,CR充填時にはスタディモデルにモックアップ後,シリコーンガイドを製作している.基本に忠実に行った結果が,このような素晴らしい成果を得られたものと思われる.
<このコメントはザ・クインテッセンス2018年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>
本人も反省点として挙げているが,右上1番左上1番の歯軸が対称にならなかったのは,ブラケットポジションが左右対称ではなかったためであると思われる.ブラケットポジションは,最終の仕上がりに大きな影響を与えかねないので,治療中に気付いた時点で再度付け直すことが必要と思われる.また,このような正中離開のケースにおいては,正中のスペースは矯正にて閉じてしまい,中切歯と側切歯間にCR充填を行うという治療方針もあったのかもしれない(種々の条件により断念せざるをえない場合もあるが).CRの材料,接着がいかに進歩したとはいえ,将来変色や褐線の発現などの可能性がないわけではない.それを考えると,できるだけ処置を行う箇所は少ないほうがよいし,1番めだつ正中は避けて本来の中切歯の隆線を生かすほうが審美的に仕上がりやすい.とはいえ,とてもきれいに仕上げられており,患者の笑顔が目に浮かぶ.今後も経過を観察していってほしい.
椋先生は夫婦で開業され,互いに切磋琢磨しながら診療に取り組んでおられる.さらなる成長を期待している.
<このコメントはザ・クインテッセンス2018年1月号「MY FIRST STAGE」に掲載されたものを一部抜粋したものです。>