切開線の設定や開口制限のある症例への対応など、実際やってみると起こりがちなトラブルを事前に学習し予知性の高いプランニングをサポートする内容です。 部分欠損症例からフルボーンアンカードブリッジ症例までレベルに合わせて患者、術者双方にメリットのあるインプラント治療を提供するためのコツをお話しいただきました。 日々の臨床でガイド手術の導入を検討されている先生方に有意義な講義です。
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最初に、ガイドOPEの利点、欠点について解説いただきました。
ガイドOPEの大きな利点には、以下のようなものを挙げられています。- ・WAXUPをすることでのトップダウントリートメント(補綴手動型治療)が可能
- ・患者への説明がビジュアルを持ってできるため理解を得やすい
- ・インプラントを適切な位置・角度に埋入することが可能
- ・抜歯窩及び抜歯時間もない幼弱骨に対してドリルが流れるのを抑制できる
- ・下歯槽管や上顎洞などの解剖学的な制約に対して自身をもって手術ができる など
利点に対して、ガイドOPEの欠点は以下のようなものを挙げられました。
- ・追加のコストがかかり、患者の費用的な負担が増える
- ・ガイドの納期分、手術が先延ばしになる
- ・ガイドがあることで術野が見えづらい
- ・開口距離によっては手術が困難な場合がある など
さまざまな利点がある一方で、少なからず欠点も存在します。
中でも、開口距離によっては手術が困難な場合があり、この欠点について理解しやすい症例を解説いただきました。
66歳男性、右上にインプラント治療を希望しており、既往歴・内服薬あり、5年前から禁煙している患者さんです。
右上567番が欠損しており、パノラマ写真とCTで確認すると小臼歯のような埋伏歯があることが分かります。
埋伏歯を取り出すには侵襲の大きい処置が必要ですが、インプラントを設計してみると問題なく埋入できることが確認できます。
通常であれば口蓋側を大きくフラップして抜歯する必要がありますが、ガイド手術で行った場合はフラップレスが可能になります。
このように、ストローマンガイドを使用することで、低侵襲かつ正確な位置にインプラント埋入が可能になります。
ストローマンガイドとは、ストローマン社が提供するデジタルソリューション「ケアーズ」の一項目です。
システムの一部に「GonyX」がありますが、どのようなシステムなのか存じない先生方に向け詳しい解説をいただきました。
ゴニックスはピンが付属しているマウスピースを作製するなど、技工士と協力してガイドを作成する特徴があります。
シール状のマーカーをラジオグラフィックガイド(既存のデンチャー可)に貼り付けてポジショニングすることも可能です。 - ・WAXUPをすることでのトップダウントリートメント(補綴手動型治療)が可能
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引き続きストローマンガイドの解説を行っていただきました。
最初は、ガイデッドサージェリーの解説です。
ガイデッドサージェリーには以下のような種類があり、精度の低い順に並べて説明いただきました。- ・アナログガイデッドサージェリー(歯冠だけを模したアナログなタイプ)
- ・ハイブリッドガイデッドサージェリー(ゴニックスのような技工士の協力を得るタイプ)
- ・デジタルガイデッドサージェリー(すべてをコンピューターと3Dプリンターで作成するタイプ)
そのためGonyXではなくCo Dignostixで作成したのちに、3Dガイドを用いて手術をすることが理想的であると沼澤先生は考えられております。
続いて、3Dガイド作成の流れを解説いただきました。
作成する際の画像や動画を準備いただき、CT撮影時の注意点などについても分かりやすく解説いただきました。
そして、実際にこの流れを当てはめた症例を紹介いただきました。
54歳男性、非喫煙者で、ストローマン社インプラントをガイドで埋入してほしいとの具体的な希望を持たれている方です。
さらに、SLActivが六週間での荷重が可能なことをすでに把握しており、かなり入念な下調べを行っていることが分かります。
青森県から新幹線で通院予定のため、来院日の翌日の朝から3Dガイドを作成し、夕方にはインプラント埋入を行ったとのことです。
手術の際は、サージカルプロトコールを参考にしながら手術を進めていきます。
サージカルプロトコールの指示に対応しているドリルセットを、ドリルの長さ・ドリルハンドル・スリーブの高さを組み合わせて使用します。
次に、フラップレスの選択基準について解説いただきました。
一般的には、歯槽頂が平坦かつ骨幅に、周囲1ミリ以上の余裕があることを条件であると述べられました。
さらに、歯肉のパンチアウト後に頬側へ3ミリ以上の角化歯肉が残るケースでも、フラップレスを検討できると解説いただきました。
続いて、コニカルテーパージョイントにはSRAのアバットメントを入れる提案をいただきました。
BL.BLT.BLXなどのコニカルテーパージョイントは緊密な適合精度が必要なため、連結する場合に応力を残してしまう可能性があります。
そのため、SRAアバットメントを入れることでエクスターナルジョイントに変換する必要があります。
こうすることで角度の異なる複数歯欠損であっても、精密な印象採得が可能となり応力を残すことはないと理解できます。 - ・アナログガイデッドサージェリー(歯冠だけを模したアナログなタイプ)
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引き続き「オペ時に起こり得るズレとその対応」について解説いただきました。
インプラント埋入時の角度にどれくらいの問題があるのか、岡山の学会で調査を行われました。
その調査結果によると、50本すべての結果では平均して4.7度もズレがあったことが分かりました。
ガイドを使っているにも関わらず生じる4.7度のズレを、どのようにして小さくすれば良いのか。
沼澤先生の考察を解説いただきました。
従来では、ガイドを外して埋入していたところを、現在ではガイドをつけたまま埋入しているとのことです。
さらに、ガイデッドアダプターを使用することで、スリーブに対して中心をズラすことなく埋入できると解説されました。
活用の注意事項としては、ガイデッドアダプターにインプラントをしっかりと取り付ける必要があると述べられました。
次に、ドリルハンドルとスリーブ径の差について解説いただきました。
さまざまなガイドシステムがある中で、ストローマン社インプラントはドリルハンドルとスリーブの遊びが少ないシステムです。
非常にタイトな分、手術がしにくいという欠点がありますが、埋入されたインプラントのズレを小さくできる利点があります。
調査結果で報告された4.7度のズレを踏まえながら、他社とストローマン社ガイドの違いを比較してみます。
他社の場合は3.5ミリのスリーブがあるのに対し、ストローマン社は5ミリのスリーブがあります。
そして、他社ガイドでは0.05ミリ、ストローマン社では0.03ミリの遊びがあり、遊びの幅によって角度が異なることが分かります。
また、ドリルハンドルとドリルの間にも遊びがあります。
それぞれ先ほどの隙間と同じ遊びがあるため、単純計算で倍のズレが生じてしまうことになります。
その後、2019年福岡で開催された学会では、プロトコールをガイドの上から埋入する術式に変えたものを報告されました。
223本のインプラント手術を対象に精密検証を行ったところ、3.9度まで角度のズレが小さくなったことが分かりました。
次に、考慮すべき設計のポイントについて解説いただきました。
ガイドは角度と深度の調整が可能なため、それぞれをコントロールすればさまざまな削り分けができます。
解剖学的な制約についても、その直前で止めることが可能になると解説されました。
次に、グラフトレスコンセプトとグラフトコンセプトについて解説いただきました。
グラフトにはGBRやサイナスリフト、ソケットリフトなどが含まれ、グラフトレスにはショートインプラントや傾斜埋入が含まれます。 -
引き続きグラフトレスコンセプトとグラフトコンセプトについて解説いただきました。
最初にTilted Implant(傾斜埋入)の解説から始まります。
右上の4567欠損部にインプラント埋入を計画した場合、45の位置に2本傾斜埋入してブリッジの支えにしていきます。
サイナスリフトを行った後に、患部の経過を観察しながらインプラント埋入を進めると時間がかかるケースです。
しかし、傾斜埋入であれば通常と変わらない期間で、インプラント治療が可能になることが分かります。
ただし、角度付きのアバットメントは多くの場合に審美的障害が生じてしまうため、十分な注意が必要です。
そして、これまでの症例(埋伏歯の脇に埋入したケースと、ストローマン社インプラントを希望されたあケース)の共通点を見ていきます。
2つの症例では、非常に正確な位置へインプラント埋入ができた理由として、抜歯してから1年以上経過している共通点があります。
また、3歯以上の遊離端ケースではFIX PINを設計することを推奨されました。
例えば、56番の2歯の場合ではたわみはそこまで大きくありません。
しかし、567欠損などの場合ではFIX PINを使用してたわみを少なくすることが大切だと述べられました。
その際に「FIX PINが少し近心を向いていると扱いやすい」と貴重なご意見をいただきました。
続いて、完成後のガイド指摘と調整についてお話しくださいました。
ガイドは納品されてきたそのままの状態で使えないことがあるため、事前に十分な確認を行うことが大切です。
例えば、ドリルハンドルの柄の部分が樹脂に当たり、そもそも下まで入らないことがあります。
他には、最後まで入ったとしても正確な向きとは異なるために使えないケースもあるため、細かい調整を行う必要があります。
削りすぎて細くなりすぎた部分に関しては、即重で補填してある程度の強度を保つことも大切と述べられました。
また、飛び出しているスリーブは歯肉に当たってしまうため、削合して調節する必要があります。
デジタルガイドは理論上かたつきませんが、実際に口腔内へ装着してみるとかたつく場合があります。
少しでもかたついたらシーソーする支店の歯を模型とよく見比べて、ガイドの内側調整を行う必要があると解説されました。 -
今回は、開口距離が少ない場合の工夫の解説より行っていただきました。
ガイド手術において開口距離が少ないことは最大の難所であり、多くの先生方を悩ませているポイントではないでしょうか。
そういった場合は、ドリルハンドルにドリルを通してから口腔内へ運ぶことに慣れていく必要があると解説されました。
サージカルプロトコールが2本線のロングのドリルを指定してきた場合、ロングのドリルが入らないケースがあります。
対処法としては、まずはショートのドリルに持ち換えて形成を試みると、スムーズに進むケースが多いと解説いただきました。
ショートドリルを垂直に入れて削り、ロングドリルに持ち換え追加で削る方法が有効であると述べられました。
ただし、ドリルハンドルを傾けながら挿入すれば、どのようなドリルでも入るわけではありません。
2.2ミリのパイロットドリルは大きく傾けることができますが、3.5ミリのドリルは大きく傾けることはできません。
場合によっては、4.2ミリのドリルをガイド上から用いることを諦めるのも必要な判断であると解説いただきました。
続いて、ガイド手術をルーティン化するために、どのような流れを作ると良いのか解説いただきました。
アポイントの流れを分かりやすい図で解説いただき、それぞれのタイミングで注意すべきポイントについても言及いただきました。
また、沼澤先生の医院でガイド手術を行う場合の費用について、大まかな目安を提示していただきました。
これからガイド手術をどんどん増やしていきたい先生方にとっては、とても参考になるのではないでしょうか。
講義のあとに、沼澤先生が執筆された書籍の紹介をいただきました。
中でも「スタッフが辞めない歯科医院の作り方」では、スタッフ確保のためのコツについて詳しく執筆されています。
最後に、これまでの講義の内容を踏まえて質疑応答の時間を設けていただきました。
- Q.1 BLXをフルガイドで行うとプランよりも深くなる傾向が多いのですが先生はそのような経験はありますか?
- Q.2 全額的もしくは部分的にでもプロビが入っている場合はどのようにガイドを作製するのでしょうか?
- Q.3 GBRを同時に行う際、切開線は頬側に寄りますが、ガイド装着に問題は?その場合、どのような切開線を設定していますか?
- Q.4 フルマウスのガイドを計画する際、骨整形をしてインプラント埋入しなくてはいけない場合はどうしていますか?
豊臨な臨床経験からの解答は、ぜひ動画でご確認ください。 - Q.1 BLXをフルガイドで行うとプランよりも深くなる傾向が多いのですが先生はそのような経験はありますか?
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インプラントを用いたフルマウス治療の流れとガイドサージェリーのポイントについて学ぶことができる動画です。
インプラントを用いた無歯顎の治療オプションとしてはインプラントオーバーデンチャー(IOD)、ボーンアンカードブリッジがあります。
上顎ではボーンアンカードブリッジでの補綴治療が第一選択となり、その根拠について教えていただきました。
また、ボーンアンカードブリッジでは義歯をもとにしたサージカルガイドではなく、スキャンテンプレートを用います。
コピーデンチャー等を用いて作製するサージカルガイドとスキャンテンプレートの違いや使い分けについて教えていただきました。
ファーストプロビジョナルをアンカーピンで位置決めしピックアップして行うトリプルアンカーピンテクニックについても学べます。
上顎ボーンアンカードブリッジにて補綴治療を行った症例をもとに、実際の治療の流れを説明していただきました。
下顎では、インプラントの埋入本数を少なくできることからIODでの補綴治療が第一選択になると思います。
IODではインプラントの本数が少ないのでサージカルガイドを用いていない先生もいらっしゃるかもしれません。
IODでサージカルガイドを用いなかった時に起こりやすい埋入位置の失敗、サージカルガイドを用いる重要性を説明していただきました。
次に、吸収の左右差が大きい下顎顎堤に対してボーンアンカードブリッジにて補綴した症例を見ていただきます。
顎堤吸収が著しく埋入できない部位がある場合において、カンチレバーを用いた補綴デザインについて解説していただきました。
また、ボーンアンカードブリッジにおける傾斜埋入のメリットについてエビデンスをもとにご説明していただきました。
ファイナルに移行する際セカンドプロビを預からずにチェアサイドで行うマウントについて、先生の作業の様子を動画で見てもらいます。
動画のように精密にマウントすることでセカンドプロビの咬合をそのままファイナルにトランスファーすることができます。
インプラントを用いた全顎補綴のレベルアップを目指す先生方に見ていただきたい動画です。
- このプログラムの受講状況
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- 全体進捗
- 試験結果
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