TCHという言葉もすっかり歯科界に浸透している昨今ですが、まだまだ誤解されている部分もあるようです。 患者様にTCHを適切にコントロールしてもらうためには、TCHについて医療者側が正しい知識を得て、それを理解する必要があります。 本講演ではTCHの定義について再確認するとともに、なぜTCHという行動が生じるのかについての生理学的な理由付けを説明するとともに、TCHが影響を及ぼす可能性のある症状や障害について、出来るだけエビデンスを交えてご説明いただきました。
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本動画ではコンテンツ1つ目の「TCHの概念」について、西山暁先生にお話しいただきました。
また、歯の接触を見逃さないために「くいしばり」のイメージと「TCH」の違いを紐解いていきます。
まず「TCHの略」を正しく知ることが、「TCH」を理解する上で最も重要なポイントになるのです。
その後、TCHは「歯の接触」でも「くいしばり」でもないことがわかりました。
そして、臨床で使われる「くいしばり」や「かみしめ」という言葉ですが、患者様はどのくらいの力の大きさを想像するでしょうか。
実際に顎関節症の患者様100人に質問した結果では、最大咬合力を100%とした時に平均約80%の力を想像しています。
「くいしばり」という言葉の持つ、力の大きさのイメージと「TCH」の位置づけがより理解していただけるでしょう。
さらに、TCHはブラキシズムの一種としてカテゴライズされています。
実際にスマートフォンアプリによる1週間の覚醒時ブラキシズムの頻度調査の研究を解説していただきました。
「くいしばり」よりも「歯の接触」が圧倒的に多い結果をご覧ください。
それではTCHの何が悪いとされているのでしょうか。
次の動画でご説明いただきます。 -
本動画では「TCHの何が悪いのか」「TCHはなぜ生じるのか」について解説していただきます。
最初に「TCHの何が悪いのか」を13個の研究とともに教えていただきました。
1つ目の研究は「40%の力と、7.5%の力で限界まで咬み続けてもらう」という研究です。
7.5%の力で限界まで咬み続けると、約2時間半も咬んでいられることが分かりました。
弱い力の方が長く咬み続けることができ、総合的に筋肉への負荷量が増えることがお分かりいただけるでしょう。
さらに他の研究結果からも、TCHによる力は筋肉に対して大きなダメージを与えるメカニズムを教えていただきました。
そしてTCHは筋肉だけでなく、軟組織の痛みを引き起こす可能性があるのです。
筋肉と同様、軟組織も低酸素による「虚血」さらに「再灌流」により活性酸素が発生し、TRPA1の活性化・影響が起きます。
関節円板が前方に転位したモデルに、筋力20%の持続的負荷を加えた実験では、通常の約5~6倍下顎頭が偏位するのです。
偏位したことにより、関節円板周囲の軟組織に「虚血」と「再灌流」が起き、痛みの感受性が上がる研究結果となりました。
さらに「歯髄感覚の変化」と「歯根膜感覚の変化」の研究では、いずれも敏感・鈍感になる人が多く見られました。
WSDがないのに知覚過敏の症状がある方や、咬合の感覚の異常感がある方などもTCHの可能性があり得ると言えるのでしょう。
また、覚醒中の筋活動が過剰であると「義歯性疼痛」「歯周病」のリスクも高くなる研究結果をご覧ください。
このことから、なかなか治らない疾患は「TCHの影響をはないか」と症例を見ていく必要がありそうです。
次は「TCHはなぜ生じるのか」を解説していただきます。
そこで、なぜ余計な咀嚼筋活動が生じるのか2つご教授していただきました。
「緊張性歯根膜咬筋反射」と「交換神経による咬筋活動」に分類されます。
どちらも咬筋の収縮によるものであることが認識できるでしょう。
さらに臼歯部咬合がなく、義歯が不安定の方の咬筋の活動が多く見られる研究から「緊張性歯根膜咬筋反射」の影響がわかります。
そして、安静空隙消失している方が約1割存在しますが、これはTCHの悪循環が背景にあるためでしょう。
さらに安静空隙消失している方の、TCHのタイプを1次性と2次性に分類されました。
次の動画では「TCHへの対応」をご紹介いただきます。
TCHのある患者様に対して、実際にどのように対応して行けば良いのかが解決できるでしょう。
ぜひ動画でご覧ください。 -
本動画では「TCHへの対応」をお話していただきます。
まず、最初は「TCHの診査と診断」をする必要がありますが、「TCHの診査・診断」は3つの信頼度で分けられるようです。
最も客観的な診断が可能な「装置」での覚醒時ブラキシズムの検査は「測定の困難さ」「閾値の未設定」から難しいと言えます。
そこで、「Self-report」や「臨床検査」の詳細も教えていただきました。
それぞれTCHによるものと考えられる症状の所見をしていき、TCHの可能性を判断します。
また「生態学的瞬間評価(EMA)」や「安静空隙維持不快」の検査も応用することは、診断の1つの指標になるでしょう。
そして、過剰な「力」「頻度」「持続時間」の3つを下げてあげることが治療のゴールになります。
「0」にするのではなく、TCHのレベルを下げてあげることが最も大切なポイントになるとお話していただきました。
ここから、実際にTCHをコントロールし、レベルを下げる方法をご教授していただきます。
まず、メインとなる「行動変容法」さらに「Bio-feedback」「薬物療法」の3つに分類し、解説していただきました。
「行動変容法」は歯が当たっている状態に気がつき、さらに行動パターンをつくり「安静空隙の獲得」を目標にします。
行動変容法ステップ1では、患者様に行う「動機付けの説明方法」「動機付け時のNGワード」もお分かりいただけるでしょう。
ステップ2、リマインダーを使用した歯の接触有無のチェック方法と、頻度の評価方法が分かります。
ステップ3、気づきの後に行う「別の行動方法」を教えていただきました。
ステップ4、何度もステップ2,3を繰り返す重要性を理解していただけるでしょう。
そして、行動変容の効果の研究からはリマインダーを使用することで「TCHの行動」がレベルダウンしていることが分かります。
次に、TCHコントロールの症例3つを紹介していただきました。
最初の症例は、30歳女性。
8年前から右側頭部・頬部・耳後方部の自発痛に悩まれている患者様です。
安静空隙維持不快感があり、1次性のTCH・顎関節症・右咀嚼筋痛障害と診断し、TCHコントロールのみ行いました。
すると8年の病歴があったにもかかわらず、1か月でTCHコントロールのみで主訴が改善したのです。
このような結果に導くことができたのは、正しく診査・診断をし、「TCHレベル」のコントロールが出来たためでしょう。
他2つの症例も同様に、TCHのコントロールのみで症状が改善されているケースをご覧ください。
次の動画では、「TCHの疑問」を解決していただきました。
ぜひご覧ください。 -
講義のまとめとして視聴者からの質問に回答いただきました。
TCHについて4つの疑問を取り上げています。
Q1.TCHを患者さんに説明しても「やっていない」という患者さんがいますが、私の考えでは多いか少ないかの問題であって、
やってない人はいないと考えております。それについての先生のお考えと「やっていない」と言い張る人に、
やっていることを自覚させる方法を教えてください。
という質問に対しては、リマインダー使用して、患者様にチェックしてもらうことを勧めています。
患者様に説明してもなかなか理解してもらえないとお悩みの先生は必見です。
Q2.TCHが原因になっていると思われる知覚過敏や歯の亀裂・破折、咬耗などを経験するのですが、
西山先生の臨床実感としてはTCHと上記状況の関係性はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
という質問には、「知覚過敏」に対してはTCHは関与すると考え、「歯の亀裂・破折、咬耗」は関与するとは言い切れないと回答いただきました。
「TCH」と「知覚過敏や歯の亀裂・破折、咬耗」の関係性に疑問の先生の解決のヒントになるでしょう。
Q3.顎関節円板障害もTCHが原因と思われますか?
という質問には顎関節円板の解剖学的にも考えると、TCHの影響を受ける可能性は十分あると答えていただきました。
顎関節円板障害の治療でお悩みの先生は、大変参考になります。
Q4.TCHの指導は歯科衛生士さんに任せても大丈夫でしょうか?
という質問には歯科衛生士さんにも介入してもらい、TCHの指導は任せた方が良いと推奨していただきました。
チームでの「TCHの指導」を積極的に考えられている先生は参考にしてください。
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