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歯科クリニックで実践可能な顎関節症の対応 (全7回)

顎関節症の有病率は5~12%程度といわれていることから、程度の大小はあるものの、週に10名程度は遭遇している可能性があります。 中には通常の歯科治療に影響を及ぼすような症状を持っている場合もあり、それに気づかないと悪影響を及ぼしている場合があります。 一般歯科クリニックで最後まで治療を行う行わないは別として、顎関節症か否かのスクリーニングや、ある程度の診断、そして簡単な初期治療程度の知識、技術を身に着けておくことは重要です。

  • Introduction 00:51

    西山 暁先生に、本講演の内容についてご紹介いただきました。

    明日からでも実践できる内容となっておりますので、ぜひご覧ください。

  • 顎関節症と診断する前に:顎関節の定義、クリニックで行える三大症状の確認│Part1-1 05:02

     顎関節症の定義は、「顎関節や咀嚼筋の痛み・関節雑音・開口障害あるいは顎運動異常を主要症状とする障害」とされています。
    「痛み・関節雑音・開口障害」が顎関節症の三大症状と言われる症状です。
     
    まず最初は、「三大症状があるか?」という所からスタートしていきましょう。
    そこで、歯科医院で医療面接を行う際の三大症状の確認方法を詳しく説明していただきました。
    「顎の痛み」「顎の音」「開口障害」にわかれており、質問をしていきます。
    「顎関節症」と診断するには、三大症状の1つ以上が当てはまることが条件になるそうです。
     
    では、三大症状が1つ以上あった場合は必ずしも「顎関節症」と診断して良いのでしょうか?
    西山先生は早急に顎関節症と診断せずに、「鑑別診断」を確かにやって欲しいとおっしゃいます。
     
    それでは、どのようにして「鑑別診断」や「病態の分類と検査」を行っていくのでしょうか。
    次の動画で説明していただきます。

  • 顎関節症と診断する前に:鑑別診断│Part1-2  & 顎関節症の病態分類と検査│Part2 22:12

    1つ目の動画では西山先生に「顎関節症と診断する前に知っておくべきポイント」と「三大症状」を解説していただきました。
    「顎関節症と鑑別診断する疾患」・「顎関節症の病態分類と検査」はどのようなものがあるのかを紐解いて行きます。

    顎関節症と鑑別しなければならない疾患は2つあります。
    1つ目は顎関節・咀嚼筋の疾患です。
    それぞれ5つずつ、顎関節と咀嚼筋の疾患を解説していただきました。
    中には、顎関節症ととても似ている症状の疾患がありますが、顎関節症との違いや、見分け方がお分かりいただけるでしょう。

    そして2つ目は顎関節・咀嚼筋以外に似たような症状が出ている疾患です。
    こちらも5つ顎関節・咀嚼筋以外の疾患を解説していただきました。
    特に、歯科医師として歯および歯周疾患と顎関節症の区別はしっかり行う必要がありそうです。

    次に実際に西山先生のところに紹介状を持って来院された、「顎関節症でなかった症例」を2ケース提示していただきました。
    「開口時痛」が主訴の患者様と「咬合のズレ」が主訴の患者様です。
    どちらも補綴物の調整不備が原因であることがわかります。
    「三大症状」があり、他の病気が無いとき初めて「顎関節症ではないか?」と疑う必要があるでしょう。

    そして、顎関節症の病態分類と検査の解説をしていただきました。
    顎関節症の病態分類は「疼痛障害」「顎関節内障害」と大きく2つにわかれます。

    「疼痛障害」は、さらに2つ「咀嚼筋痛障害」「顎関節痛障害」分けられました。
    チャートを使いながら、痛みや症状の部位の診断・再現性のある運動時痛・圧痛を確認します。
    また、圧痛の診察に使う器具も教えていただきました。
    再現性の痛みがどこに存在するのかで「咀嚼筋痛障害」「顎関節痛障害」に診断を分類するのです。

    そして「顎関節内障害」もさらに2つ「顎関節円板障害」「変形性顎関節症」に分かれます。
    「顎関節円板障害」は「復位性顎関節円板障害」と「非復位性顎関節円板障害」に分類され、それぞれの特徴を理解できるでしょう。
    顎関節円板障害の診断をする際にも、チャートを用いて行きます。
    「復位性顎関節円板障害」と「非復位性顎関節円板障害」に診断を分類することが出来ました。

    「変形性顎関節症」は5パターンありますが、それぞれ症状の特徴を解説していただきました。
    そして変形性顎関節症の診断の場合はチャートではなく、画像診断を優先すべきと西山先生はおっしゃいます。
    こちらも理由とともに、画像診断の方法をお話していただきます。

    それでは、顎関節症の病名と病態をある程度診断できた後はどうするのでしょうか。
    次の動画でご説明いただきます。

  • 顎関節症の基本治療:治療計画立案、基本治療の病態治療│Part3-1 16:21

    前回の動画では、「顎関節症と鑑別診断すべき疾患」と、「病態分類と検査方法」を解説していただきました。
    顎関節症の病名・病態診断まで行い、専門機関へ紹介することは良いことです。
    しかし「ある程度まで顎関節症の治療をやった方が、患者様との信頼関係が築ける」そうです。
    今回は顎関節症の基本治療である「疾病教育」「病態治療」について紐解いて行きます。

    顎関節症における疾病教育とは、患者様に顎関節症を理解してもらうことでしょう。
    実際に西山先生の外来に紹介状を持ってこられた患者様の例をお話していただきました。
    こちらの患者様は「診断名」と「なぜマウスピース入れるのか」を理解していない状態で、来院されたようです。
    専門機関へ送る際にも、歯科医師から「顎関節症」の説明を患者様にし、病気を理解してもらうことは必要とおっしゃいます。

    そして、顎関節症の有病率は5~12%であり、人口の約1割程度と言われているのです。
    さらに、顎関節症と診断された患者様の年齢・性別分布のグラフを見ていただきます。
    女性が多く、20~30代の患者様が多いですが、年代が上がると発生度数が減っていることが、おわかりいただけるでしょう。
    これは、Self-limiting(治療をしないでも長期的には症状が落ち着いたり治まる性質がある)という特徴があります。

    また、関節円板転位のMRlを使った調査では、関節円板転位率は健常者でも33~35%見られるのです。
    関節円板転位の雑音(+)のみの場合は、予後がいいと言われています。
    そして治療をせず5、6年後調査した研究結果でもおおむね悪くならず、8割ほどの方が雑音はあるけれど悪化はしていないのです。

    次に、顎関節症の寄与因子「行動要因」「環境要因」「宿主要因」3つの説明をしていただきました。
    発生率や予後・寄与因子を患者様に説明をすることで、安心感を与え、さらに顎関節症について深く理解していただけるでしょう。

    そして、疾病教育後に痛みや開口障害である「病態治療」を行います。
    「咀嚼筋痛障害」「顎関節痛障害」に対して薬物療法・開口訓練のやり方と患者様への注意事項を解説していただきました。
    また「咀嚼筋痛障害」にはスタビリゼーションタイプ型スプリントの使用を、症状の改善を診ながら積極的に使用することも可能です。

    その後、「関節円板障害」に対しても開口訓練の有効性や、患者様へ注意するべき説明事項も紹介していただきます。

    開口訓練をする理由は、痛みと開口障害に対して「顎関節の可動域を増やしてあげること」だそうです。
    顎関節の可動域が減少することによって、痛みや、開口障害の悪循環に陥ってしまいます。
    この悪循環を断ち切る方法が開口訓練であり、開口訓練の重要性を理解していただけるでしょう。

    次の動画で「病因治療」について取り上げていただきました。
    実際の症例もありますので、動画でご覧ください。

  • 顎関節症の基本治療:基本治療の病因治療、症例解説│Part3-2 16:13

    顎関節症の基本治療である「疾病教育」「病態治療」を解説していただきました。
    今回の動画は、疾病教育の後に行う「寄与因子に対する病因治療」についての説明をしていただきましたので、ご覧ください。

    顎関節症の寄与因子には、「行動要因」「環境要因」「宿主要因」の3つがあると説明してくださいました。
    「病因治療」とは寄与因子をコントロールし、3つの寄与因子を良いバランスに保つことです。

    そして、3つの寄与因子の中で最も自身でコントロールの出来る「行動要因」に着目していきましょう。
    行動要因で代表的なものは、睡眠時ブラキシズムですが、口腔内装置は上顎スタビリゼーションタイプを西山先生は推奨されます。

    そこで、マウスピースの調整方法と調整する際に注意することを詳しく説明していただきました。
    調節する時に大切なことは、口腔内装置を装着した状態でブラキシズムが起きたときに、余計な害が出ないように考えることです。
    実際に、咬合紙の印がついたマウスピースを見ていただき、筋肉の位置や顎の動きまで考慮した調整方法をご覧ください。
    そして、マウスピースをハードタイプ・上顎に入れる理由も見逃せません。

    次に、覚醒時ブラキシズム(TCH)の対応もお話していただきました。
    こちらは患者様に行動変容法のステップ4つを使い、患者様自ら行動をしてもらうことで「覚醒時ブラキシズム」を減らします。

    そして、実際の症例2つをご紹介くださいました。
    最初の症例は41歳女性。
    左耳前部の痛み(+)開口障害(+)TCH(+)ボルタレン服用とスプリントの使用でも改善されない状態です。
    顎関節痛障害・非復位性顎関節円板障害と診断され、開口訓練とTCHコントロール指導が行われました。
    3週間後には自発痛が消失し、開口量が2倍になり非復位性であっても基本治療だけで、十分改善が見られる症例でした。

    次の症例は25歳女性。
    10年前から両耳前部、頬部に自発的および機能痛(+)、4年前からスプリント治療中の患者様です。
    そして、歯ぎしり音指摘(+)、起床時症状(-)でした。
    左右側に咀嚼筋痛障害、顎関節痛障害、左側は復位性顎関節円板障害と診断され、睡眠時ブラキシズムとTCHの疑いもあります。
    開口訓練と睡眠時スプリント使用は継続していただき、TCHチェックおよびコントロール指導を行いました。
    8週間後には、自発痛は消失し開口量も大幅に大きくなり、10年の病歴であっても基本治療のみで十分改善が見られた症例でした。

    西山先生は基本治療を初めて3か月位経過しても全く改善しないのなら、専門機関へ任せることを推奨されています。

    そして、顎関節症によって咬合の異常まで引き起こると言われています。
    次の動画で解説していただきましたので、ご覧ください。

  • 顎関節症による咬合異常│Part4 14:48

     今回は「顎関節症による咬合異常」についてお話していただいています。
     
    顎関節症と咬合の異常の関係は昔から議論されているでしょう。
    しかし、今回は「咬合に問題があるから顎関節症になる」のではなく、「顎関節症によって引き起こされる咬合異常」のお話です。
     
    顎関節症による咬合変化の要素は6つあり、ひとつずつ解説していただきました。
    ・急性炎症による関節隙の拡大
    ・転位円板の再転位不全(復位)
    ・顎関節円板の後方転位
    これら3つは、下顎頭が押し出され、結果として臼歯部のオープンバイトを引き起こす可能性がある要素です。
    また下顎は「健側」へ偏位してしまっています。
     
    ・顎関節円板の前方転位
    ・下顎頭の変形
    これら2つは、下顎頭が上方に動いてしまい、結果として前歯部のオープンバイトを引き起こします。
    また下顎は「患側」へ偏位していることがおわかりいただけるでしょう。
    ・痛み
    痛みがあると感覚受容器の感度を変えてしまい、咬合位が変わると考えられているそうです。
     
    実際に、痛みによる咬合変化の症例を2つご覧ください。
    最初の症例は「左側顎関節痛障害」と診断され、「左側が痛くてかみ合わない」と訴える患者様です。
    初診時のシリコンバイトを見ると左側の咬合が弱い様子が見られるでしょう。
    そして基本治療後、採得したシリコンバイトを見ると右側のみ強く当たっていた咬合が、左右均等に咬合した様子がわかります。
     
    2つ目の症例は「左顎関節痛障害・非復位性顎関節円板障害」と診断され、「左側のかみ合わせが弱い」と訴える患者様です。
    基本治療後は顎関節症の症状が無くなり、咬合の違和感も無くなりました。
    しかし、初診時と基本治療後の採得したシリコンバイトを見比べてみても、咬合の変化は無いことがご覧いただけるでしょう。
     
    このように2つの症例から、痛みで誘発される咬合の違和感は「位置の変化」と「感覚の変化」の2種類があると言えるのです。
    また日本顎関節学会のガイドラインでは顎関節症患者において、症状改善を目的とした咬合調整は行わないことを推奨しています。
     
    そして「歯科クリニックで実践可能な顎関節症の対応」8つをまとめていただきました。
    1.三大病状ありは必ずしも顎関節症ではない⇒【鑑別診断する】
    2.病状は【痛み/顎関節内症状】
    3.痛みの検査は【再現性】⇒【いつもの痛み】Familiar pain
    4.非復位性円板転位の検査は【強制開口量】
    5.雑音は必ずしも治療の対象とはならない
    6.治療の第一歩は【疾病教育】
    7.痛み/開口障害に対しては【開口訓練】
    8.結果としての咬合異常に注意する
     
    次の動画では顎関節症の対応の疑問を解決していただきました。
    ぜひご覧ください。

  • 質疑応答│Part5 08:31

     5つ目の動画では、西山先生に「顎関節症による咬合異常」と「まとめ」を解説していただきました。
    今回は8つ「質疑応答」していただきます。
     
    Q1.顎関節痛障害に対して運動療法は薬物療法より効果的ですか?
    運動療法と薬物療法をどちらをメインにし、治療をする方がより良いのかを回答していただきました。
    顎関節痛障害に対して運動療法と薬物療法どちらを選択するか、悩まれる先生に参考になります。
     
    Q2.運動療法の指導は保険点数がとれますか?
    現時点の「運動療法指導の際の診療報酬の点数加算」と、今後のお話をしていただきました。
    運動療法の診療は保険点数がとれるのか、悩まれる先生の解決のヒントになるでしょう。
     
    Q3. 開口訓練以外にGPで出来る治療はあるのでしょうか?
    様々な顎関節症の症状に合わせて開口訓練以外の治療法を答えていただきました。
    口腔内装置・薬物療法・TCHのコントロールなど開口訓練以外にGPで出来る治療に悩まれる先生に参考になります。
     
    Q4.リハビリは開口訓練だけでいいのでしょうか?咬筋のマッサージや胸鎖乳突筋のストレッチなどはいかがでしょうか?
    開口訓練以外のリハビリとして咬筋のマッサージ・胸鎖乳突筋のストレッチを行う際の注意点を教えていただきました。
    咬筋のマッサージ・胸鎖乳突筋のストレッチは有効なのかとお悩みの先生方の解決になるでしょう。
     
    Q5.上顎にスプリントを装着すると上顎前歯の唇側傾斜を起こすと考えられるので、下顎の3番だけのアンテリアガイドをつけ、
    臼歯部全部に咬合するように下顎スプリントを装着するのは良くないのでしょうか?
    上顎のスプリント装着を勧める根拠と例外、また筋の負担を減らす為に、フラットに近いガイドの推奨を解説いただきました。
    スプリントを装着する際にアンテリアガイドを重視すべきかどうか、お悩みの先生は必見です。
     
    Q6.チェアサイドに置いておくべき書籍はありますか?
    患者様に図を見せながら疾病教育をするのは非常にいいと回答していただきました。
    さらに西山先生が著述された「TMD YEARBOOK 2020」は説明用の筋肉や関節のカラーの絵が載っているので、
    どの資料を使用し、患者様に説明するかお悩みの先生は参考になるでしょう。
     
    Q7.変形性顎関節症と診断した時の治療方法を教えてください。
    変形のアプローチよりは、痛みはあるのか?開口障害はあるのか?で治療法を考えていただければ良いと教えていただきました。
    変形性顎関節症、顎関節症の症状である痛み、開口障害があると診断した際、どのように治療をすべきかを解決できるでしょう。
    (開口訓練のやり方の詳細・投薬法は#3の動画も一緒にご覧ください。)
     
    Q8.SC時の顎が外れた時の対処方法を教えてください。
    顎関節脱臼は外れた直後に、整復として「ヒポクラテス法」を行うと回答していただきました。
    また、脱臼を何度も繰り返す患者様には、開口訓練をすることで、開口が増えるのです。
    脱臼をした時の整復方法や、脱臼を繰り返す患者様への対応でお悩みの先生は参考にしてください。

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試験結果

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