以前はメタルや歯冠補綴を選択していた症例でも、MIの考えや材料や技術の発達により、コンポジットレジン修復での応用が行われるようになってきた。だが直接法のCR修復は間接法の修復方法と比べ術者の負担が高い。

田代先生は、以下の８症例をもとに術者が陥りやすいポイントの解決法を示し効率が良く審美性の高いCR修復方法を示した。

①メタルフリー　臼歯1級　う蝕治療

う蝕処置ではまず、いかに削る必要のないう蝕を見抜くかが重要である。田代先生は幼若第一大臼歯 初発う蝕の実際の症例を用いて半導体レーザーであるDiagnodentpenを用いた非侵襲タイプの診断の有用性を示した。

う蝕を切削していく段階では、効率の良い切削と麻酔なしでの無痛治療が求められる。ダイヤモンドバーで削りすぎてしまうとMIの理念に沿わず、また疼痛の原因となる。かといってスチールバーを早い段階で使うとエナメル質にクラックが生じてしまう。

これらに加え、スプーンエキスカベータを用いるタイミング、無駄のないう蝕検知液の使い方を組織学的特徴のエビデンスを基に説明した。

接着操作や実際のCR充填については、フロアブルタイプとペーストタイプを使い分けC-factorを最小限に抑える積層充填の方法を示した。

②メタルフリー　臼歯２級　う蝕治療

２級のポイントはコンタクトや隅角部の温存と再現である。

田代先生は、術者が窩洞の形態をコントロールし適切な隔壁操作を行うことが重要であると述べ、今回は歯髄に近接したカリエスにおいてトッフルマイヤーを用いた隔壁の操作方法とデンティンシェードやステインを使用した審美性の高い積層充填を示した。

③メタルフリー　臼歯２級　審美回復

メタルインレー窩洞へ直接修復を行う場合、隅角をはじめとする解剖学的特徴の再現の難易度は高い。

上顎４番のMODメタルインレーの実際の症例を基にシリコン印象とマトリックスを用いた隔壁操作での効率の良い積層充填方法を示した。

④破折歯への修復　前歯4級修復

前歯部4級は、切縁隅角の再現は難易度が高いにも関わらず、より審美的な回復を求められる。

今回は再接着が困難である破折片を用いた切縁隅角の再現方法や積層充填のポイント、様々なステイン材を用いた隣在歯との色調調整方法を示した。

⑤正中離開の修復

上顎前歯の正中離開は、審美的な欲求が高く、また脱離しやすい部位である。切削をせずに行う接着操作、歯間乳頭のコントロールを可能にした積層充填方法を示した。

⑥ダイレクトベニア修復

矮小歯の症例では、歯冠補綴を選択する場合もあるが、術者の負担が少ない一方健全歯を削るという大きなデメリットがある。

直接法のCR修復を行うことによって切削をせずに短期的で審美的かつ機能的な再現方法を示した。

⑦ダイレクトクラウン修復

右下前歯での根管治療歯において、隣在歯に接着を求めたCR修復を行なった実際の症例を取り上げた。ダイレクトクラウン修復は、根管治療における隔壁としての役割の有用性や短期的な審美改善が可能であることを示した。

⑧ダイレクトブリッジ修復

プラークコントロール良好でCTにてインプラント埋入ができるほどの骨質が認められない患者さんに対して前歯や臼歯部にダイレクトブリッジ修復を行った症例を示した。前歯部においては７年経過現在でも機能面・審美的に優れている。欠損部へのアプローチのひとつとしてのCR修復やその有用性を示した。

適切な隔壁操作・積層充填操作を行えば、コンポジットレジン修復によってMIと審美回復の両立が可能になるーコンポジットレジン修復の応用の幅広さと更なる可能性を示した。