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矯正と補綴の治療計画をシームレスに。

2023年11月30日(木)

[対談]
インビザライン・スマイルアーキテクトの活用法と可能性

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山根 茂樹 先生
マナミ歯科クリニック 院長
銀座並木通り歯科 院長
インビザライン Goドクター

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植田 憲太郎 先生
医療法人 UDC 理事長
HANA Intelligence 歯科・矯正歯科 総合治療ディレクター
インビザライン・ドクター


矯正と補綴の治療計画が単一のプラットフォームで視覚化できる、スマイルデザイン用ソフトウェア「インビザライン・スマイルアーキテクト」を、実際に診療で活用されているお二人の先生に、その具体的な活用法と可能性についてご紹介いただきました。
※本資料にて示される臨床情報および推奨される内容については、インビザライン・システムを使用する一歯科医師の立場における個人的な見解に基づくものであり、必ずしもアライン・テクノロジー社の正式な会社方針を正確に反映するものではありません。また、それらはあくまで一般的な情報提供に過ぎず、本資料にて示される臨床情報および推奨される内容を実際に臨床応用されるか否かについては、あくまで担当医個々人の個人的裁量、判断、責任に委ねられるべきものです。​

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インビザライン・スマイルアーキテクトとは?
インビザライン・スマイルアーキテクトは、矯正×補綴の両方を一つの治療計画で視覚化できるスマイルデザイン用のソフトウェアです。

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インビザライン・スマイルアーキテクトは、高い治療満足度と治療成果をお届けするのに役立ちます。

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■山根先生は、インビザライン・スマイルアーキテクトを、どのような場面で活用されていますか

山根 当院(銀座並木通り歯科)は矯正専門の施設ではありませんので、一般歯科のいろいろな訴えを持った患者さんが来院されます。そこで、より良い治療のゴールを目指すために矯正治療が有効な手段であることを患者さんにお伝えします。補綴治療やインプラント治療を組み合わせた場合の治療のゴールを患者さんに説明する際、インビザライン・スマイルアーキテクト(以下、スマイルアーキテクト)を使っています。
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■植田先生は、どのような場面で活用されていますか

植田 当院は一般歯科でありながら、矯正治療を希望されて来院される患者さんも多く、全顎の矯正治療を行う方が患者数の半数以上いらっしゃいます。当院では、スマイルアーキテクトを、矯正治療を目的に来院された患者さんに対して、歯並びを良くするだけではなく、補綴治療や修復治療も必要であることをお示しするために使っています。
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■実際に、インビザライン・スマイルアーキテクトを活用された症例について、ご解説頂けますか

●症例1●
山根先生のインビザライン・スマイルアーキテクト臨床応用例:前歯部審美障害、前歯部咬耗の症例
[図1]口腔内写真(症例1) 
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山根 こちらの患者さんは、定期健診で来院され、下顎前歯部舌側の叢生部に歯石が付いてしまうとのことでした。また、前歯部の見た目も気にされており、将来的にセラミック矯正を考えていらっしゃいました。  
 そこで私は、矯正治療によりメンテナンスをしやすくする、かつ、摩耗を避けるために前歯のカップリングを獲得し、最小限の歯質削合で薄いセラミック修復治療をすることを、スマイルアーキテクトを使って提案しました。また、歯頚ラインを少し上げ、前歯部切端の長さを整え、下唇のラインに平行にスマイルラインを作ることを目指す治療計画も合わせてご提案しました。


[図2]インビザライン・スマイルアーキテクトによる、顔貌と歯並びのシミュレーション(症例1)オズマ5


以前は、診断用ワックスアップを用いて説明をしていたのですが、診断用ワックスアップでは、患者さんは普段どの位置まで唇が上がっていて前歯がどのように見ているかまではわかりません。スマイルアーキテクトでは、矯正治療後の歯並びだけでなく、セラミック修復治療をした際の顔貌の見え方も具体的に示せますので、患者さんが治療に納得されることが多くなっています。

植田 歯科医師はどうしてもひとつひとつの歯を見てしまいがちですが、患者さんは自分の顔との調和を望まれています。スマイルアーキテクトを使用するようになって、以前、診断の時に考えていた着眼点とは違うところからスタートできるようになっていますよね。

山根 スマイルアーキテクトでは、補綴修復前の矯正治療をしないで補綴治療をする場合の必要な削合量、あるいは追加量のイメージを示せます。一方で補綴修復前に矯正治療をすることで、削合量、追加量を減らすことができるということも示せます。薄く削って薄い被せ物を入れるということは、我々科医師にとってはより技量が問われますが、患者さんにとっては、歯の持ちが良くなりますし、近年の接着技術の進歩を考えてもできるだけエナメル質を残しておくということは大きな意味があるのです。
[図3]インビザライン・スマイルアーキテクト「⻭牙解析ツール」によるシミュレーション(症例1)
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患者さんの顔に瞳孔間線を引いて、口角のラインとのバランスを見ることもできます。歯の形を修正することもできるという点を合わせると、スマイルアーキテクトはデジタル版の診断用ワックスアップとして使えるのではないかと感じています。治療計画の画面上で患者さんに気に入ってもらえれば、その形をSTLデータとしてエクスポートして補綴設計を行うこともできるのです。

植田 顔貌を見ながら歯の形のイメージを変えていくという点で明らかに優れていますよね。

山根 顔貌に調和させてインサイザルエッジポジションなども細かく調整でき、チェアサイドでイメージ見せられる点が大きなメリットだと思います。実際に患者さんにお見せすると、「こんなことまでできるんだ」と感動されます。その感動が、その歯科医院に対して、「矯正治療や補綴治療を全て任せていいんだ」という安心感につながっているように思います。
 本症例は、現在、矯正治療中で補綴治療までは至っていませんが、矯正治療が終わったところで、最終的なクラウンレングスニングに向けて前歯部のトリミングラインを確認し、参考としてSTLデータも起こそうと思っています。

植田 スマイルアーキテクトで、歯肉ラインのイメージを修正できることを体験した時は衝撃的でした。ここまでの機能が矯正のソフトウェアに入るというのは本当に便利ですね。

山根 ひと昔前と比べて、矯正治療と補綴治療のデジタルツールがここまで近づいてきていますね。ツールとしての完成度の高さを感じます。

●症例2●
山根先生のインビザライン・スマイルアーキテクトがあれば良かった臨床例:前歯部の審美障害、前歯部咬耗の症例/iTeroで補綴物作製のためのスキャンを実施
[図4]口腔内写真(症例2)オズマ7


山根 本症例は、スマイルアーキテクトがまだリリースされていなかった時のものです。スマイルアーキテクトがあれば活用したかった症例としてご紹介します。
 本症例は、前歯部のカップリングがとられておらず、切端咬合のために前歯部の審美障害を起こしていました。患者さんは、前歯の削れてしまった歯牙にセラミックを被せることを希望されていました。

植田 そんなケースこそスマイルアーキテクトで比べて見せてあげると、矯正治療の必要性を理解して頂きやすくなりますよね。

山根 そうなんです。この時は、スマイルアーキテクトがなかったので、矯正だけのクリンチェック治療計画で説明しました。前歯部のカップリングがとれた状態にすることで、歯の削合量を減らすことができ、補綴物も長持ちしますと。今、前歯が摩耗してしまっているのはカップリングが得られていない切端咬合だからということもお示ししました。最後に、カップリングが得られたら、フルクラウンではなく、ベニアで歯の形態を整えることができることをご説明し、矯正治療に納得してもらうことができました。

[症例2:iTeroで補綴作製のためのスキャンを実施]

山根 今回、矯正治療を提案させてもらったこの患者さんには、あえて模型を作らずに全てデジタルで補綴治療までを完結させることとし、補綴はベニアですがCADとブロックの削り出しで作成してみました。iTeroで補綴のスキャンをする際には、縁下のマージンの位置によっては読み取りにくい部分がでてくることに留意が必要です。圧排糸をしっかりと入れ、半導体レーザーや炭酸ガスレーザーを使ってきれいにトリミングをし、外科的な圧排や二重圧排を用いてマージンをしっかり出しておくということが重要です。補綴のデザインを患者さんにお示して、実際に作製したものが下図です。正直なところ、私の中ではまだデジタルをフルに活用した自分の補綴治療に十分に満足できる段階までは至ってはいませんが、今後、デジタルをどこまで駆使して、どのような素材で作っていくのか、スマイルアーキテクトを使いながら検討していきたいと思っています。
[図5]べニアの設計と作製(症例2)
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植田 私もスマイルアーキテクトがリリースされる前からデジタルを使った補綴治療に取り組んでいました。しかし、デジタルで補綴治療をしようと思うと、どうしても削合量を多くして、マージンをしっかり出してからスキャンをする必要がありました。本症例をご紹介いただいて、スマイルアーキテクトを使ってデジタルで最初にセットアップされていれば、形成量をある程度把握でき、削合量を減らしていけるのではないかと思いました。デジタルの補綴治療がこのような新しいツールの登場で進化していくという実感を得ることができました。

山根 私たちにとって補綴治療はどうしても避けて通れません。矯正治療は、より良い補綴治療、修復治療をするための手段のひとつなのです。矯正治療によってできるだけ削合量を少なくしようと思っても、デジタルにこだわって削合量が増えてしまえば本末転倒です。症例によっては新しいデジタルツールを使って模型レスの治療を進化させていく必要もあるのだと思います。

●症例3●
植田先生のインビザライン・スマイルアーキテクト臨床応用例:欠損部位のスペースコントロールが必要な症例
[図7]口腔内写真(症例3)オズマ10
植田 当院にも、全顎的な矯正治療と補綴治療を組み合わせていく必要がある患者さんが多く来院されます。これまでは、矯正治療も補綴治療もデジタルでセットアップする場合、色々なソフトウェアを組み合わせる必要があり、うまく連携させていくことは簡単ではありませんでした。今回、スマイルアーキテクトが登場したことでその課題が解決されたことを実感したのがこの症例です。
 本症例は、先天的に欠損があり、乳歯も残存していてその下に永久歯がなく、どこにどの歯があったのかさえ分からないような状態でした。これまではこのような矯正治療と補綴治療の両方が必要な治療計画を患者さんに説明することはかなり難しかったと思います。
 スマイルアーキテクトを使ってシミュレーションした結果が下図です。最終的な補綴治療のために、歯牙がここにあればいいんだというのが一目瞭然です。
[図8]インビザライン・スマイルアーキテクトによる、顔貌と歯並びのシミュレーション(症例3)オズマ11
スマイルアーキテクトを使うと、最終補綴のデザインに対して歯がどのように移動していくのかを見ることができ、歯牙移動の難易度を判断することもできます。この症例では、インプラントをどこに埋入するかもポイントになりますが、上部構造の補綴物を治療計画上で表示することができ、埋入位置も自ずと決まってきます。インプラントを早く埋入することでそれをアンカーとして使って他の歯を配列していくことができます。スマイルアーキテクトで歯の動きを見ることで、移動量が少ない歯を基準にしてインプラントの埋入位置を決めることができ、他の移動量が多い歯をどのようにコントロールしていけばいいのかを考えやすくなるのです。このように、スマイルアーキテクトは、前歯だけではなく、臼歯部に補綴物を表示させて歯の移動や修復を考える際にも有用です。
[図9]インビザライン・スマイルアーキテクトによる、歯の最終位置の考察(症例3)オズマ12
次に、スマイルアーキテクトからエクスポートしたSTLデータをインプラントのガイドソフトに取り込むことで埋入位置を決定し、インプラントのガイドを作って埋入しました。
[図10]CBCTのDICOMデータとインビザライン・スマイルアーキテクトのSTLデータを重ね合わせ、インプラントポジションを考察し、サージカルテンプレートを作製(症例3)
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山根 矯正治療前に、矯正治療後を想定した位置にインプラントを入れようとした時、インプラントが入った状態のSTLデータを重ねる時のリファレンスポイントが難しくなります。基本的には、リファレンスポイントを不動点にしないと画像には重ね合わせができないですよね。

植田 そうですね。技工士と話し合い、歯牙移動表を見ながらミリ数を計算して、がんばってマニュアル操作で重ね合わせを行いました。次回からは、事前に不動点を3つ程度決めて、しっかりとリファレンスポイントを作ろうと思います。本症例では、ほぼ想定通りの所にインプラントの埋入をすることができました。スマイルアーキテクトで、上部構造のイメージが表示されているSTLデータを取り出せることで、補綴やインプラント用のソフトに取り込み易くなったと感じています。

山根 矯正治療と欠損補綴が絡むこのような症例では、スマイルアーキテクトで矯正治療と補綴治療の術後イメージを見ることで、どの位置まで歯を動かす必要があるのか、どこにインプラントを埋入すれば良いのかなどが分かってゴールまでの距離が分かり易くなるのだと思います。

植田 実際、インプラントを埋入するところまでもやり易かったです。今回は、左上4番にインプラントが埋入されたことで、左上3番をすぐに引いていけばいいですし、下顎6番や、遠心移動させる小臼歯も上に作ったインプラントに集めるような方法で並べることができました。
[図11] 口腔内写真(症例3)
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山根 歯科医師の間で、矯正治療が先かインプラントが先かよく議論になりますが、スマイルアーキテクトがあれば、矯正治療前のインプラント埋入を自信を持って決定できるようになりますね。

植田 やはり基本は補綴修復前の矯正治療ですね。最終的に上部構造が入るまでにインプラントを入れて不動点を作って、補綴物の位置の確定までに歯の位置を動かす必要がありますが、スマイルアーキテクトによるシミュレーションを使えばそれがやり易くなります。

■インビザライン・スマイルアーキテクトを活用することで、どのような変化がありましたか

山根 患者さんにとって複雑な治療計画が分かりやすくなりました。そして歯科医師にとっては削合量がイメージし易いという利点がすぐに思いつきますが、植田先生はより包括的にスマイルアーキテクトを応用して治療計画を立てられており、参考になりました。

植田 当院の若い歯科医師たちにとっても、矯正治療も補綴治療も反映したイメージを動かしながら見られることで治療計画を確認しやすいと思います。

山根 歯科医師同士、意思の疎通がし易くなりますね。
 そして、今、歯科領域でもアナログからデジタルへの大きな流れが生まれている中で、デジタルの最新技術を使ってスマートに治療をしているということ自体が楽しいです。一度使ってそのメリットを享受してしまったら、もう手放せなくなってしまいますね。

植田 歯科治療は最初の治療計画がとても重要であるという点も、このようなデジタル技術によるシミュレーションが重宝される理由だと思います。このような包括的な歯科治療をサポートするデジタル技術が進歩していけば、より自然な治療のために私たち歯科医師ができることがもっと増えてくるのだと思います。

■インビザライン・スマイルアーキテクトにおける今後の展望をお聞かせください

山根 患者さんと共有された治療ゴールが最終的な補綴に正確に反映されるように、最終的な補綴の形態もSTLデータに起こされてモップアップのようなプロビジョナルとして使えるようなものに変化させられる、さらには最終的な治療ゴールもデジタルで作れるなど補綴治療のデジタル化が実現していくといいですね。

植田 そうですね。最初に作ったデータがいかに補綴にまで活用できるかというのがポイントだと思います。スマイルアーキテクトが、担当医だけではなく技工士や他の専門医も同じ患者の情報を見られるようになると補綴治療の底上げにもつながっていくのではないでしょうか。

■インビザライン・スマイルアーキテクトの使用を検討されている先生方へ、メッセージをお願いします

山根 スマイルアーキテクトを使うことで、これまで独立していた矯正や補綴など複数の治療を組み合わせた患者さんへのコンサルテーション、そして治療ゴールの共有が容易になります。治療の完成度も上がりますから、当然、患者さんの満足度が高まります。スマイルアーキテクトは直感的に使えますので、ぜひ先生方の治療にご活用いただければと思います。

植田 スマイルアーキテクトは、矯正治療に全顎的な補綴治療を伴うような症例、インプラント治療を伴う症例、複雑な補綴治療が必要な症例などにかなり活用できると思います。スマイルアーキテクトを使えば、補綴する歯をいくつでも選択した上で治療計画を表示させることができ、それを参考にしながら、直感的に不動点を作っていく、歯を動かしていくということができます。ぜひ多くの先生方に使っていただきたいですね。



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