【開催レポート】COLLOQUIUM IN 2018 デンタルインプラントの新機軸
2018年7月16日(月・祝)、イイノホール&カンファレンスセンターにて COLLOQUIUM IN 2018 が開催されました。
今回のテーマは デンタルインプラントの新機軸 〜FINESIAの実際〜 です。
Scientific Lecture
FINESIA開発の理論背景と臨床への示唆
澤瀬 隆 先生(長崎大学生命医科学域 口腔インプラント学分野)
FINESIAのインプラントデザインは、上向きのマイクロスレッドを用いることで骨配合化誘導ステップがあります。
そして、澤瀬先生の研究により繰り返し荷重により配向性とコラーゲン繊維の組成も変化していることがわかりました。
荷重の時期等は実際の臨床で悩むことが多い課題ですが、明確なエビデンスと可能性を示して下さいました。
澤瀬先生は今後、効率の良い適正荷重や耐荷重性の向上、インプラント周囲炎の検証も行っていきたいと意欲的な意見を示していました。
長期症例に学ぶインプラント成功の要因 〜FINESIAに期待するところ〜
糸瀬 正通 先生(歯科糸瀬正通医院)
インプラントは機能性を重視する存在から、2000年代は審美性を重視し、サイナスリフトやGBRの応用、2010年以降はインプラント周囲炎への対応などの反省期になっていると指摘したのは糸瀬先生。
TEKを補填材の補強として応用することなど、臨床経験の中で画一した糸瀬先生のセオリーを説明していただきました。
様々なインプラントを用いた糸瀬先生は、
FINESIAはオプティマスレッドは期待が高まるインプラントであり、骨質の向上を上げてくれる。
としました。
Clinical Session 1 FINESIA 臨床的所感
特徴的なスレッドデザインを有するFINESIAの臨床成績
今 一裕 先生(東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 インプラント・口腔再生医学分野)
FINESIAは純チタンではなく、より強度があるチタン合金を使用し、
1ピース/ボーンレベル/ティッシュレベルタイプを同じドリルラインアップで行うことができるというのも大きな特徴です。
今先生は前歯部審美領域症例やBrタイプなど、いわゆるインプラントにおける難症例に対してそれらの種類を使い分けながらFINESIAの臨床的な有用性を示しました。
インプラント骨頂部のsaucerizationを再考する
工藤 昌之 先生(医療法人社団 信昌会 神宮前歯科クリニック)
8020達成者が50%を越え、
インプラントはより長期的に良好な予後が認められるようになったいま、Saucerizationも可能であれば回避したいとお話ししたのは工藤先生。
FINESIAで応用されているplatform switchingのテーパーシーリングジョイント型のインプラントシステムは、Saucerization抑制効果が期待されています。
パピラー等の再現性が強く求められる上顎前歯部抜歯即時埋入インプラント治療の実際の症例等を例に、自ら導き出した研究をもとにしその効果をお話しいただきました。
日常臨床におけるFINESIAの検証
船木 弘 先生(日比谷歯科医院)
バッドジョイント型タイプのインプラントはテーパージョイント型と比べると日々の咬合力でマイクロリーケージが生じてしまいます。
内部汚染状況を自ら比較したのが船木先生。
明らかにテーパージョイントの方が感染が少ないという明確な船木先生のエビデンスを示しました。
ただテーパージョイントの欠点としてスクリューやフィクスチャーの破折があります。
その欠点の改善として強度が強い、FINESIAに使用しているチタン合金使用やアバットメントの使用を推奨しました。
Clinical Session 2 FINESIAを用いたアドバンステクニック
FINESIAの臨床応用とTRIOS3の活用法
金成 雅彦 先生(クリスタル歯科)
22年のインプラント臨床経験をもつ金成先生が初めてインプラント埋入をしたのは自らの父の下顎7番。
予後は良好だが、機能維持年数を少しでも長期にするためにはsauserizationの現象等が必要であるとしその予防策を実際の臨床症例をもとに説明しました。
金成先生は、FINESIA・iCAT・TRIOS3を応用したデジタル化を実現しています。
TRIOS3の応用は補綴物の製作だけではなく、術前のインフォームドコンセントやサージカルガイド製作にメリットがあることも大きなメリット。
今後のインプラント界隈としてリカバリーや周囲炎にならないようなケアが重要だと指摘。
そしてFINESIAの長期予後についての期待やTRIOS3の多岐にわたる多様性、更なる応用があるとした。
Guided Surgeryはインプラント治療のオプションか?否、基本プロトコルである。
新谷 悟 先生(医療法人社団 優新会 東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック)
絶対的にサージカルガイドの使用を推奨するのは新谷先生。
光学印象→技工でPCでデザイン→iCATを用いて診断→ガイド製作→再度光学印象→クラウンデザイン
というデジタル化したインプラント治療の流れの効率かつ正確性を説明しました。
FINESIAインプラントのメリットのうちの一つとして、
日本のメーカーであり、何かある度に対応・解決する京セラ株式会社を初めとする関係各位の臨機応変能力があると指摘され、自分なりのこだわり抜いた設計ができる有用性があると絶賛した。
FINESIA Summary 症例に応じたインプラント・補綴様式の選択
科学的根拠に基づいたデンタルインプラントと上部構造の選択
黒嶋 伸一郎 先生(長崎大学生命医科学域 口腔インプラント学分野)
黒島先生は、現代の日本は超高齢社会であり、フレイルやサルコペディア、ロコモーティブシンドロームが課題となっており、我々歯科医師はオーラルフレイルにさせないことが求められる と柔らかい口調で訴えました。
ー口腔と栄養摂取の関連性ー
咬合力の低下は低栄養になる、つまり欠損歯列の機能・回復が必要である。
だがしかしその一方で薬剤関連顎骨壊死とインプラント治療の関連も留意しなければならない。
インプラント治療後にBP製剤を開始しても顎骨壊死が起こる。
我々はこれらのことを考慮した上でインプラント治療を行い、インプラント選択を行うべきとお話しした。
ボーンレベルかティッシュレベルなのか
バッドジョイントかプラットフォームなのか
スクリュー固定なのかセメント固定なのか
サイナスリフトやソケットリフト、GBRを応用するのか
欠損歯数や骨質の状態・粘膜の厚みによって選択肢は様々であり、実際の症例でどのようなタイプのインプラントを選択すれば良いのかを明確なエビデンスと症例とともに丁寧に説明いただきました。
FINESIA Systemにおける私の選択 〜Bone levelの有用性〜
覚本 嘉美 先生(覚本歯科医院)
FINESIAシステムはBLレベル、TLレベル、1Pレベルがあるが、上部構造の補綴の観点からBLを推すのは覚本先生。
長期予後を考えるということは、一本のインプラントではなく1口腔単位の長期経過を最初から想定することであり、インプラント周囲炎や隣在歯欠損等の理由により再介入した場合の自由度の高さを想定して治療計画を立てることの重要性を指摘しました。
FINESIA BLレベルはプラットフォームスイッチング・マイクロスレッド・テーパードHEXコネクション等の特徴があり、これらにより安定したオッセオインテグレーションの獲得が期待できることを学術的・臨床的な観点から説明。
骨質やご年齢、ライフステージによってインプラント使い分けていくことの重要性をお話しいただきました。
長期的視点からのインプラント・補綴様式の選択
水上 哲也 先生(医療法人 水上歯科クリニック)
水上先生はまず、インプラントは世間の思い込みがあり、それらとどう向き合い解決していくかであるとしました。
BLとTLにおいて生存率に差はないが、経年的にBLの方が有利だとし、8をEXTし粉砕し骨補填材としてGBRを行った症例等を示しました。
スクリュー固定とセメント固定ではついスクリュー固定を選びがちだが、セメント除去が綺麗にできていれば問題ないエビデンスを示し、症例にあったインプラント治療を選択していく必要があるとしました。
FINESIAはあらゆるエビデンスと研究、実際の臨床経験からの改善など、インプラントの課題と真摯に向き合った開発関係者の方々の気遣いと努力が感じられました。
そして症例に適したFINESIAの更なる発展とデジタル化の応用が今後も益々期待されるでしょう。