【無料デモ体験中!】ニッケルチタンファイルの選択基準
ニッケルチタンファイル(以下NiTiファイル)は、その登場以来優れた柔軟性から湾曲根管の根管形成に有用とされ、臨床に用いられてきた。一方、筆者は近年のNiTiファイルは、湾曲根管に対する有用性はもちろんだが、特に通常の根管形成に大変有意義だと考えている(図1)。事実、海外においては専門医に限らず、一般臨床医でもNiTiファイルを日常的に使用している割合が増えてきている(図2)。日常臨床で使用する際には、今、どのような選択基準でNiTiファイルを選ぶか、を理解することが重要となる。
*図1 *図2
根管形成には限界があり、いかなるシステムやテクニックを用いても根管内全周を形成することは不可能で 1)、感染源の除去効果についてステンレススチールKファイルとNiTiファイルに差が無い 2) ことは広く知られている。では、NiTiファイルが何に有用かといえば、シンプルなファイルシステムを用いて効率的に根管形成できることにある(図3)。つまり、システム自体に根管形成の際に要求される形態が組み込まれ、術者は術式に則って使用することで、必要とされる根管形成を行うことができる。上述の通り、根管形成の限界が明らかになるなかで、ある程度規格化され一定水準以上の根管形態を付与できる、システムをベースとして行う根管形成は、実臨床において大多数の症例に対して非常に合目的といえる。
*図3
一方、NiTiファイル使用に際して、常につきまとう問題がファイル破折である。これまでの報告からNiTiファイルの破折率は、複数回使用時で2−5%の範囲とされている (図4)。この破折のリスクを減らすために効果的な方法は3つある(図5)。1つは使用回数の制限であり、3−4回以内に使用を制限すると破折のリスクは大幅に低くなる 3,4)(図6)。もう一つのリスク軽減方法は、レシプロケーティングシステムの使用であり、最後が熱処理ファイルの使用である。特に熱処理ファイルは破折リスクを低減させると同時に、ファイルの柔軟性がさらに向上し湾曲根管への追従性も高まることから、臨床使用におけるメリットは大きい。
*図4
*図5
*図6
NiTiファイルを日常臨床に使用する際の選択基準として重要なのは、いかに効率的に根管形成を行えるシステムであるか、ということで、次に破折リスクを考慮しているかということである。以上を踏まえると、現時点でウェーブワンゴールドやプロテーパーゴールドというのは、非常にバランスがとれた選択肢といえよう。効率化の利点は単なる時間短縮ではなく、そこで生まれた時間を有効活用し、質の高い治療を提供できるようになることだろう。例えばその時間でマイクロスコープを覗く時間を増やす事ができるかもしれないし、ラバーダム防湿を行う時間がとれるかもしれない。本稿が、NiTiファイルの日常臨床への応用の一助になれば幸いである。
引用論文
1. Peters OA, Schönenberger K, Laib A. Effects of four Ni-Ti preparation techniques on root canal geometry assessed by micro computed tomography. Int Endod J. 2001 Apr;34(3):221–30.
2. Dalton BC, Ørstavik D, Phillips C, Pettiette M, Trope M. Bacterial reduction with nickel-titanium rotary instrumentation. J Endod. 1998 Nov;24(11):763–7.
3. 八幡 祥生,浦羽真太郎,高林正行,坂上斉,鈴木規元,宮﨑隆. 臨床使用におけるニッケルチタンファイルの器具破折率. 日歯保存誌. 2017 Dec;60(6):299-305.
4. Wolcott S, Wolcott J, Ishley D, Kennedy W, Johnson S, Minnich S, Meyers J. Separation incidence of protaper rotary instruments: a large cohort clinical evaluation. J Endod. 2006 Dec;32(12):1139–41.
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