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日本臨床歯周病学会10月支部教育セミナーLIVEプログラム一覧

2020年10月1日(木)

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<特別講演>

歯周治療におけるインプラント治療、矯正治療の応用

い

 石川 知弘(関東支部 石川歯科)

歯周病は進行すると重度な歯周組織の喪失を招き、歯根の露出、歯間乳頭の退縮、歯の病的移動、そして最終的には歯の喪失を引き起こす。その結果、咀嚼、発音の機能低下のみならず、審美性も低下し、患者の社会生活にも影響を及ぼすようになる。この様な複雑な病態を示す場合、局所の感染、炎症をコントロールするだけでは、問題の解決にはならず患者の歯列、顎口腔機能を再建するには包括的な対応が求められる。インプラントによる欠損補綴は、その確実な咬合支持能力によって、残存歯の負担を軽減し、矯正治療の固定源を提供する。 矯正治療は歯列不正を修正し、スペースマネージメント、歯軸の改善、アンテリアガイダンスの確立に寄与する。また、残存する付着機構の位置を三次元的コントロールすることにより、歯槽骨、軟組織の形態を調整可能で、歯周組織再生療法の条件改善や、審美性の獲得に非常に有効である。 

 しかし実際の臨床において歯周治療、インプラント治療、矯正治療を包括的に実施し、複雑な病態を示す歯周病患者の治療を成功に導くためには、以下に示す様な考慮点が存在する

インプラント治療に関しては、

保存抜歯の判断、欠損部歯槽堤の再建、動揺の増加した残存歯との調和、顎骨の加齢的変化、インプラント周囲炎への対応などが挙げられる。

矯正治療においては、

再生療法を含む歯周外科、インプラント外科などの処置のタイミングが非常に重要となる他に、インプラントを固定源として応用する場合、インプラントのポジションを適切に予測することが求められるが、実際の臨床においては、容易なことではない。本講演では上記の点について、症例を通して検討したい。

【略歴】 
1988年 広島大学歯学部卒業
    広島大学歯学部口腔外科第一講座
1990年 浜松市内勤務
1996年 静岡県浜松市にて石川歯科開業
2008年5-D Japan 北島一、船登彰芳、福西一浩、南昌宏 と共に設立
現在
5-D Japanファウンダー
日本臨床歯周病学会指導医
日本歯周病学会会員
日本口腔インプラント学会会員
日本補綴歯科学会会員
アメリカ歯周病学会会員 
AO(Academy of osseointegration)会員 
EAED(European Academy of Esthetic Dentistry) affiliate member
OJ(Osseointegration Study Club of Japan) 会長
静岡県口腔インプラント研究会 会長

近著
新版4-Dコンセプトインプラントセラピー
審美性と機能性獲得に必要な組織保存と再建のテクニックとそのタイミング
クインテッセンス出版

Erfolg mit Implantaten in der ästhetischen Zone
Quintessence Publishing, Deutschland

包括的歯周治療におけるインプラント治療のタイミングとマネージメント

根本

 根本 康子(関東支部 表参道デンタルオフィス)

重度に進行した歯周病に起因する、歯の欠損、動揺、傾斜や移動などが全顎的広範囲に及ぶことにより生じる、咬合支持の断絶、適正なガイダンスの欠如、咬合性外傷の増悪などによって、残存する天然歯がさらにダメージを受け、口腔機能が著しく損なわれているケースは臨床的に往々にして遭遇する。

そのような口腔機能の崩壊へのカスケードを食い止めるために、残存歯の喪失した付着を獲得するための歯周組織再生療法は言うまでもなく必要な治療ではあるが、垂直的咬合支持の獲得や、欠損により連続性を失った歯列のコンタクトの回復(水平的、特に近遠心的支持)を図るために、欠損部をインプラントにより修復することは、機能の回復はもちろんのこと、再生療法の予知性を高める上でも、さらには長期的に安定した予後のためにも非常に有用である。

加えて、歯の傾斜の改善や望ましいポジションへの移動を図るための矯正治療や、確実なポケット除去と生理的な骨形態にするための切除療法、清掃性の高い歯周環境に整えるための歯肉弁根尖側移動術、遊離歯肉移植術、結合組織移植術など、包括的に歯周治療を遂行し口腔機能の回復を図り、さらにそれを長期的に安定させる為の多様な治療オプションが必要となるケースも少なくなく、より崩壊が進んだケースでは、インプラント治療を含め各々の治療の難易度も高くなり治療計画も複雑になるであろう。これら再生療法、切除療法、その他歯周外科手術、インプラント治療、矯正治療を、どの順番でどのタイミングで行うべきか、治療期間中の患者のQOLも考慮しつつ、治療過程において包括的にマネージメントしていくことは、目的とする治療のゴールに到達するために非常に重要である。

今回は、症例を通して、包括的歯周治療におけるインプラント及び各治療のタイミングとそのマネージメントについて考察したい。  

【略歴】

1992 新潟大学歯学部卒業
1994 新潟大学歯学部第一補綴学講座 研修医終了
2003 やまぶき歯科開設
2011 表参道デンタルオフィス開設
2017 新潟大学大学院歯周診断再建学分野 博士課程 終了
JIADSペリオコース講師 インプラントコース講師


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<会員発表>

咬合の関与が疑われた広汎型重度慢性歯周炎症例

三上リサイズ

三上 諭(関東支部 三上歯科医院)

【緒言】
本症例は, 広汎型重度慢性歯周炎に, 不正咬合に起因する咬合干渉がさらに悪影響を及ぼしていると考えられた. これらの問題点の解決として, 歯周基本治療・矯正治療および歯周外科治療を行い, 補綴治療により咬合の回復を図った症例を報告する。

【症例の概要】
患者:48歳女性、非喫煙者 初診:2012年11月 主訴:左の下の歯が腫れた
現病歴:主訴の当該歯は35で, 片側遊離端義歯(36,37欠損)の支台歯となっている. 過去に34,35支台の延長ブリッジを装着するも, 調子が悪くなり, 片側の義歯を装着したとのこと. 

【診査・検査所見】
臼歯部を中心に深いプロービングポケットデプスが認められた. デンタルX線写真からは, 主訴である35や臼歯部にくさび状骨欠損の存在がみられた. 口腔内初見は, 前歯部の叢生を伴うAngle分類Class II不正咬合. 咬合平面は乱れており, 側方滑走は全くできなかった. 

【診断】
広汎型重度慢性歯周炎

【治療経過】
歯周基本治療において, 16口蓋根および26は保存不可能と診断し抜歯に至った. 35は保存が危ぶまれたが, 過重負担から解放し, 動揺の改善傾向がみられた時点で歯周外科手術を行った. くさび状骨欠損が存在した14, 24にも同じく歯周外科を行なった. プロービングポケットデプスおよびBOPの改善が得られた後, 咬合干渉の問題を解決するため, レベリングを主体とした矯正治療を行い, プロビジョナルレストレーションにて側方運動がスムーズに行えるように調整した. 36,37欠損部の補綴は, 支台歯の過重負担の兆候を確認しつつ, コーヌステレスコープ義歯にて咬合回復を図り, 左右第一大臼歯までの咬合支持を得た. 現在1~2ヶ月ごとのSPTを継続している.

【略歴】
2006年 日本歯科大学新潟生命歯学部卒業
2009年 松崎歯科医院勤務
2012年 三上歯科医院勤務


開咬を伴う重度歯周炎患者に対し包括的に対応した1症例

星野

星野 修平(関東支部 星野デンタルクリニック)

キーワード:歯周基本治療 歯周組織再生療法 矯正治療
Ⅰ.はじめに
咬合性外傷を伴う重度歯周炎患者に対し炎症のコントロールのみでの改善及び長期安定は
難しいと考えられる。開咬の患者では咬合調整のみでの力のントロールが難しいため、
歯周組織再生療法後矯正治療を行う事で歯周組織の安定を図った症例を報告する。

Ⅱ.症例の概要
患者:43歳女性
初診:2015年6月
主訴:歯周病を治したい・前歯で咬みにくい
全身既往歴:なし 
歯科的既往歴:歯科治療10年ぶり

Ⅲ.診断名
咬合性外傷を伴う重度広範型慢性歯周炎  StageⅢ GradeC

Ⅳ.治療計画
①    歯周基本治療
②    再評価
③    歯周外科処置
④    再評価
⑤    歯列矯正
⑥    メンテナンス・SPT

Ⅴ.治療経過
①    歯周基本治療
術前の診査から非抜歯による矯正治療を計画していたため、骨吸収が大きい#15は
可能な限り保存の可能性を探りながら基本治療を進めていった。
基本治療中は咬合性外傷のコントロールのため、TCHの改善及びナイトガードを作成した。患者のモチベーションの向上にともない、PCRは79%から11%  BOP は80.4%から20%まで改善した。4mm以上のポケットも30%から12%へ改善した。

②    歯周外科
歯周基本治療の反応も良く外科処置によりさらなる改善を望めると考え、垂直性骨欠損が見られポケットが残存している部位には治療計画どおり歯周外科処置を行う事とした。
#15・12・22・33はエムドゲインゲル®︎と骨補填材の併用、遠心にⅡ度の分岐部病変を認める#26はエムドゲインゲル®️と骨補填材及びメンブレンを併用し改善を図った。#47は骨縁下欠損も3mm以下となだらかのため骨整形にて対応した。

③    矯正治療
歯周外科後の再評価にて歯周組織の改善を認めたため矯正治療を開始した。
上顎大臼歯部及び下顎7番遠心にTADを埋入し、上顎大臼歯部の圧下、下顎を遠心
に移動し非抜歯にて開咬の改善を図った。
また矯正期間中は月に一度プロフェッショナルケアを行なった。

④    再評価
一連の処置後、再評価にて全顎的にプロービングは安定し、BOPも改善された。
またデンタルエックス線写真にて骨吸収像も改善し歯槽硬線も明瞭化しており歯周組織は安定していると考えSPTへと移行した。

Ⅵ.考察およびまとめ
本症例は咬合生外傷を伴う重度歯周炎患者に対し、歯周基本治療、歯周組織再生療法にて徹底した
炎症のコントロールを行うと共に、矯正治療により咬合性外傷への対応を行った。
本症例に対し包括的な対応を行なったことにより歯周組織の安定が図られたと考える。
今後も継続的なメンテナスにて注視していきたい。

【略歴】
日本大学松戸歯学部卒業
松島歯科 勤務
デンタルクリニックアレーズ 銀座 勤務
星野デンタルクリニック 開業


限局型侵襲性歯周炎に対して歯周治療および側方ガイドの調整で対応した一症例

長嶋

長嶋 秀和(日本大学歯学部附属歯科病院歯周病学講座)

 Ⅰ.はじめに
侵襲性歯周炎は「歯周炎を除き全身的に健康であるが、急速な歯周組織織破壊(歯槽骨吸収、アタッチメントロス)と、家族内発症を認めることを特徴とする歯周炎である。」と定義されている。本ケースの患者は、侵襲性歯周炎の特徴である、前歯・臼歯の急速な歯周組織織破壊に加えて、左右で進行の違いを認めた。咬合分析の結果、左右の咬合関係に差異を認めたため、咬合が歯周病の増悪因子として作用していると考え、歯周治療に加えて側方運動時のガイドの調整を行った。結果、良好な治癒経過を示したため報告する。

Ⅱ.症例の概要
初診時18歳男性。16、14、24、26、42に重度の歯周組織破壊を認めた。右側方運動時に 16、14、12、11、41、42、44、46 でガイド、左側方運動時 23、43 でガイドしていた。家族歴において、両親ともに全身疾患の既往はなく、義歯などは装着しておらず、今まで歯肉からの出血などの、歯周炎を疑う症状はないとのことであった。

Ⅲ.診断名
限局型侵襲性歯周炎

Ⅳ.治療経過
初診より歯周基本治療を行い、病因の除去を行った。SRP 後の治癒を待った後、CRビルドアップを含めた咬合調整を行った。基本治療後の歯周組織検査において、16、14、24、26、37 に 4~6 mm の PD が残存した。PD 4mmかつBOP陰性部位は経過観察とし、PD 4 mm 以上かつ BOP 陽性であった 16 にルートリセクション、26 にフラップキュレッタージを行った。再評価後、SPTへと移行した。現在 SPT移行後3年経過し、経過良好である。

Ⅴ.考察およびまとめ
歯周病の主因子がプラークであることは疑いようがないが、その進行に左右差を認めた場合、歯周炎以外に増悪因子が関与している可能性があると考える。今回は、歯周治療に加えて咬合調整を行う事で良好な反応を示した。処置を行う際、原因の考察を行う事が重要だと考える。

【略歴】
2012年 日本大学歯学部歯学科卒業
2017年 日本大学大学院 博士号取得(歯周病学専攻)
2018年 日本大学歯学部附属歯科病院歯周病学講座 専修医

所属学会
日本歯周病学会 専門医、日本臨床歯周病学会、日本歯科保存学会、日本顕微鏡歯科学会、日本本口腔インプラント学会、日本臨床歯科学会

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