2018年9月21日(金)

ウィーン大学サマースクール2018 参加レポート

VieSID主催のサマースクールとは、オーストリアンナソロジーをベースとしたさまざまな分野のドクターによる症例報告や研究発表等、ディスカッションを交えながらの学術大会で、ウィーン大学にて毎年開催されています。今回は参加レポートとしてまとめました。

ウィーン大学サマースクール2018 参加レポート

 2018年7月25日~29日、ウィーン大学歯学部にてVieSID (Vienna School of Interdisciplinary Dentistry)主催によるサマースクールが開催されました。 
 VieSIDは元ウィーン大学歯学部補綴学教授 ルドルフ・スラビチェック先生がウィーン大学を退職された後、スラビチェック先生のフィロソフィーを基に歯科医療関係者を教育する機関として設立されました。VieSIDが主催するマスターコースにはスラビチェック先生のフィロソフィ―を学びに世界中からドクターが参加しています。


 VieSID主催のサマースクールとは、オーストリアンナソロジーをベースとしたさまざまな分野のドクターによる症例報告や研究発表等、ディスカッションを交えながらの学術大会で、ウィーン大学にて毎年開催されています。オーストリアンナソロジーの始祖であるルドルフ・スラヴィチェック先生のフィロソフィーに傾倒し、尚且つ臨床の第一線で活躍するドクターが世界中より集結します。また今回も日本からは佐藤貞雄先生が主催者の一人として講演等で登壇されておりました。


 今年は去年に比べ大変盛況で、会場である講堂もほぼ満席状態となっておりました。初日開始時より非常に盛り上がりのある雰囲気を感じることが出来ました。

 

オーストリアンナソロジーとは

 オーストリアンナソロジーとは、1980年代からスラヴィチェック先生が提唱されている新しい咬合論で、生体機能を重視した「スカンジナヴィア学派」と機械的咬合論である「ナソロジー」を発生学的な要素・進化の過程や古代人の分析に基づく統計から融合させ、自然にあるべき咬合患者の個人個人の口腔内に再構築するというものです。

人間の咀嚼システムの構成要素として、「頭蓋・下顎系(CMS:Cranio-Mandiblar System)」、「神経筋機構(NMS)」、「咬合」が挙げられます。咀嚼器官の機能としては「咀嚼」「発音」だけでなく、「呼吸」「姿勢」「審美」があり、また「ストレス管理」が挙げられます。そして、患者の骨格に合わせた咬合平面・下顎位と、後方歯から順次離開する咬合(シークエンシャルオクルージョン)を臨床実践を含めながら考えていく学問になります。

実際の臨床としては、cadiaxによる顎運動計測セファロ分析上下マウント模型による模型診査から問題点を抽出し、診断結果より咬合平面・下顎位を決定、順次離開咬合のワックスアップあるいは矯正治療を行っていくという流れとなっております。

 

サマースクール2018トピック

2018年のトピックとして、以下のものがあらかじめ提示されておりました。

TMD /姿勢/咬合
ローアングルクラスIIIトリートメント
歯科矯正治療におけるケースフィニッシュの問題
補綴リハビリテーションにおけるエステティックと機能
咬合医学の現在
総合的歯科医学
複雑な顎関節症症例
テーブルクリニック/ディスカッションフォーラム
ポスターセッション・アワード

 

サマースクール開会

1日目 午前
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サマースクール開会。C. Slavicekによる挨拶。

Interdisciplinary Dentistry and Orthodontics(総合的な歯科医療と矯正歯科治療)
・Nelson Oppermann(Brazil)
 「Some archwires suggestions for customized finishing to the upper and lower incisors」
・Heloisa Proenca(Portugal)
 「Beyond the limits」
・Miguel Assis(Purtugal)
 「The common mistales in the MEAW treatment」
・Petros Kokkinos(Cyprus)
 「Early interbention for a healthy periodontium, arch development and elimination of extraction,correction of skeletal discrepancies and prevention of canine impaction」
・Barbara Barbierato(Italy)
 「What do teeth have to do with dyslexia?」

矯正歯科治療におけるベーシックな内容からアドバンスまで、わかりやすく大変興味深い講演でした。
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Nelson Oppermann(Brazil)矯正治療における様々なメカニクスの解説。

 

総合的な歯科医療と顎関節症

1日目 午後

Interdisciplinary Dentistry and TMD(総合的な歯科医療と顎関節症)
・Cristina Herrera(USA)
 「Integrating the International Diagnostic Criteria for Temporomandiblar Disorders(DC/TMD)into the standardized Slavicek Diagnostic Workflow」
・Miles Guyton(USA)
 「Malocclusion and Sleep Quality Evaluation by Measuring Changes in the Autonomic State During Sleep」
・Alexander Hacker(Germany)
 「How to show respect to biology and occlusal function with oral implants」
・Alain Landry(Canada)
 「For Definitive Therapy:which cranio-mandibular(maxillo-mandibular)relationship to choose:Refernce Position(R.P.) or Therapeutic End Position?」
・Ian Tester(Canada)
 「Back to the future:Occlusion-past lessons,present wisdom,future success」

顎関節症と関連することについて、様々な視点から論じられました。睡眠との関係や、下顎位、また咬合に関しての考察を交え、著明な先生方が発表されました。
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ガンマ社による展示ブース。キャディアックス、ギルバッハの咬合器、スラヴィチェック先生の著書等が展示・販売されていました。

 

ローアングルⅢ級治療

2日目 午前中

Low Angle Class III treatment(ローアングルⅢ級治療)
・Sadao Sato(Japan)
 「Introduction and treatment approach to LowAngle ClassⅢ Treatment」
・Roberto Velasquez(Colombia)
 「Early treatment of the ClassⅢ Low angle malocclusion.」
・Heike Kämer(Germany)
 「ClassⅢ Low Angle Treatment – A Non-surgical Vertical Compensation Approach」
・Malgorzata Tomasik(Poland)
 「Treatment of Low Angle ClassⅢ case」
・Monica Casadei(Italy)
 「Skeltal Cl Ⅲ tendency low angle case with severe bruxism.A combined Orthodontic and Prosthodontic treatment」

オーアングルⅢ級の治療にテーマを絞った講演でした。佐藤先生のⅢ級治療のオープニングに加え、早期治療、非外科的治療等、コンセプトに基づいて大変明確なお話しばかりでした。どのように治療を進めていくべきか、佐藤先生のサマリーも大変勉強になりました。

 

複雑な顎関節症症例ディスカッション-セッション1

2日目午後

Complex TMD Cases discussion - Session 1(複雑な顎関節症症例ディスカッション-セッション1)
・Alejandra Londono(Colombia)
 「Cranio-Mandiblar treatment of a Post-Orthodontic Malocclusio」
・Ken Tajima(Japan)
 「Multidisciplinary approach for CMD-patient」
・Gerd Reichardt(Germany)
 「The targeted respositioning of a chronically dislocated joint using the flatguidance splint」

あらかじめ参加者に配られたデータを予習してからの、ディスカッションを交えた講演でした。当然参加者は皆コンセプトを理解しているので、ディスカッションもスムーズに進行した印象でした。


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スラヴィチェック先生90歳誕生祝い。サマースクール参加者でハッピーバースデーの合唱となりました。

 

咬合医学の現在

3日目 午前中

Update in Occlusion Medicine(咬合医学の現在)
・Georg Mayer(Germany)
 「Crani Mandiblar Function related to other Medical Disciplines – the importance of dental occlusion」
・Gilles Lavigne(Canada)
 「Syntheses of research on bruxism: understanding mechanism,achieve updated diagnosis and management」
・Sadao Sato(Japan)
 「Occlusion medicine and it’s connection to the Polyvagal Theory」

咬合に関して、顎関節、ブラキシズム、ポリヴェーガル理論についての講演でした。解明されていない咬合について、いろいろな考察がなされており、今後の歯科医学を考えていく上で大変興味深い内容でした。
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ポリヴェーガル理論について講演する佐藤貞雄先生。

 

顎関節症/ポスチャー/咬合

3日目 午後

TMD / Posture / Occlusion(顎関節症/ポスチャー/咬合)
・Mariano Rocabado(Chile)
 「Transverse occlusal plane dependent on the congruent relation of the cranio vertebral joints and progression of synovial temporomandibular joints altered function.The Craniovertebral Occiput, Atlas and Axis Centric Relation Concept. Relation to the Horizontal and Transverse Occlusal Plane and Progression of TMJ Patology.」
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Dr.Mariano Rocabado(Chile)頸椎と咬合、顎関節、全身との関係を術前術後の全身写真やエックス線写真を用いて大変興味深い講演でした。

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毎日ウィーン大学食堂にてランチ。肉が入っている標準メニューとベジタリアン向けが選べます。

 

ホイリゲにて懇親会

夜 ホイリゲにて懇親会
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Mayer am Pfarrplatzというホイリゲで懇親会が行われました。ここはかつてベートーヴェンの家だった場所を改装し、現在ホイリゲとして営業しています。

ホイリゲとは、オーストリアにおけるワイン酒場のことで、ワイン作り酒屋がワインと家庭料理をふるまうというものです。各国の先生方と親睦を深めました。

「乾杯」の仕方や言い方の違いを話し合うだけでも盛り上がり、とても楽しかったです。

 

補綴的リハビリテーションにおけるエステティックと機能

4日目 午前中

Esthetics and Function in Prosthetic rehabilitation(補綴的リハビリテーションにおけるエステティックと機能)
・Robert Sader(Germany)
 「Ethics&Esthetics」
・Diether Reusch(Germany)
・Simona Mizgiryte(Lithuania)
・Aiste Gintaute(Lithuania)
 「Concepts in Esthetic-Functional Rehabilitation」
・Stefan Schunke(Germany)
 「Dentofacial Analysis」

エステティックに関連することについての講演でした。エステティックとはどうあるべきか、という講演に始まり、どの様に機能的なものも含め治療をゴールに導いていくか、普段耳にしないようなことも聞くことが出来ました。

 

新たなテクノロジーでのエステティックと機能

4日目 午後

Esthetics and Function with focus to new technologies(新たなテクノロジーでのエステティックと機能)
・Stefan Schunke(Germany)
 「Phonetic Analysis」
・Nazzareno Bassetti(Italy)
 「Esthetic,function and long-term stability in multidisciplinary rehabilitation」
・Markus Greven(Germany)
 「Occlusion-influenced Functional Parameter of the Masticatory System」
・Fatima Dazalaeva(Russia)
 「Function and Esthetic.New concept of collaboration」
・Nikolai Kosyrev(Russia)
 「CAD/CAM and Occlusion: A critical report」

エステティックというキーワードのもと、ヨーロッパの先端を行く先生方の発表を聞くことが出来ました。特に、イタリアのバセッティ先生の講演は大変面白いと感じました。


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ポスターセッションの様子。どのポスターも興味深い発表で、内容もバラエティーに富んでおりました。

普段あまり目にすることもないデジタルポスターもあり、注目を集めておりました。ポスター設置後、サマースクール4日目にアワードが発表・授与されました。

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フロイトも通ったといわれるカフェツェントラル。仲良くなったドクターたちでここに足を運び、ウィーン料理に舌鼓を打ちながらディスカッションの続きを行います。写真はウィーン伝統料理のシュニッツェル。

 

テーブルクリニック

5日目午前

Table Clinics(テーブルクリニック)
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テーブルクリニックにおけるスラヴィチェック先生のハンズオン。

 

総合的な歯科医療

5日目午後

Interdisciplinary Dentistry(総合的な歯科医療)
・Georg Meyer(Germany)
 「Physiolosic Centric Relation between Upper and Lower Jaw」
・Mikhail Soykher/Dariya Shershneva(Russia)
 「Etiology and pathogenesis of dysfunctional problem in our population」
・Filipe Salgueiro/Francisco Espinheira(Portugal)
 「Posture,Occlusion and Balance」
・Alessandro Carmignani(Italy)
 「The rehabilitation of a patient affected by severe periodontitis and habing a class 2 div. 1. How to make a reliable wax-up and precisely transfer the provisionals」
・Benedikt Sagl(Austria)
 「Development of a Computational Model of the Masticatory Region for the Investigation of Temporomandibular Joint Loads」

大変多岐にわたる内容で、聴きごたえのある講演でした。各々の思想・手技にて、実際の臨床の真剣な取り組みを感じることが出来ました。


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C. Slavicekによる閉会の挨拶。

 

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