アメリカではメタルボンドセラミックはもう古い!?接着歯学の最前線
セラミック修復は日々の臨床で必ず行っていらっしゃる治療かと思います。
このセラミックの修復は、日々新しい材料や接着技術が開発され、世界的にも注目されている分野です。
今回は東京医科歯科大学う蝕制御学分野の高垣智博先生に、接着歯学の最新情報についてお話頂きました。
アメリカの接着歯学最前線
-世界的な接着歯学のトレンドを教えてください。
世界的にはニケイ酸リチウムガラスセラミックが主流であることに変わりは無いのですが、
ここ数年でジルコニアセラミックスの臨床応用が進んできています。
米国での近年の報告では、前歯部ではニケイ酸リチウムガラスセラミック、臼歯部ではジルコニアセラミックの使用が最も多く、メタルボンドはほとんど使われなくなってきています。
日本でよく使われているメタルボンドセラミックがほとんど使われていないとは驚きです。なぜなのでしょうか?
アメリカでは優秀な歯科技工士の技工料が非常に高価です。
そのため、メキシコなどの国外に技工を安く依頼し、完成した技工物をアメリカへ戻すということが多くなってきています。
しかし、メタルボンドセラミックのような、技工士の腕が問われる技工物は、どうしても安く作ると質が悪くなってしまいます。
そのため、CAD/CAMで作ることのできるガラスセラミックやジルコニアが主流となってきたのです。
デジタル技術の発達により、ある一定のクオリティが担保された技工物が簡便に制作出来るようになったということが、アメリカでメタルボンドセラミックが使われなくなった理由の一つです。
また、金属価格の高騰も背景としてあります。
日本のセラミック修復の現状
アメリカで主流となっているガラスセラミックやジルコニアは、日本ではまだ普及半ばといった印象です。
そうですね、それにはそれぞれ理由があります。
まず、ニケイ酸ガラスセラミック。
これは、接着にフッ酸を使用しなければならなかったというのが、日本で敬遠されていた理由です。
ご存知の通り、フッ酸は猛毒です。また、国内ではチェアサイドでの使用認可がおりてはいません。
そのため、日本では、フッ酸のような危険な薬品を個人輸入して使用しなければなりませんでした。
しかし、近年、イボクラールビバデント社から「モノボンドエッチアンドプライム」という製品が発売となりました。
これは、フッ酸を使わずに、しかもワンステップでニケイ酸ガラスセラミックが接着できるという画期的な製品です。
この製品は、フッ酸が診療室で使えない日本にこそ、必要な製品なのではないかと思います。
ジルコニアセラミックに関しては、従来の素材は光透過性が無く、真っ白の色をしていたため、
審美性が悪いというのが普及を妨げていた原因の一つでした。
しかし、高透光性ジルコニアの開発によって、審美性の高い修復が陶材なしで可能となり、この問題はかなりのレベルまでクリアされてきています。
もう一つ、ジルコニアが敬遠されていた理由は、接着が難しいと考えられていたということです。
しかし、最新の接着歯学では、ジルコニアもきちんと接着をすることが出来るということが分かってきています。
接着歯学の研究とは?
ニケイ酸ガラスセラミック、ジルコニアのどちらも、接着技術の発達によって、簡便に接着することが可能になったということですね!
その通りです。しかし、まだどちらも新しい技術であり、色々な接着材料が発売されているために、現場では混乱が起こっています。
歯科医師も、歯科技工士も、どうしたらいいかきちんと整理して理解している人はまだ多くありません。
高垣先生はどのようなご研究をされているのでしょうか?
ニケイ酸リチウムガラスセラミックやジルコニアの接着材料に関して、どの製品を、どの方法で接着することが最も優れているかということを、研究しています。
実際に実験を行うことで、良いものは良い、効かないものは効かないということを、フェアに評価しています。
多くの接着材料があり、中には紛らわしい名前の製品もありますので、それぞれの製品はどこまで使っていいのか、どのような場合には使ってはいけないのか、ということを方程式のように整理してまとめられるようにしています。
医科歯科大学う蝕制御学分野の高垣智博先生に、接着歯学の最新情報についてお伺いしました!
セミナー情報
高垣先生の貴重なご研究の結果は、11月20日(日)に行われる「ボンデットレストレーションの実際」の講演会でお聞き頂けます。
セラミック修復は日々の診療で必ず行うもの。
ぜひ、新しい材料の接着方法について最新の情報を仕入れ、明日からの臨床に役立てましょう。
定員に達し次第申し込みは終了致しますので、お早めにお申込みください。