OJミッドウィンターミーティング2019《参加レポート》
目次
超高齢社会における口腔インプラント治療のあり方 ―最期まで患者に寄り添うために―
Clinical challenge in minimal invasive & comprehensive dentistry
OJとは
Osseointegration Study Club of Japanの略で狭い範囲でディスカッションを行うのではなく日本の将来を考え、お互いに情報交換を行う事のできる場を持ちたいということから2002年より始まった団体である。
2月のミッドウインター、7月の年次大会、9月のロスアンジェルスでの OSCSC との合同ミーティング、と年3回の行事の中で会員の知識と臨床の質を高めるということを目的に、本当の意味での歯科臨床におけるインプラントの位置づけを確立していく活動をしている。
OJに初参加してみて
2019年2月11日にベルサール九段にて約200名の参加者とあらゆる有名グループのトップの先生方が一堂に集まりグループの垣根なく意見をぶつけ合う雰囲気は凄く独特な緊張感を味わった。
また順位のつく大会と言うこともあり全ての演者が本気でこの日の為に相当な時間をかけて準備してきたのだと感じた。
発表内容としましては大きく分けて
①口腔内スキャナを利用したCAD/CAMシステムによるインプラント埋入位置の設定、その後の補綴装置の設計といったこれからますます注目されるであろう分野の優位性を感じさせるもの。
②審美領域に対するインプラント治療の工夫。抜歯即時埋入法や埋入部位にあえて歯牙片を残すsocket shield techniqueを用いたもの。
③大きく硬軟組織を喪失してしまった口腔内に対するインプラントアプローチの方法。
④以上のことを総括し、顎顔面分析、咬合診断を行い、審美・機能を兼ね備えた包括的アプローチをおこなったもの。
⑤ライフステージを考慮したインプラント治療の考え方。
が挙げられる。
全ての発表において感じられたことは、
いかに患者負担を減らし、しかし丁寧で確実なインプラント治療を用いて患者の満足を得られるかを模索し結果を出そうとしていることである。中にはまだまだ議論の余地がある分野もあった。
超高齢社会における口腔インプラント治療のあり方 ―最期まで患者に寄り添うために―
その中で特に今回の会で注目されたのは教育講演で窪木拓男先生がお話しされたように、日本が抱える問題である超高齢化社会におけるインプラント治療のあり方だと感じた。
インプラント治療を受けた時は元気だった人も、年を重ねるにつれご自身のケアが十分に行えなくなり、その周りで介護をなさる方もインプラントに対してどうケアを行えば良いのか分からない。
インプラントが感染源となりその患者の生命を脅かすことすら起こりうることを治療を行う歯科医師は考慮して治療を行わなければならず、すでにそのような問題は起き始めているので対応策も身につけなければならない。
治療のLongevityとは。行った治療が大きなトラブルなく経過すること。それは勿論理想である。しかし再介入の必要性が迫られることは多々あるだろう。
私たち歯科医師は治療を行った患者にどこまで寄り添っていけるだろうか。いつまで経過を追い、治療の責任を負えるだろうか。
Longevityを語るのであればもう一度この事を考えなければいけない。
インプラント治療は医療に大きな恩恵をもたらした。患者のQOLを大きく向上させた。だからこそすでに多くのインプラント治療済み患者がいる事。その事を考えさせられる会であった。
Clinical challenge in minimal invasive & comprehensive dentistry
今回会員発表で1位に輝いた内山徹哉先生の発表はインプラント治療を用いた包括的治療についてであった。
インプラント治療は骨へのインテグレーションが起きることが大きなメリットである反面、埋入位置や角度を誤るとかえってその後の治療が難しくなる。場合によっては一度除去せざるを得ない。
全顎的治療でインプラントを行う際は特に慎重さが必要である。
内山先生はほぼ全ての患者に対しMaxillofacial Analysis法を用い、顎顔面に調和した歯科治療を行う。これにより審美、機能共に満足する結果が得られる。
今回の症例は欠損に加え、咬合力が強いために咬合崩壊が起きた患者に対し全顎的包括治療を行った1症例である。
上記の方法を用いて顎位・咬合高径の設定を行いインプラント埋入位置を慎重に診断し、同時に失われていたアンテリアガイダンスを天然歯を一切削ることなくラミネートベニアにて獲得した。
またこのような症例において大切なのがプロビジョナルレストレーションによってしばらく経過を追い何かしらのトラブルが起きてこないかを確認しなければならない。
インプラント部位においても今後周囲炎を起こさせない為にも大切なステップである。
本症例は1年半プロビジョナルでチェックを行い大きなトラブルがなかった為、最終補綴物へと移行した。
今回の症例で感じたことは欠損があるからそのままその部位にインプラントを埋入するのではなく、なぜその部位に欠損が生じ、その原因を追求し解決した上で、もしくは解決する手段としてインプラントを用いるべきであるということである。
インプラント治療は歯科治療に大きな恩恵をもたらしたが、そのインプラントが超高齢化社会を迎える日本で様々なトラブルの原因となっていることも事実である。
である為安易に行うのではなくその患者にとって最善の診断と準備が必要である事を強く感じた。
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Doctorbook編集部