【紹介コラム】原因歯不明の急患対応|あなたならどう診断する?
本コラムは吉岡隆知先生の講演動画「原因歯不明の急患対応|あなたならどう診断する?」に関する紹介です。
原因歯不明の急患対応|あなたならどう診断する?
患歯がどこか分からない疼痛を主訴に来院する急患がいた場合、患歯特定に困難を極める事がありますが、症状や状況を一つ一つ根気よく紐解いていけば、患歯特定に繋がります。経緯を元に状況を整理してみましょう。
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症例は61歳女性、原因歯不明の急性症状です。 2024年3月に急患で来院されました。
過去、2021年4月に吉岡デンタルオフィスにて上顎右上第二大臼歯(右上7番)の治療が終了しています。
以下は他院での治療経過です。
2023年に右上がしみることから、知覚過敏処置を受けた後、ワクチン接種を期に原因歯が分からない位の激痛になり、右上7番の再根管治療を受けるものの、改善が見られません。続いて右上6番の抜髄となりましたが、痛みは変わらず腫れもでてきました。
そこで、右上7番が抜歯されましたが、歯肉の腫れが引かないため、医院を替え、吉岡デンタルオフィスを受診されました。
途中、耳鼻科を受診し上顎洞炎の疑いでCTの必要性を指摘されていますが、歯科医院でCTを撮影しています。
因みに、抜歯された右上7番は、3年前に吉岡先生が根管治療した歯です。
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さて、皆さまはここまでの経緯からこの状況が分かりますか?
これが分かれば、エンドの急患対応に自信を持って良いと言えます。
治療経緯から分かること
3年前に行った右上第二大臼歯の治療の経緯と、抜歯前後のデンタルやCTを比較してみましょう。
3年前は問題がなかった右上第一大臼歯は失活していました。
経過のヒントをみてみましょう。
帯状疱疹ワクチン接種と疼痛出現は、たまたまフレアアップが重なっただけで、関連はありません。
そこで、明確なヒントとなるのが、「どこが痛いかわからない」という訴えです。
これは急性歯髄炎である可能性があります。
急性歯髄炎の場合は原因歯が不明な事も多く、探す必要があります。
この場合、第二大臼歯は既に処置してあり失活歯となっているので、原因歯は第一大臼歯が疑われます。
原因歯が分からずとりあえず根管治療をするのは不要な処置で、1番よくありません。
右上第一大臼歯治療後に腫脹と疼痛が出たのは、フレアアップと考えられるため、第二大臼歯の抜歯は不必要ではないでしょうか。
因みに、患者様が腫れと言っていたのは、瘻孔の事でした。
この場合、瘻孔造影をして原因歯をはっきりさせる必要があります。
急性症状のある患者さんが来た時は、歯髄炎を見逃さない事、根拠なく再治療を行わない事がポイントです。
冷静な判断をするためにも、ぜひ動画をご視聴ください。