【人気動画】オーラルフレイル対策を見据えた 口内フローラの全身への影響 ~科学的根拠を伴った改善対策~
今回は、昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座口腔衛生学部門・教授・弘中洋司先生による口腔内細菌とオーラルフレイルに関連した動画です。
高齢化社会となった今、歯科医師がすべきことや歯科医師として地域の中でどのような立ち位置でいれば良いのか指南されています。
●オーラルフレイルの概念
日本歯科医師会が「8020運動」を推奨してから年月が経ちました。
厚生労働省の「歯科疾患実態調査(平成28)」をみると、80歳で20本以上自分の歯を持っている人は51.2%でした。
まさに2人に1人となっています。
しかし、これは検診会場へ「自分や家族の付き添いで来た」人です。介護施設へ入居している人や寝たきりの人は含まれていないため、実際の数値とは異なる場合があります。日本は少子高齢化が問題となっています。
今までの歯科治療は「治療中心型医療」でしたが、これからは高齢者の増加により「管理・連携型医療」が必要とされています。
中でも歯科医師が管理すべきなのが「口腔機能」です。
口腔機能は年齢とともに変動します。
子供の頃は成長し、成人で安定し、高齢になると低下するのです。
平成30年に医科の新しい疾患として口腔機能低下症という概念が誕生しました。
口腔機能維持のためにも子供へしっかりとした咀嚼運動の学習と、高齢者の機能低下のトレーニングが必要となりました。
日本歯科医師会ではオーラルフレイルという言葉を発表しました。
オーラルフレイルとは、身体の衰えの一つとして口腔機能が低下するものです。
具体的には滑舌の低下や食べこぼし、口腔の乾燥などから始まり咀嚼障害や嚥下障害を招くことがわかっています。
日本老年歯科医学会では、口腔機能低下症の前段階としてオーラルフレイルが存在するという認識を持っています。
●腸内細菌と口腔内細菌
口腔機能低下症の中には口腔の不潔状態も関係していきます。
弘中先生は口腔内細菌について研究を進めました。
口腔内には500~700種類の細菌が存在します。
その中でも歯周病との関連が深い細菌はレッドコンプレックスやオレンジコンプレックスなどと呼ばれています。
歯周病原因細菌は口腔だけでなく、全身へ悪影響を及ぼすことがわかっているのです。
人間は1日におよそ1000億個もの口腔内細菌を飲み込んでいます。
飲み込んだ細菌の中でも、歯周病菌で有名なP.gingivalisは腸内細菌叢を変化させて、全身的な炎症を起こすことが近年の研究でわかっています。
さらに、大腸がん患者の腸内細菌叢から口腔内細菌が検出されたという論文も近年発表されています。
ある海外の研究者は0歳~104歳までの健常者における腸内細菌叢がどのようになっているのか調査しました。
結果、高齢者の腸内から口腔内細菌のPorphyromonas属やFusobacterium属、Treponema属などが発見されたのです。また、日本でも同様の調査を行いました。
歯周ポケット・糞便・舌背の3カ所から細菌を集め、健常者と高齢者の細菌叢の違いを調べました。
結果、歯周ポケットや舌背では細菌叢に顕著な違いを認められませんでしたが、糞便中からは高齢者になればなるほど口腔内細菌が多く含まれていたのです。
この調査からも高齢者の腸内細菌叢へ口腔内細菌が多く含まれているということがわかります。
●口腔内細菌叢の改善
腸内細菌叢への口腔内細菌をどのように解決するのでしょうか。
弘中先生は口腔内細菌のコントロールが鍵だと説明します。
加齢とともに唾液の分泌量は減少します。唾液の減少に伴い、唾液中のラクトフェリンという物質も少なくなるのです。
ラクトフェリンは歯周病菌やカンジダに対して殺菌作用を示します。
ラクトフェリンは他にも感冒症状に対してもリスク低減につながる可能性があるといわれています。
口腔内細菌叢が影響を与えるものの一つに口臭があります。
歯周病細菌だけでなく、常在細菌も口臭の原因となるのです。
口臭抑制にもラクトフェリンが有効的だという調査結果が出ているのです。
口腔衛生状態が良好な状態と不良な状態では、グラム陽性菌・グラム陰性菌の割合が異なります。
先生方はご存知でしょうが、歯周病菌の多くはグラム陰性菌です。
ラクトフェリンと糖タンパク質であるラクトパーオキシダーゼの併用でグラム陰性菌が抑制されることがわかったのです。
一方、病原性の低いグラム陽性菌をはじめとする口腔常在菌はラクトフェリンとラクトパーオキシダーゼの影響を受けないことがわかったのです。
つまり、口腔内細菌叢を維持するためには、唾液の抗菌作用が重要な役割を果たしています。
しかし、唾液量が減少している高齢者においては唾液量を増加させるよりも、ラクトフェリンとラクトパーオキシダーゼを活用することで、口腔内細菌叢が改善されるのです。
●少子高齢化における歯科ニーズ
少子高齢化はすでに日本の社会問題として浮き彫りとなっています。
歯科医療も少子高齢化に合わせて治療のニーズが変わっていくことを理解しなければいけません。
高齢者は全身の機能低下が問題となりますが、歯科医師としてアプローチできる側面を読み取り、時代にあった医療を提供しましょう。
最後に・・・
今回は、オーラルフレイル対策を見据えた口内フローラ全身への影響について、昭和大学 歯学部 教授の弘中祥司先生にご解説いただいた動画をまとめさせていただきました。
研究結果などをもとに分かりやすい動画となっております。是非ご覧ください!
オーラルフレイル対策を見据えた 口内フローラの全身への影響 ~科学的根拠を伴った改善対策~
#1 オーラルフレイルと口腔衛生/口腔内フローラと腸内フローラ
#2 口腔内フローラの改善の試み