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歯科衛生士のための糖尿病セミナー (全4回)

日本の40歳以上の3人に1人は糖尿病罹患者です。糖尿病患者と接する歯科衛生士にとって、歯周病を起こしやすい糖尿病の知識は抑えておくべきポイントになります。 歯科衛生士はもちろん、治療に関わるスタッフ全員が糖尿病患者への接し方を学ぶのにおすすめです。

  • 歯科にとっての予防と患者さんに寄り添う事の大切さについて #1 07:53

    歯科にとっての予防と患者様に寄り添う事の大切さを、歯科衛生士の土屋和子先生にお話し頂きました。

    予防とは何かと考えた時、口腔内のプラーク・歯石だけでなく患者様の生活背景や価値観など多くの事を理解しないといけません。

    『予防医学』とは病気の原因の除去及び発症前の予防を目的とする医学分野です。
    そして、悪い事態が起こらないように前もって防ぐことを『予防』といいます。
    予防をするために現在の状況から将来に何が起こるかを推測することを『予測』といいます。
    推測とは、物事の状態・性質や将来を、部分的・間接的に知り得た事柄や数値から推し量ることです。
    予防医学を行うには予測が必要で、その予測を行うため重要なのが推測です。

    推測を行うには患者様の生活背景・価値観に一歩も二歩も踏み込む必要があります。
    口腔内の状態だけで患者様を診るのではなく、生活背景・価値観に踏み込み患者様を診ていくと予防医学の方向性が変わっていきます。

    本講義では31歳女性の症例をご紹介しながら、患者様へのコミュニケーションの取り方を学んでいきます。

    会社勤務で事務職で病歴も服薬もない患者様です。
    口腔内のプラークコントロールは悪くなく、矯正治療もしています。
    歯に対する価値観は高いです。

    しかしこの年齢でありながら、口腔内の歯はほとんど治療がされていました。
    カリエス(むし歯)になってしまった原因が背景にあるはずです。

    これまで診察を受けたどこの歯科医院でも歯磨きについて聞かれたそうです。
    もちろん歯磨きはしています。

    では「甘いものは食べるんですか?」と聞くと、「甘いものはあまり食べないんです。」という答えが返ってきました。
    ここで「そうですか」と引き下がってはいけません。

    口腔内を鑑みると度々pHが下がっていることが想像できます。
    臨界pH値というのは「これ以上下がると脱灰しますよ」という値です。
    エナメル質の場合、臨界pH値は5.5以下です。
    これだけエナメル質が脱灰している様子を鑑みると、一日に何度もpHが下がったことが想像できます。

    土屋和子先生は患者様の生活背景・価値観に踏み込み、患者様に寄り添う事で自己開示を促しカリエスの原因を突き止めました。
    何が原因だったのでしょう?
    その聞き取り過程を、ぜひ動画を見てご確認ください。

    「糖尿病は血糖値が上がるから怖いのではない。血管がボロボロになり、どんな病気を合併症として発症するかわからないのが怖い」

    という事実を患者様に寄り添いながら伝えるのが大切です。

    人の心を動かすのは物語です。
    身近な物語を伝えて糖尿病がどれほど怖い病気なのかを訴えてください。

    このような寄り添いが歯科にとっての予防に繋がります。

    こちらの動画は2018年6月23日に開催されたDoctorbook academy DHスキルアップシリーズ「歯科衛生士のための糖尿病セミナー」を映像化したものです。ぜひシリーズでご覧ください。

    歯科衛生士のための糖尿病セミナー(土屋 和子先生)
    糖尿病患者を診察するときに知っておきたいこと(富田 益臣先生)

  • 歯周病と糖尿病の相互関係について #2 08:32

    2014年に日本の糖尿病患者数は300万人を超えて、過去最高となりました。
    う蝕(むし歯)の患者数は約180万人、がん患者数は約160万人です。
    300万人という数字からいかに糖尿病の患者様が多いかということが分かります。

    糖尿病患者のほとんどの方がHbA1c(ヘモグロビンA1c)を理解しています。
    「血糖値はどうですか?」と聞くと、大抵の方はHbA1cの値を教えてくれます。

    前回でもお伝えしましたが、糖尿病は血糖値が上がるのが怖いのではなく、合併症になることが怖いのです。

    血糖のコントロールとして歯科医院でも治療の時に気をつけなければいけないことがあります。
    食事の摂取時間、血糖のコントロールは薬でおこなっているのかどうかという点です。
    インスリンそのものを口から摂取して服用することはできません。
    インスリンは注射をしないと体内に入れることができないのです。
    糖尿病の薬の効果はインスリンの効きを良くし、インスリンの分泌を促すことです。
    糖尿病の薬を飲んでいるからといって大丈夫なわけではありません。

    合併症も怖いのですが、糖尿病患者様が低血糖状態になることもとても怖いことです。
    もし低血糖状態に陥った時、効果的なのは栄養ドリンク剤です。
    栄養ドリンク剤はブドウ糖の含有量が多く、すぐに飲めるという特徴があります。

    次に歯周病と糖尿病の関係についてお話してくださいました。

    血液中に糖が多くなると、赤血球の存在する『ヘモグロビン』や、血管壁に存在する『コラーゲン』などのたんぱく質と結合します。
    そして最終糖化産物(AGE)になるのです。
    最終糖化産物は異物のたんぱく質で、マクロファージが抗原として認識し、サイトカインが出されます。

    マクロファージが認識してしまうということが問題なのです。

    歯周組織に最終糖化産物が影響するとコラーゲン繊維(歯肉繊維)が破壊され、白血球の機能低下により歯周病が進行します。
    TNF-α(炎症性サイトカイン)の増加により、炎症の強度と長さの指標となるCRP値が上昇します。
    こうなると肝機能・糖代謝が低下し、糖尿病が進行・悪化してしまいます。
    糖尿病により、マクロファージの機能低下がおきると、結合組織コラーゲンの代謝が異常になります。
    血管壁が脆くなることで創傷治癒が遅くなり、歯周病の発症・進行に影響を与えてしまいます。
    糖尿病によって、歯周病の関連細菌により感染しやすくなるのです。
    特に血液のヘモグロビンをエサにするPg菌が増殖します。
    そして炎症により歯周組織が急激に破壊され、歯周炎が重症化するのです。

    歯周病治療によってTNF-α産生量が低下するため、インスリン抵抗性が改善し血糖コントロールが好転すると考えられます。

    歯周ポケットへの積極的な歯周病治療は、糖尿病の改善が期待できます。
    歯周病治療をした1か月後、HbA1c・インスリン抵抗性・血中TNF-αや歯周ポケット内の総細菌数の有意な改善が認められました。

    歯周病と糖尿病には相互関係がありますが、一方が良くなったからといって、もう一方も良くなるとは限りません。

    糖尿病と全身疾患には関わりがあります。

    血管は3層になっていて、外膜・内膜・そしてその間に中膜があります。
    内膜に血液が固まらなくなるような物質ができた結果、血管内皮細胞が傷ついて血管がボロボロになっていくのです。
    内膜にある血管内皮細胞の働きが非常に重要になります。

    糖尿病の患者様は動脈硬化になる爆弾を抱えているようなものです。
    炎症は慢性化していく、つまり継続していきます。
    負のスパイラルに入って行くのと同じなのです。


    こちらの動画は2018年6月23日に開催されたDoctorbook academy DHスキルアップシリーズ「歯科衛生士のための糖尿病セミナー」を映像化したものです。ぜひシリーズでご覧ください。

    歯科衛生士のための糖尿病セミナー(土屋 和子先生)
    糖尿病患者を診察するときに知っておきたいこと(富田 益臣先生)

  • 糖尿病患者の治療とメインテナンス #3 09:57

    土屋和子先生が2005年から担当している、糖尿病の患者様の例をご紹介してくださいました。
    糖尿病が進行してるので、積極的な治療はしないという治療方針で診ている患者様です。

    下顎前歯部は挺出してきて痛みが出てきたので抜歯をしています。
    根の部分を切断して歯冠の部分だけセメントで付けて接着しています。
    補綴も保険の金属か下顎などはレジンです。

    この患者様は毎月メインテナンスとしてポケットの中のバイオフィルムの破壊を続けています。
    しかし、2013年の8月に虚血性心疾患を発症し、経皮的冠動脈形成手術を受けました。
    その後も毎月プラークコントロールをおこない、バイオフィルムの破壊をポケットの中までずっと続けています。
    咬合も安定するように、度々調整しています。
    しかしカリエスは進行し歯周病も進行するのです。

    これらの抜歯は、患者様が糖尿病の治療などで通ってい病院でおこなっています。
    何かの問題があると困るので、歯科医院ではおこなえないのです。

    糖尿病の患者様をメインテナンスで診るには『爆弾を抱えてるかもしれない』という認識を持つことが大事です。

    糖尿病は全身の血管をボロボロにします。
    歯周病・カリエスの発症・進行そして感染しやすい易感染性など、口腔への影響を理解し伝える必要があります。
    検査をおこない要検査である場合、放置しないよう患者様に理解を求めましょう。

    次に糖尿病を疑って検査を勧めた患者様のお話をしてくださいました。

    60代の女性です。
    2017年の7月にメンテナンスに来られてから、わずか3ヶ月でインプラント周囲炎が進んでいます。
    歯肉を押さえると排膿し、インプラントそのものもグラグラです。
    ドクターが麻酔したらその麻酔で浮き上がってきて取れました。
    なぜ急激に症状が進んだのでしょうか?

    その原因は本動画でぜひご確認ください。

    糖尿病の診察を拒む患者様には「あなたに健康になってもらいたいだけです」とブレずにきちんと伝えることが大切です。
    積極的に糖尿病の危険性を訴え、受診を促していきましょう。

    こちらの動画は2018年6月23日に開催されたDoctorbook academy DHスキルアップシリーズ「歯科衛生士のための糖尿病セミナー」を映像化したものです。ぜひシリーズでご覧ください。

    歯科衛生士のための糖尿病セミナー(土屋 和子先生)
    糖尿病患者を診察するときに知っておきたいこと(富田 益臣先生)

  • 咬合の問題 #4 07:13

     カリエスもほとんどない、歯周病でもないという状態であったとしても食いしばり噛み締めによって、咬耗はできてしまいます。
    そして咬耗になっている人は口腔内の頬や舌に形がついているのが特徴です。
     
    エナメル質が剥離する原因は「メカニカルストレスによる」という風に考えられています。
     
    力のかかる方向で欠損してくる部位がある程度分かり、往復に動いていた場合は中心部が欠損します。
     
    知覚過敏を患者さんが訴えた時も、まず考えなければいけないのは『動水力学説』です。
     
    つまり、咬合力がかかることによって象牙細管の中の圧力が変化します。
    圧力が変化すると、歯髄や象牙質の部分にある神経細胞に刺激が加わります。
    刺激が加わると象牙細管の中の組織液が動くということです。
    この動きによって象牙質と歯髄の間にある神経細胞が刺激されるということになります。
     
    歯の破折の原因は、外傷・歯ぎしり・歯の神経を抜くことによる歯質の劣化が考えられます。
    破折を起こしている周辺の状況とストレスの関係を診査することが重要です。
    歯の咬耗・歯の破折・修復物の脱離が多発している場合は、注意して診てください。
     
    咬合咬耗して中の金属が見えたり、短期間で歯周病が進行するといったことも、メカニカルストレスが関与していると言われています。
     
    私たちが考えるべきことは、「体の中で何が起こってるのか」ということです。
     
    ストレス・恐怖・不安を感じると脳にある神経細胞の集まりである『扁桃体』が最初に反応して、ストレスなどを身体全体に広げます。
    ストレス反応を引き起こす引き金になるということです。
     
    ストレスが生じると偏桃体が反応し、自律神経・ホルモンの分泌・情報伝達に関わってる『視床下部』に伝わります。
    次にストレスホルモンを分泌する『副腎』に伝わります。
    『コルチゾール』『アドレナリン』『ノルアドレナリン』というのは、ストレスホルモンとして全身に移動します。
     
    副腎から分泌されたストレスホルモンが血流に乗って全身を駆け巡り、体内の様々な臓器に指令を伝えます。
     
    ストレスホルモンの増加によって血小板が結合して血液が固まりやすくなります。
    これが脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。
     
    肝臓では、肝臓に蓄えられた糖分が血液中に放出されます。
    これにより糖尿病が悪化してしまいます。
     
    これらのことから分かるように、ストレスは見逃せません。
    それが顕著に見た目でわかるのが口腔内ということになります。
     
    ただ咬耗している、口腔内の頬・舌に圧痕がついてると言うだけでなく、相当なストレスがかかってるんだと判断する事が大切です。
     
    例えば、ストレスホルモンによって血漿成分から鉄分が切り離されると、細菌が鉄分を摂り込みます。
    これによって歯周病の原因菌であるPg菌の活動が活発化します。
     
    さらに、活発化した細菌が血管を突き破って脳出血を起こしている原因菌としてミュータンス菌が挙げられます。
     
    まだまだ研究が必要な分野ですが、口腔内の細菌というのは口腔内だけの影響にとどまりません。
    2000年以降、全身と口腔の関係はだんだん知られるようになりましたが、まだまだ奥深いものがあると思います。
    動画をご覧いただいて、ぜひご確認ください。


    こちらの動画は2018年6月23日に開催されたDoctorbook academy DHスキルアップシリーズ「歯科衛生士のための糖尿病セミナー」を映像化したものです。ぜひシリーズでご覧ください。

    歯科衛生士のための糖尿病セミナー(土屋 和子先生)
    糖尿病患者を診察するときに知っておきたいこと(富田 益臣先生)

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試験結果

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