30 Under 30 -2018 Premium Seminar-《参加レポート》
30 Under 30とは
はじめに、30 Under 30についてご説明いたします。
「若手歯科医師に機会を、日本の歯科医療に未来を」というテーマを掲げた、卒後研修プログラムで、浦濱隼人代表によって2017年に立ち上げられたプロジェクトです。
このプロジェクトが発足した背景として以下のような歯科医師の悩みが背景にあります。
(1) 様々なスタディーグループに参加しても、情報過多で何が正しいのかについて迷いが生じてしまう。 また、臨床の羅針盤がないため、どのように最短距離で臨床技術を高めていけばよいかわからない。
(2) 日本を代表するスタディグループの学習内容はレベルが高く、一度では十分に学習内容を理解できない。また、日々の臨床とのギャップが大きく、学んだことを十分に日常臨床に生かすことができない。
(3)「年間コース」の費用は百万円単位と高額のため、積極的に参加することが容易ではない。
これらの項目は、若手歯科医師なら誰もが感じたことのある項目ではないでしょうか
そこで、このプロジェクトではこのような卒後研修プログラムが作られました。
このような、若手歯科医師にとって夢のようなプロジェクトは、SJCDインターナショナル会長である山粼 長郎先生が最高顧問であるということもあいまって反響を呼び、2017年12月3日に行われた、年間コース参加者の選考も兼ねた第1回プレミアムセミナーには全国各地から1,174名が集まりました。
そして、選考の結果、この年間セミナーを受講できる、30名の一期生が選出されました。
年間セミナーは隔月で開催されていて、どれも刺激的なものです。それについてはまた別の機会にお話しできればと思います。
30 Under 30 2018 Premium Seminarの内容
さて、今回開催された2回目のプレミアムセミナーである本セミナーは、前回同様国内外から1000名以上もの歯科医師が参加しました。
まず、第一部ではオリエンテーションを兼ねて30 Under 30 代表理事である浦濱隼人代表の講演からスタートした。
30 Under 30の役割として、若手歯科医師に ①学びの場 ②交流の場 ③刺激の場 ④発表の場 の4つの場を提供するということや、30 Under 30の会員になるだけで年間セミナーに選出されなくても様々な特典を受ける事ができること、そして、本年度から年間コースが2種類になった事が発表されて、会場の若手歯科医師にとって嬉しい情報が満載でした。
同年代の若手歯科医師と交流しながら学び、お互いを刺激しあえる場。
仕事をしているとどうしてもコミュニティが狭まってしまうため非常にありがたいと感じました。
得られる様々な特典、基本的に全て無料
スタディークラブの垣根を超えた豪華な講師陣
浦濱代表の講演の後に、年間セミナーに参加している1期生の中から代表して2名が登壇して、30 Under 30を応募したきっかけや年間セミナーの感想、今後に期待する事等を発表した。
30under30 一期生である三浦基先生
続いて、30 Under 30の理念に共感し、協賛して下さっているクリニックの先生方の挨拶と若手歯科医師への熱意あるメッセージが送られ、共産クリニックの代表としていのうえ歯科クリニックの理事長である井上栄一先生が登壇しました。
「日本の歯科医療の質の向上を目指し、人々の健康度をみなで高めていこう」という強いメッセージに、若手歯科医師は真剣に話を聞いていました。
協賛クリニック代表の井上栄一先生
特別公演では、はじめに日本大学歯学部付属歯科病院病院長であり、日本大学歯学部保存学教室修復学講座教授の宮崎真至先生から新しい年間セミナーであるSERENDIPITYについての説明と、若手歯科医師へ向けて歯科医師の仕事についての楽しみ、そして30 Under 30についてのコメント、歯科界を牽引してきた先達から「これからの歯科界を担う若者たちへ」というテーマで講演がありました。その中で宮崎先生は若手歯科医師に向けて「自分の持っているものを患者さんに伝え、つながり、繁栄するのが醍醐味であり楽しみである」と話されていました。
その後、歯科界を牽引してきた先達の先生方から「これからの歯科界を担う若者たちへ」というテーマで、スタディークラブの垣根を超えて偉大な先生方からコメントをいただきました。
まずは、Kuwata Institute Millennium最高顧問であり、金属焼付ポーセレンの開発メンバーである桑田正博先生は、若手歯科医師へのメッセージとして「意志あるところに道あり」ということをお話されて、パスポートがまだ手書きだった頃に海外に渡った自身の経験を交えた話は度肝を抜かれました。
続いて、ブローネマルク・オッセオインテグレーション・センター院長である小宮山彌太郎先生は、患者に対して誠実な姿勢をとることの重要さを若手歯科医師に教示下さいました。大学院で補綴学を専攻していた際に、多くの患者さんを診察・治療していく中で、どんなに一所懸命治療に取り組んでも、患者が「自分の歯の時とは違いますね」という表現をするため、従来の補綴処置に限界を感じ、当時あまり受け入れられなかったインプラントの勉強をスウェーデンのブローネマルク先生の下でされた、という話を聞いて、患者に真摯に向き合い、日々研鑽を積むことの大切さを痛感しました。
そして、最後に山﨑長郎先生が若手歯科医師に向けてメッセージとして「Dentistry is a work of Love With Passion」ということを話されました。山粼先生は、この30 Under 30で臨床における基礎·基本の重要性と歯科医療従事者としての心の支柱をどこに置くかということを伝えたいと話されていて、時代がかわっても歯科治療の根本は変わらない、ということと、アドバンスな内容であってもその本質は根管治療であり、歯石除去による炎症抑制であり、マージンの合ったクラウンといった基礎·基本にあるため、そういう土台を疎かにして、いくら臨床ケースを積み上げたとしても砂上の楼閣になってしまうということを話されていました。日本の今の教育システムでは、こうしたことを学ぶためには、どうしてもポストグラジュエイトのための臨床的受け皿が必要だと感じていて、それをこの30 Under 30が担うとお話してくださいました。
「歯科医師という職業は自己満足の連続だと思っています。良い仕事ができればHappyですし、そうでなければUnhappy。いい仕事をした結果として、患者さんの喜びが間接的に伝わってくる。それを自らの喜びへと高めることができれば、充実した歯科医師人生を送ることができる。」山粼 長郎先生の話されていたこの言葉はとても心に響きました。
そして、最後のプログラムとして、医療法人社団聖礼会アス横浜歯科クリニック理事長である丹谷聖一先生のアテンドで、山粼 先生、小宮山先生、桑田先生によるパネルディスカッションが行われました。旧知の仲である山粼 先生と小宮山先生の絶妙な掛け合いもありつつ、それぞれの先生がそれぞれの考え方で若手歯科医師へのエールを送って下さって、とても有意義なものでした。
最後に行われたパネルディスカッション。
左からアテンドの丹谷先生、山﨑先生、小宮山先生、桑田先生
まとめ
最後に、30 Under 30の目標について記載していきたいと思います。
米国では、歯科医師は「なりたい職業ランキング(第1位)」と 子供たちから憧れられる職業だといいます。同じ職業であるにも関わらず日本では歯科医師222位に次いで、歯科技工士264位という厳しい現実。我々は、この現実をどのようにとらえればよいのでしょうか。
歯科医師という職業が極めて専門性が高く、人々の命とつながっていること。真面目な仕事をすれば多くの人々から感謝され、やりがいに満ちあふれ、物心両面の豊かさを得ることができる魅力的な職業であること。こうしたことが伝わっていない現実があります。医療という人間の根幹にかかわる仕事が、職業としての魅力に欠けるようであれば、歯科業界、ひいては社会の衰退は自明のことでしょう。
日本でも、歯科医師が「なりたい職業ランキング」トップ10に入る日が来る。
そんな願いがあります。これまで第一線で臨床を追求してきた歯科医師が、これからの日本の歯科医療を背負う若手歯科医師へと想いと技を伝承し、次の世代へと継承していく。
そして、ゆくゆくはこの「30 Under 30」から、世界レベルの臨床家を輩出する-
若手歯科医師に機会を 日本の歯科医療に未来を。
エムズ歯科クリニック東中野
櫻井 祐弥
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