【連載】顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016の解説:Part1

2016年10月13日(木)

ビスフォスフォネート(BP)製剤関連の顎骨壊死とは


ビスフォスフォネート(BP)製剤における顎骨壊死の副作用に関しては、歯科医師の先生の皆さまがよくご存知のことだと思います。


BP製剤は破骨細胞を抑制することにより骨吸収を阻害する薬剤です。









主なビスフォスフォネート製剤一覧


 ・ゾレドロン酸(ゾメタ®)
 ・アレンドロネート(テイロック®、フォサマック®、ボナロン®)
 ・リセドロネート(アクトネル®、ベネット®)
 ・パミドロネート(アレディア®)
 ・インカドロネート(ビスフォナール®)
 ・ミノドロン酸(ボノテオ®、リカルボン®)
 ・イバンドロネート(ボンビバ®)
 ・エチドロネート(ダイドロネル®)

これらの薬剤は骨転移を有するがん患者や、骨粗鬆症患者の治療に広く用いられておりますが、BP製剤を投与されている患者が抜歯などの侵襲的な歯科治療をうけた後に顎骨壊死が発生し、その顎骨壊死とBP製剤の関連性を示唆する報告がなされています。


 


この顎骨壊死の読み方に関しては「ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw;BRONJ)」と呼ばれ、発生機序が未だに不明であり、予防法・対処法も確立されていないのが現実です。


 


そのため、BRONJに関する正確な科学情報を収集し、対応策や予防法に関して統一見解を提言するための、顎骨壊死ポジションペーパーが、国内の専門学会共同の顎骨壊死検討委員会により作成されています。


 


2016年7月に行われた第34回骨代謝学会学術集会において、4年ぶりにこのポジションペーパーが改定されたことが公表されました。


 


「顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016」は日本骨代謝学会,日本骨粗鬆症学会,日本歯周病学会,日本歯科放射線学会,日本口腔外科学会,日本臨床口腔病理学会の6学会共同で作成されています。


今回の連載では、この「顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016」の内容をご紹介致します。


 


ポジションペーパー改定の背景


今回の改定の背景として、骨粗鬆症やがんの骨転移による骨病変の新たな治療薬としてデノスマブが用いられるようになったという点があります。


デノスマブはRANKL( Receptor Activator of NF-κB Ligand)に対するヒト型IgG2モノクローナル抗体製剤であり、ビスフォスフォネート(BP)製剤とは異なる機序で破骨細胞による骨吸収を抑制します。


デノスマブ製剤は、2012年に「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」の適応でランマーク皮下注®が国内にて発売された後、2013年に「骨粗鬆症」の適応でプラリア皮下注®が発売されています。 









デノスマブ製剤一覧

 ・ランマーク®(悪性腫瘍用製剤)
 ・プラリア®(骨粗鬆症)


デノスマブは半減期が1ヶ月前後と短く、またBPのように骨に沈着・残留しないこと、破骨細胞にアポトーシスを誘導しないなどの違いがあることから、当初デノスマブ投与患者には顎骨壊死は発生しないと期待されていました。


 


しかし、実際にはデノスマブ投与患者にも、BP製剤投与患者と同様の「デノスマブ関連顎骨壊死:DRONJ(denosumab-related ONJ)」が、ほぼ同じ頻度で発生することが判明したのです。


 


そのため、BP製剤に関連する顎骨壊死と、デノスマブ製剤に関連する顎骨壊死の双方を包括した「再吸収阻害剤関連顎骨壊死:ARONJ(Anti-resorptive agents-related ONJ)」という名称が使われるようになってきています。


 


さらに、がん治療において抗がん剤としばしば併用される血管新生阻害薬、あるいは分子標的薬、特にチロシンキナーゼ阻害薬などの投与をうけている症例では、顎骨壊死の発生率が増加することから、世界的なコンセンサスはまだ得られていないものの、米国口腔外科顎顔面外科学会(AAOMS)は「薬剤関連顎骨壊死:MRONJ(Medication-related ONJ)」という名称を提唱しています。


 


このように、以前の2012年度版のポジションペーパーを発行した後に、薬剤に関連する顎骨壊死について新たな事実が明らかになってきたことから、顎骨壊死に対するポジションペーパーは改定をされることとなりました。


 


まとめ


1. 顎骨壊死に対するポジションペーパーは2012年以来、4年ぶりの改定が行われました。


2.  改定の背景として、デノスマブなど骨病変に対する新たな治療薬の登場の他、顎骨壊死にまつわる最新の報告がなされてきたということがあります。


3.  デノスマブ投与患者にも、ビスフォスフォネート投与患者と同様に、顎骨壊死の副作用が発生することがわかってきています。


 


次回は、BP製剤やデノスマブの投与をうけている患者への歯科治療についてまとめます。


 


【連載】顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016の解説
Part2:https://academy.doctorbook.jp/columns/MRONJ2
Part3:https://academy.doctorbook.jp/columns/MRONJ3


 【参考文献】


「骨吸収抑制薬関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2016」顎骨壊死検討委員会



  • 米田俊之 (日本骨代謝学会、インディアナ大学医学部血液腫瘍部門)

  • 萩野 浩 (日本骨代謝学会、鳥取大学医学部保健学科)

  • 杉本利嗣 (日本骨代謝学会、島根大学医学部内科学講座内科学第一)

  • 太田博明 (日本骨粗鬆症学会、国際医療福祉大学臨床医学研究センター)

  • 高橋俊二 (日本骨代謝学会、癌研有明病院化学療法部 総合腫瘍科)

  • 宗圓 聰 (日本骨粗鬆症学会、近畿大学医学部奈良病院整形外科・リウマチ科)

  • 田口 明 (日本歯科放射線学会、松本歯科大学大学院歯学独立研究科硬組織疾患制御再建学講座臨床病態評価学)

  • 永田俊彦 (日本歯周病学会、徳島大学大学院医師薬学研究部歯周歯内治療学分野)

  • 浦出雅裕 (日本口腔外科学会、兵庫医科大学歯科口腔外科学講座)

  • 柴原孝彦 (日本口腔外科学会、東京歯科大学口腔顔面外科学講座)

  • 豊澤 悟 (日本臨床口腔病理学会、大阪大学大学院歯学研究科口腔病理学教室)


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