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【人気動画】いまこそ知りたい!口腔がん《柴原 孝彦先生》 #1~5

2021年7月13日(火)

■新型コロナウイルス流行による悪性腫瘍発見の遅れ
日本対がん協会によれば、新型コロナウイルスの影響によって、胃・大腸・肺・乳房・子宮(頸)など5種類のがんについて検診を受けた人は全国的に大幅に減少し、2020年度の受診者は例年に比べて約3割(約330万人)減少するものと予測されました。これはすなわち、約4万人のがん患者が見逃される計算となります。

歯科臨床においても、新型コロナウイルス流行による受診や検診控えを実感された歯科関係者は多いのではないでしょうか。例年は歯科検診と共に実施される口腔がん検診も、昨年は中止せざるを得なかった歯科医師会が多くみられました。

そこで今回、2020年7月に公開されました柴原孝彦先生による 『いまこそ知りたい!口腔がん』の動画シリーズをご紹介いたします。今後の臨床において、口腔がんの早期発見、また予防のヒントとしてご活用いただける内容となっています。

#1 口腔がんの種類

2019年、ある歌手が口腔がんであることを公表し、大変話題になりました。彼女は持病のため免疫抑制剤を使用していたため、口内炎が慢性的に出来やすい状態でありました。併せてステロイドも使用しており、口内炎が難治性になってしまい、結果、不幸にもがん化してしまいました。がんはいつから、どうしてなってしまったのか、またもっと早く気づくことは出来なかったか。口腔がんへの理解を深めて、早期発見や予防について考えていきましょう。

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口腔・咽頭がん罹患者数、またそれに伴う死亡者数は、異常な増加を示しています。一方、同じ扁平上皮癌である子宮頸がんによる死亡者が近年抑えられている背景には、検診やHPVに対する治療等、子宮頸がん対策があると考えられます。口腔がんも早期発見と予防が可能な疾患です。

口腔とは口唇から軟口蓋までの、全ての組織です。口腔がんの好発部位は、舌であり、口腔がんの半数以上です。次いで、下顎歯肉、口底部となります。口腔がんのうち、上皮細胞(扁平上皮)の異形成である扁平上皮癌が93%を占めます。

扁平上皮癌が疑われる病態に対して、経過観察に適した期間は2週間です。これは上皮のターンオーバーが2週間であるという科学的根拠をもっています。

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#2 口腔粘膜疾患からがん化へ

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口腔がんは突発的に発生しません。軽度な粘膜疾患を発生するなど、必ず何らかの前駆症状を呈します。様々な要因により健全に治癒しなかった場合、前癌病変・前癌状態の期間を経て、口腔がんが発生します。口腔がんは予防が可能といえる理由がここにあります。

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最新のWHO分類では、前癌病変・前癌状態ではなく、口腔潜在的悪性疾患:OMPDという概念が示されています。これらの疾患はおよそ5年以上という長い期間を経て、がん化するとされています。

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#3:原発部別のStage分類

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東京歯科大学における口腔がん患者の紹介元は、その多くが近隣歯科医院からです。早期癌(Stage1,Stage2)に対し、進行癌(Stage3,Stage4)に進行してからの初診が多くなってしまっているのが現状です。歯科医師の診断力、国民の口腔がんに対する認知関心度、その双方を向上させ、早期癌での発見を増やす必要があります。

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加療開始時点でのステージの違いは、治療成績だけでなく、治療予後にも影響をもたらします。進行癌となり舌移植が必要な場合、移植部位の知覚や味覚は回復しません。また筋機能訓練(リハビリ)の必要性など、QOLに大きな差が出ます。

舌がんに次いで多くの患者がいる歯肉がんですが、初期の歯肉がんは難治性歯周病との鑑別が重要です。初期段階に見過ごされ、進行癌となってから発見される歯肉がんが多くなっています。

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近年の口腔がんの患者層の変化について理解することも重要です。画像は20代女性に発生した舌のがん画像です。aya世代と言われる若年層や女性患者の増加は、これまでの口腔がんに対するイメージとは異なります。

患者教育も予防や口腔がんの早期発見に有効なアプローチです。患者さんに自分の舌や歯茎など、口腔内へ興味をもって日々観察頂くことを、歯科医師、歯科衛生士から促すことが重要です。

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さらに以下2つの動画で、口腔がんの鑑別疾患についてより具体的な症例画像を交えて示されています。診断する上での、視診や触診のポイントもわかりやすく紹介されています。

#4:鑑別を要する疾患

歯列不正、不適合な補綴、たばこや飲酒による粘膜への刺激が口腔がんリスクに関することを理解した上で、正常と異常の鑑別について解説していきます。

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画像は20代、60代、80代の舌の写真で、いずれも正常な舌の画像です。舌も加齢によって気質変化します。粘膜や血管の老化は皮膚と同様に起こりますし、異常ではありません。

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口腔がんを診断する上で、粘膜の色の変化は、鑑別のポイントとなります。白色変化は、重層扁平上皮の肥厚を示します。代表的な疾患に白板症(がん化は5~10%)があり、経過観察する場合は、形・大きさ・深さの変化を3ヶ月ごとに追う必要性があります。

赤色変化は重層扁平上皮が薄くなった状態を示します。代表的な疾患に紅板症(がん化は50~60%)があり、早期に基幹病院に対診が必要です。

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例えば扁平苔癬の場合、原因の特定、タイプに応じた病態があることを患者に説明し、理解を得る必要があります。難治性であることを踏まえ、長期にわたる経過観察をもって対応します。

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#5:口腔粘膜疾患の診方

白色病変で口腔がんとの鑑別が必要な物として、アフタ(口内炎)や義歯による褥瘡性潰瘍が挙げられます。アフタや褥瘡性潰瘍にみられる灰白色はフィブリンによるものです。

黒色病変である悪性黒色腫の特徴として、染み出したような墨黒色で、粘膜には盛り上がりがあり、形状はいびつな不定形であることが挙げられます。このような場合、経過観察はせず、すぐに基幹病院への対診が必要な疾患です。鑑別疾患には母斑、金属によるメタルタトゥーなどが挙げられます。

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上記のような粘膜疾患には特に注意が必要です。ただし、目で見て判断するだけでなく、手で触ることも重要です。腫瘍の発育形式は様々で、視診だけでは鑑別が難しい場合も多くあります。

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触診では触診部位を指で挟むように触ります。舌や頬粘膜は人差し指と親指でつまむように、口底部を触診したい場合、口腔内と顎下部から、左右の人差し指で挟むように指で触ります。硬結は病変そのものだけでなく、その周囲に発生していないかも確認します。

日常的に、歯だけでなく口腔内全体を隅々まで観察する習慣を歯科医師、歯科衛生士、そして患者自身が持つことが口腔がんの予防、早期発見のために大切です。特に舌縁後部、口底部、下顎舌側歯肉は、好発部でありながら患者さん自身で発見しにくい場所であり、歯科医師、衛生士の注意が必要です。

怪しいと思った場合には、診断にこだわる必要はありません。2週間の経過観察で治癒しない場合、治癒経過に疑わしさを感じた場合は、速やかに基幹病院に紹介してください。

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