感染性心内膜炎(Infectious endocarditis)とは【歯科用語コラム】
感染性心内膜炎(Infectious endocarditis)とは
感染性心内膜炎は、通常、口腔内や他の感染源から細菌が血流中に侵入し、心臓の内膜上に付着することで発症します。歯科診療においては、歯の抜歯や歯周手術、歯石除去、歯肉切開手術など、口腔内の治療や処置に伴って菌が血液中に侵入するリスクがあります。
感染性心内膜炎は、重篤な症状を引き起こす可能性があるため、予防が非常に重要です。以下に、歯科従事者が知っておくべきポイントをいくつかご紹介します。
・正確な医歯薬歴の取得: 患者さんの過去の感染症や心臓疾患の有無、心臓弁の置換や修復手術の有無など、感染性心内膜炎のリスク因子に関する情報を正確に把握しましょう。
・感染リスクの評価: 患者さんの口腔内の状態やリスク因子(口腔衛生の状態、免疫抑制状態など)を評価し、感染性心内膜炎のリスクを判断しましょう。
・口腔ケアの重要性: 歯科診療後や処置前後には、患者さんに対して適切な口腔ケアの指示を行いましょう。口腔内の清潔な状態を維持することで、感染性心内膜炎のリスクを低減することができます。歯磨きやうがい、歯間ブラシの使用などを通じて、口腔内の細菌や炎症を抑えることが重要です。
・抗生物質の適切な使用: 必要な場合には、歯科処置前や特定のリスク患者に対して、抗菌薬等で予防的な処方を検討することがあります。
参考:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017 年改訂版)
Guidelines for Prevention and Treatment of Infective Endocarditis (JCS 2017)
感染性心内膜炎は、歯科診療において重要な問題です。歯科従事者としては、感染性心内膜炎のリスクを正しく把握し、適切な予防策を実施することが求められます。常に最新のガイドラインや専門家のアドバイスに基づき、患者の安全を最優先に考えた診療を行いましょう。
感染性心内膜炎について動画で学ぶ(全動画視聴無料)
医科歯科連携の必要性とう蝕原因菌が検出された感染性心内膜炎の症例 #1
足利赤十字病院リハビリテーション科の寺中智先生に「周術期口腔機能管理における医療連携」についてご講演いただきました。
医科歯科連携の必要性や口腔機能管理と全身管理の関連性について、感染性心内膜炎の症例を用い診断から治療計画、入院後術前、術後の対応を具体的にご説明いただいております。細菌性やウイルス性の疾患への対応としても、今後必要になってくる知識となります。
足利赤十字病院 心臓血管外科部長 古泉 潔先生
感染性心内膜炎の予防について、足利赤十字病院 心臓血管外科部長の古泉 潔先生にお話していただきました。
感染性心内膜炎は細菌感染から菌血症に至り、心臓に疣贅を形成し血管塞栓を引き起こすなど全身に症状を及ぼしうる疾患です。
また、死亡率は20~25%と高いため予防が重要な疾患といえます。ハイリスク群としては人工弁置換術後やチアノーゼ性先天性心疾患を有する患者とされており、またリスクの高い歯科処置は抜歯やスケーリングと考えられています。
予防法としては処置前の抗菌薬投与や患者教育が重要とされています。予防的抗菌薬投与に関しては強固なエビデンスはないものの、死亡率の高さを考慮するとハイリスク群に対する抗菌薬投与は必須と考えられます。
また、歯科処置時の注意点や口腔ケアの必要性など、患者に説明するべき内容がガイドラインに記載されています。