夏堀礼二先生:口腔内スキャナーを用いたNeoss Implantの上部構造作製へのデジタルワークフロー
単独歯欠損症例
本症例は、すでにインプラントシステムおよびスキャンボディを含む補綴用コンポーネントも薬事承認を受けているNeoss Implant systemの上部構造を口腔内スキャナーでスキャンを行い、モデルレスでプロビジョナルおよび最終上部構造を作成した症例を紹介する。
患者は20年以上前に、当院にてインプラント治療を受けており、#36、#37欠損部に2本のBrånemark systemインプラントでスクリューリテインの上部構造が装着された。メインテナンス中に#35の歯根破折を起こしたため、本人の希望もあり抜歯後2ヶ月でNeoss Implant Proactive Straight φ4.0×11mmを埋入した。
3ヶ月の免荷期間後、十分な軟組織の治癒およびデンタルX線写真にてオッセオインテグレーションの獲得を確認後、口腔内スキャナー 3Mトゥルーデフィニションを用いた光学印象にてプロビジョナルの印象採得を行なった。
その後データをクラウド経由でラボに送信し、CADソフト上でのスキャンボディのマッチングを行い、バーチャルTI-baseを連結しそれにデジタルワックスアップ(デザイン)を行なった。デザインデータはSTLファイルに書き出し、加工センターに送信した。
プロビジョナルクラウンはPMMAディスクからミリングし、当院まで発送して頂いた。ラボでTi-baseとクラウンの適合を確認したが、今回は無調整で良好な適合が得られた。スクリューアクセスホールを設けたクラウンとTi-baseをレジンセメントで接着し、口腔内に装着した。
完成物の精度は高く、若干の隣接および咬合面コンタクトの調整を行うにとどまった。古い上部構造の前装部破折の修理が必要であったため、デジタル技術でリカバリーを試みるも残念ながら、従来法でのシリコーンラバーを用いた取込み印象にて行った。今回、石膏モデルを使用したのはこの修理のみであった。
4週間程度のプロビジョナルの期間を通して、咬合・発音などの機能性および清掃性を確認し、最終上部構造の作製をラボに依頼した。この時もしプロビジョナルの形態が大きく変わるような調整がされた場合は、その表面データをスタディモデルとしてスキャンする事で、最終補綴の外形にコピーしてデザインができるのもデジタルのメリットであろう。
今回のプロビジョナルはほとんど最初の形態から手を加えていないことや古い上部構造はプロビジョナルのコンタクトポイントの情報から修理されたことから、全く同じデザインのSTLデータでクラウンの材料だけがジルコニアに変わるだけという流れとなった。超透光性ジルコニアを用いたモノリシックジルコニアクラウンのステイニング仕上げを使用し、プロビジョナルに用いたものと同じTi-Baseとレジンセメントにて接着処理後完成し、口腔内装着を行なった。
最終上部構造も最小限の調整で済んだことからも、昨今の口腔内スキャナー、ミリング加工機の精度は極めて高いと言える。まだまだ各インプラントメーカーがフルデジタルワークフローに対応していない中、これに対応しているNeoss Implant systemの益々の発展が期待される。
図説 一回法にて埋入されたネオス インプラントにピーク素材のツーピースヒーリングアバットメントを装着し3ヶ月経過した口腔内写真。良好な歯肉状態を確認出来る。
図説 ネオス純正のスキャンボディが装着された口腔内写真.デンタルX線写真で適合確認を行う.スキャンボディは長径の大きなものが多く、撮影時にはスキャナーのワンドがスキャンボディにぶつかり操作がスムーズにいかず、隣接歯に近接する部位は、影になり易く困難になる。その場合は頬舌側にワンドを横から近遠心を時間をかけて撮影してみると良い。各社スキャンボディの特徴的な形態、例えば斜面だったり球状などそういう部位もしっかり撮影しておく事で、CADソフト上でのマッチングがやりやすい。
図説 CADソフト上でスキャンボディをマッチングさせるとインプラントの位置情報が記録され、各メーカー専用のTi-baseを装着できる。その上にデザインされた歯冠形態の外冠。このSTLデータから加工機でミリングされる。
図説アズミリングのプロビジョナルクラウンとTi-Base(Ti ネオリンクmono)
図説 完成したプロビジョナル。PMMAディスクからミリングし、予め準備しておいたTi-base と接着して完成となる。
図説 モデルレスでプロブジョナル作成までできたが、残念ながら以前治療されたインプラント上部構造のポーセレン前装部の破折修理は、従来法のアナログ印象に頼らざるを得ない。
図説 上部構造の取り込み印象を行い、修理を依頼した。
図説 修理された旧上部構造
図説 超透光性マルチレイヤードジルコニアを用いたステイニング仕上げのモノリシッククラウンとTI-baseを接着レジンセメントで接着させた、スクリューリテイン上部構造
図説 近遠心幅径はプロビジョナルと同じにデザインしているので、ほとんど無調整で口腔内に装着された。隣のレイヤリングハイブリッドセラミックと遜色無い審美性が得られている。
夏堀 礼二 先生
略歴
1986年岩手医大歯学部卒業
1992年八戸市開業
現在に至る
所属学会
日本臨床歯周病学会
日本補綴歯科学会
日本デジタル歯科学会
日本口腔インプラント学会 専門医
日本顎咬合学会 認定医
AAP
AO
EAO
所属スタディグループ
3Dアカデミー 前会長
OJ 元会長
NPC 副会長
Club22会員
関連コラム
【E.P.I.C.プライベート研修会の参加者レポート】Paul Rosen 特別講演会
詳細を問い合わせる