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【人気動画】GPが知っておくべき歯根吸収と歯根破折への対処法

2019年6月14日(金)

目次

歯根吸収

再植後の外部吸収症例

歯根破折(VRF)

VRFの原因

おわりに

歯根吸収

歯根吸収には外部吸収と内部吸収があります。

外部吸収の特徴

歯髄の有無に関わらず発症しうる

・歯根のどの部分でも起こりうるが、歯頚部に多い(歯頚部外部吸収)

・根尖性吸収:根尖病変の炎症由来で根尖付近がわずかに吸収するもの

・根尖性吸収は基本的に非進行性だが、炎症性吸収、置換性吸収や歯頚部外部吸収は進行性のことがあり、悪性。

治療法が確立していない


例えば、外傷で脱落した歯を再植した場合で考えてみましょう。

再植歯の歯根膜は多少なりとも部分的に歯根膜が剥がれていたり、ダメージを負っていたりします。

その部分は再植しても歯根膜がなく、そこにセメント質もなければ直接歯周組織と接触することとなり、炎症が起きます。

この炎症によってまず表面吸収が起こります。

これが一過性であれば治療は必要なく、むしろ臨床的に感知することすら困難です。

しかし、これが拡がっていくと炎症性吸収となり臨床的にも触知できるようになります。

この吸収窩は肉芽組織で充満していますが、骨組織に置換されると置換性吸収(アンキローシス)となります。

内部吸収の特徴

有髄歯にしか発症しない

・治療法は抜髄

再植後の外部吸収症例

実際の症例を見ていきます。

患者:9歳の女児

交通事故で上顎両側中切歯が脱落後、他院にて再植された症例

受傷後、約半年でかなり外部吸収が進行してしまっていますね。

吉岡先生は再植後の固定に問題があったと指摘されました。

レントゲン写真を見るとリジッドな固定がされていたことが窺えますね。

再植後のリジッドな固定は外部吸収を惹起すると言われています。

また根未完成歯の場合、再植後すぐに抜髄してしまうことも避けたほうが良いと述べられました。

重要なのは患者に対しての説明(外傷歯の状態、これから起こりうる経過など)と、変化に対しての柔軟な対応であると述べられました。

そのため受傷後1カ月間は毎週、その後も半年間は毎月受診させ、歯根吸収の有無と歯髄の状態を入念に経過観察することが大事であるとのことでした。

外傷を受けた患者は再度繰り返す傾向もあるため、転倒などに対する生活指導も十分行なっておくようにとのことでした。

外傷歯を診るポイント

・リジッドな固定は避ける

・根未完成歯の安易な抜髄は慎む

・患歯の状態と予後についての患者への十分な説明

・適切な頻度の経過観察と変化への柔軟な対応

・外傷ハイリスク患者のため生活指導を行なう

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歯根破折(VRF)

つづいてVertical root fracture(以下VRF)についてです。

VRFは歯根の長軸に沿って見られる、根管から根表面まで広がる破折と定義されています。

現状、確立された治療法や予防法がありません。

吉岡先生は複数の論文を引用され、根管治療後にポストやインレーを用いて修復された歯はVRFを起こしやすいことを示されました。

以前は、ポストを植立することによって破折荷重(歯に徐々に負荷をかけて破折したときの荷重)が高まるため、ポストは歯質を強化すると考えられていました。

しかし研究が進み、現在ではポスト形成をしなければ破折荷重は変わらないということが分かっています。

ポストを植立することは単に修復物の脱落を防ぐための処置であり、エンド視点で考えるとポストを植立するメリットはないと述べられました。

VRFの原因

咬合を模倣した力を歯に加えた実験で生じた破折は根尖を含まなかったという結果から、吉岡先生は咬合がVRFの原因とは言えないと述べられました。

また、側方加圧充填のスプレッダーの力は1~2㎏、せいぜい5㎏程度です。

スプレッダーで歯を破折しようと思うと下顎前歯で7.1㎏、上顎前歯では15.2㎏必要で、側方加圧によってVRFが生じることもないとのことでした。

無髄歯になると象牙質が脆弱化するためVRFを起こしやすくなるイメージってありませんか?

様々な研究から象牙質が根管治療により脆くなることはなく、VRFにとって深刻な問題ではないとのことでした。

また咬頭被覆の歯冠修復をすることによって歯冠破折を予防することはできますが、VRFを防ぐことはできないとのことでした。

それはVRFが根管治療、ポスト形成・装着の早い段階で起こっているからであると述べられました。

結局のところ、VRFの真の原因は未だ解明されていないとのことでした。

治療について破折歯再建法の紹介もありましたが、現状ではなかなか予後が見込みにくいようです。

基本的には抜歯せざるを得ないといったところでしょうか。

動画を見る

おわりに

歯根吸収、歯根破折とも臨床で遭遇するとなかなか対処に困る疾患ではないでしょうか。

臨床で遭遇する頻度は高い疾患だからこそ、しっかりとした知識と診断能力を備えておきたいものですね。

実際の講義の中では、歯根吸収と歯根破折のさまざまな症例を紹介していただいており、非常に考えさせられる内容になっていますので是非ご覧ください。

吉岡先生、本当にありがとうございました。

山口口腔研クリニック副院長 松浦 徹

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