カリエス多発の原因はプラークコントロールだけ? #3
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*2022年2月24日にLIVE配信されたクリニカルカンファレンスの講演内容です。
土屋先生はできるだけ「色々な方向から患者様を診ていきたい」と思っておられるそうです。
これはどういうことなのか、症例からみていきます。
42歳女性、未処置歯は1本だけと非常にカリエスリスクの高い患者様です。
このカリエス多発の原因は何でしょうか?
レントゲン写真をみると未処置歯は#41の1本のみで、インプラントが4本埋入されており、失活歯は13本あります。
患者様は検診の度にカリエスが見つかるような状態に絶望しており、お子さんはカリエスフリーに育てたいと思っています。
どこの歯科医院でも「歯磨きが足りない」と言われてきたようですが、プラークコントロールは悪くありません。
この場合は他に原因があると推測できるため、その原因を探るためには患者様についての色々な情報を得る必要があります。
その際に大事なことは、共感・傾聴、そしてねぎらいの声かけです。
患者様の心を掴むことなくして情報を引き出すことはできません。
話をお伺いすると、成人期前に「胃下垂」との診断があり、頻繁にゲップと口腔内に時々酸味を感じていることがわかりました。
このことから、ph1〜2の胃酸による酸蝕歯の傾向があると推測できます。
次に32歳の女性のケースです。
未処置歯は#41、42の2本、失活歯は12本、欠損歯5本です。
この方も、プラークコントロール以外のことが原因になっていると考えられます。
カリエスを繰り返すことに絶望し、歯科受診がつらく今にも泣き出しそうな表情で、自分に自信が持てなくなっている様子でした。
カリエスを繰り返すことがコンプレックスになってしまっている可能性が高いと思われます。
ここでもねぎらいの言葉をかけることは非常に大切です。
色々話を聞いてみると、モデルをしていて18〜28歳まで「拒食症」で、28歳の時に入院加療を受けた過去がありました。
このような背景は、患者様に寄り添わないとなかなか聞けないことではないでしょうか。
拒食症とはつまり摂食障害のことで、治療理論・治療方針が確立していない困難な現代病と言われています。
人間関係などの心因性のストレスを抱えていることから、痩せることで認められたいなどに至ることもある難しい状態です。
ですから患者様の心を開いていかないと、なかなか背景に隠れている問題は見つかりません。
カリエスの原因としてプラークコントロールが思い浮かぶかもしれませんが、これらの症例のようにそうではない場合があります。
60代男性のケースを紹介します。
この患者様はほぼ全部の歯に酸蝕が見られますが、カリエスの原因であるSM菌とLB菌は検出されませんでした。
唾液分泌量も十分でしたが、若い頃よりもゲップが頻繁で、53歳の時に「逆流性食道炎」と診断を受けています。
私たちはどう対応し、どのような情報提供をしたら良いのでしょうか。
治療としては服薬や外科治療がありますが、食事の摂り方も工夫する必要があります。
他にも運動や就寝時の姿勢、腸内環境を整えるなど伝えられる情報はたくさんあるでしょう。
恐らく、今後歯科衛生士として「腸内環境を整える」という情報提供が非常に効果的になってくると土屋先生はおっしゃいます。
なぜなら腸内環境を整えることであらゆるところに良い影響が出ることがわかっているからだそうです。
次の動画では、逆流性食道炎や睡眠時無呼吸症候群、誤嚥性肺炎のある患者様について解説いただきます。
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