【人気動画】シンプルに行う前歯部ダイレクトボンディング/大谷一紀先生
はじめに
前歯部のダイレクトボンディングをシンプルにかつ良い結果を得るために必要な要件を「Color(色)」「Form(形態)」「Texture(表面性状)」に分けて解説していただきました。
Color(色)について
色は「明度(Value)」「彩度(Chroma)」「色相(Hue)」の3つの要素に分けられます。
このなかで最も重要視すべきは明度であると大谷先生は述べられました。
患者さんから「白くて透明な歯にしてほしい」という要望をよく聞きますよね。
しかし、この「白く」と「透明な」という要素は相反するものだということを理解する必要があります。
患者さんの希望通りに透明度の高いレジンを使うと明度(明るさ)は逆に下がります。
つまり透明度を上げると逆に暗く見えてしまうのです。
関連して「Incisal halo」についても解説していただきました。
天然歯では象牙質の光の反射によって、透明なはずのエナメル質の切端の縁の部分が一層だけ白く見える現象が起きます。
この現象を「Incisal halo」と言い、特に若年者で観察されます。
レジンや陶材にはこの効果がほとんどありません。
上の写真の赤で囲んでいる部分が天然歯の「Incisal halo」です。
左側は切端にレジンを置いていますが、天然歯と比べると縁が白く見える部分が少なく、透き通って暗く見えるのがお分かりいただけると思います。
切端をトランスルーセントやエナメルシェードなどの透明度の高いレジンのみで充填すると、天然歯と比べて暗く抜けて見えてしまうことがあるのはこれが原因です。
こういった場合は切縁だけをオペーク系のレジンを使用するなど「Incisal halo」を意識して充填を行う必要があるとのことでした。
Form(形態)について
前歯部のダイレクトボンディングをシンプルにかつ良い結果を得るためには「Color(色)」「Form(形態)」「Texture(表面性状)」のなかで最も重要なのは「Form(形態)」であると大谷先生は述べられました。
上記は上顎中切歯の正面観です。
天然歯の形態をしっかりイメージしながら形態を付与する必要があります。
注意が必要なのが側面観です。
この側面観の丸みをかなり意識しておかないと、ストレートな形のバーで調整しているうちに側面観も直線的になってしまい不自然な形態に陥りやすいとのことでした。
Texture(表面性状)について
「色も形態もばっちりなのになんとなく自然な感じがしない…」
それは表面性状を再現できてないからかもしれません。
特に若年者では、歯をよく観察してみると意外と表面性状が粗いことに気付かされます。
逆に年齢が上がるにつれて表面性状は滑沢な傾向が強くなります。
充填を行う前に、その症例の表面性状をよく観察しておくことが重要であると大谷先生は述べられました。
大谷先生は形態修正にディスクとファインのバーをメインで使用するそうです。
表面性状を粗めに充填する際には、ファインのバーで粗めに仕上がっている表面性状をシリコンによる研磨で消さないように時間を短めにして、ブラシタイプの研磨で仕上げるとのことでした。
シンプルに行う前歯部ダイレクトボンディング
大谷先生はダイレクトボンディングを行う際、かつては色にかなり神経を使っていたとのことです。
しかし豊富な臨床経験から、好ましい結果を得るために最も重要なのは前述したとおり「形態」であるという結論を出されています。
James F.Fondestの論文でも上顎前歯1本をマッチさせるために最重要なのは「シルエット・形状」、次に「表面性状」と述べられています。
「明度(Value)」はその次に位置付けられています。
大谷先生は最近では前歯部4級窩洞でも単一シェードで充填してしまうことが多いとのことでした。
上の画像は上顎右側中切歯の4級窩洞の症例です。
右が処置前、左が処置後です。
この症例は単一シェードで充填したそうですが、そうとは思えないほどの仕上がりになっています。
このように、シンプルにダイレクトボンディングを行っても押さえるべきところを押さえれば良い結果を得られるとのことでした。
おわりに
スペシャル動画のなかでは、実際の臨床での充填や形態修正、研磨に至るまでの細かなテクニックを映像でご覧いただけます。
また、スノープラウテクニックなど臨床ですぐ使える術式についても紹介されています。
さらにプロビジョナルレストレーションへの応用や、接着ブリッジについても解説していただいています。
網羅的でわかりやすいうえに話し方も聞きやすく、何度も繰り返し視聴したくなる内容になっていると思います。
是非ご覧ください。